20R2.3.09 森田洋之先生の新型コロナウイルス考察

夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト森田洋之先生の新型コロナウイルスについてのお話です。

新型コロナウイルスについて、実際に感染しても半数は無症状で、たとえ症状が出ても殆どの方は軽症。しかし、高齢者、基礎疾患の方には重症の可能性が高い。

新型コロナウイルス感染症に関する相談フローチャート

豊島区 池袋保健所 03-3987-4179

これはあまり知られていないことかもしれませんが、実はPCR検査は特異度は高い検査なのですが、感度は高くないのです。これ、超簡単に言うと、

「陽性」と言う結果は信頼性が高いものの、

「陰性」と言う結果は信頼性が低い、ということ。

クルーズ船の乗員・乗客の中で検査陰性の結果が出たのに、その後陽性になった人が何人もおられましたが(感染初期では検査陽性にならない)、これも「陰性」という結果の信頼性が低いことを示しています。

『検査結果は「陰性」でしたが、でもまだ陽性の可能性があります』

というのが本当の説明で、ということは陰性でも結局、発熱やら咳などの症状がある人は全員、自宅安静、出勤停止が妥当な判断。ということになるわけですね。

結果が同じなら検査する意味あるのかな?というところはしっかり考えるべき課題です。

結果が同じ」と言うのは「陽性」の結果でもそう。

たとえ陽性の結果が出ても、今現在コロナウイルスに対する根本治療薬は 開発されていません。(エイズウイルスの薬やインフルエンザの薬が効くかもしれないという報告は出つつありますが、まだ症例が少なく本当に効くのかはわかりません。)

ということは、検査が陽性でも陰性でも治療としては以下のような同じ対応をとることになります。

■大多数の軽症患者さんに対しては解熱剤や咳止めなどでの対症療法

■少数の中等症〜重症以上の方は人工呼吸での呼吸管理や点滴などでの水分・栄養管理などの対症療法
治療法がわかっていない現時点では、決して「検査が陽性だったらよりよい治療を受けられる」ということでも、「早めに陽性の結果が出たほうが万全の医療を受けられる」

ということでもないのです。

実は日本の人口あたり病床数は世界一。最善の治療が受けられる可能性は世界一高いはずです。そしてそれは、検査が陽性でも陰性でも無検査でも結局は同じ治療なのです。

(後述の通り、重症の場合は日本でも積極的な検査が推奨されていますので、重症で命の危険がある場合は検査のうえで、副作用を度外視してでもエイズウイルスの薬なども使用されることもあるかもしれません。)

一方、検査をすることでのデメリットもあります。

■検査を増やせば増やすほど「偽陰性」として漏れてしまう例も増える

■検査を希望する患者さんが病院に殺到する(マグネット効果)ことで、病院自体がウイルスの増殖・拡散基地になりかねない。

■重症患者の救命という「本来のミッション」にもまして、一日数万件という「膨大な検査」の方に医療従事者の労働力が偏ってしまいかねない。

韓国の大邱では新型肺炎で病院がパンク状態、患者が入院できず自宅隔離で死亡

https://japaninfo.net/koreanews20200227

韓国と日本、どちらが正解か、それはその国の医療事情や国民感情にもよるでしょうし、一概には言えません。

しかし、「検査を増やせばすべてがうまくいく」

という単純なものではない、ということは強調しておきたいところです。

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