令和元年度豊島区決算に対する公明党意見開陳
令和2年10月21日
木下 広
私は、公明党豊島区議団を代表いたしまして、令和元年度一般会計決算並びに国民健康保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計の3特別会計決算を認定することに賛成する立場から意見開陳をいたします。
初めに、コロナ禍の中密を避けるため、議員協議会室と本会議場の二元中継の審議を無事に成功裏に終えられ新たな歴史を作られました辻かおる委員長並びに磯一昭副委員長議会事務局職員の労心からに感謝申し上げます。
また、理事者の皆さまには我が会派の恒例の会派勉強会に時間を割いて頂き、資料作成、事前調査に快く応じていただきました。委員会では一部しか取り上げることができませんでしたが今後の貴重な資料として活用させていただきます。心から御礼を申し上げます。
さて、令和元年度各会計決算審査に当たり、私ども公明党は、1、区民目線に立った行政運営がなされているか。2、豊島区を取り巻く時代状況に的確に対応した事業展開となっているか。3、将来に亘る安定的、持続可能な財政運営がなされているか。4、セーフコミュニティ国際認証都市としての安全・安心の取り組みに加え、今般ダブル選定されたSDGs未来都市モデル事業として、誰一人取り残さない取り組みがなされているかを主眼に、慎重かつ厳正に審査に臨みました。
まずは、令和元度予算について、簡略に触れさせていただきます。当該年度の一般会計が対前年度比251億円20.2%増の1,498億円3,786万円であり過去最高の予算規模となりました。旧豊島公会堂跡地に整備した芸術文化ホール整備や新区民センター改築及び4つの特色ある公園整備などの投資的経費が403億671万円と前年度より191億40万円90.1%増加したことによります。
これまで本区が進めてきた「こどもと女性に優しいまちづくり」、「文化による賑わいの魅力ある街づくり」が大きな成果となり、子育てし易い街づくりとして、課税人口の増加で歳入増となるなど、6年連続で財政調整基金を取り崩すことなく編成することができました。東アジア文化都市など276事業約60億円の新規拡充事業を予定して「子どもと女性に優しい街」「高齢になっても元気で住み続けられる街」「様々な地域との共生」「国際アートカルチャーの魅力ある街」の4本柱とする予算でした。
令和元年度の主な成果について概括的に述べますと、まずなによりも、日中韓の東アジア文化都市2019事業では我々公明区議団も仁川と中国のシーアンに特命大使の民間の方々と一緒に現地を訪れ、見分を広め、交流を深めることができ、豊島区政に大きな歴史を刻むことができました。施設面では国際アートカルチャー都市として芸術文化発信拠点としての芸術文化劇場Hareza池袋、新区民センター、中池袋公園整備と上田先生によるウイロード改修事業、西口公園グローバルリング、IKEBUS運行、トキワ荘マンガミュージアム、雑司ヶ谷公園整備など魅力ある街の創出に集中的に努められ、東アジア文化都市事業を見事完結され後世に残る整備をされたこと大いに評価します。豊島公会堂は我々公明党の前身である公明政治連盟結成の会場であり“大衆とともに”との立党の魂魄を留め出発した思い入れの深い地です。今般東アジア文化都市関連のイベントには実行委員会統括の立教大学元総長の吉岡ともや先生の学友である山口なつお代表や文部科学省から浮島とも子元副大臣らと一緒に歴史を刻むことができました。浮島元文部科学副大臣には東アジア事業に特段の尽力を頂いたことも申し添えます。
また、ソフト面では待機児童対策で、令和2年4月には再び待機児童ゼロを実現。我々が推進した全世代型社会保障制度として10月からの幼児教育、保育の無償化の開始に伴い、国が有償とした給食費の補助も区独自で実施し、更なる子育てし易いに取り組みました。高齢者対策では我々が提案したフレイル対策をいち早く導入され、全国初の「東池袋フレイル対策センター」を立ち上げ、要介護の一歩手前の「虚弱・フレイル」予防の対策を取られ、今後は全区民ひろばにて「フレイル予防対策」が展開されます。
そして、何よりも、このような持続発展都市への様々な取り組みの成果が「SDGS未来都市」「SDGsモデル事業」のダブル選定に繋がったことに大いに評価をいたします。
令和元年度本区は「100年に一度の大変革」の集中投資で歳入・歳出とも過去最大規模となりました。ここで一般会計歳入歳出決算の数値を確認します。令和元年度の歳入歳出決算額は歳入が1,462億9,762万円で歳出は1,424億5,986万円となりました。対前年度の比較では歳入は約146億円11.1%の増で歳出は約138億円10.8%の増と過去最高の規模となりました。決算拡大の要因はまちづくり記念事業等投資的経費が対前年度で約210億円123%の大幅増となり、加えて幼児教育の無償化や待機児童対策が大幅に伸び扶助費が約20億円の増となったことによります。
これらの事業を支える2大財源のうち、特別区民税が約304億円、財政調整交付金が約337億円で過去2番目の高さとなりました。財政構造の弾力化を示す「経常収支比率」は80.9%前年度より0.3ポイント改善。借入金の返済負担を表す「公債比率」については1.8ポイント改善し3.5%となり、財政規律の指標であるオルタナティブルールの10%を大きく下回ることができました。基金と起債の残高については、予算編成当初時には令和元年度末の貯金と借金の差は51億円の借金超過と想定していましたが、最終的は基金残高333億円、起債残高260億円となり73億円の貯金超過となりました。この基金残高333億円のうち財政需要に柔軟に対応できる財政調整基金は184億円となり新型コロナウイルス感染症による緊急財政出動にも対処できる体制を整えられました。コロナ禍にあっても安定的な財政的な備えに取り組みを評価するものの、当初予定していた目的基金への積み立ては適切な対応をお願いいたします。
今後は、当該年度に集中投資した持続発展都市とした街づくり、文化を中心とした国際アートカルチャー都市に「魂を入れる」作業に取り組まなければなりません。その意味でもSDGS未来都市、SDGsモデル事業として新たなテーマを目指して、再び区民と行政が一緒になって誰一人取り残さない全国模範のSDGsの街づくりに取り組む事が望まれます。以上、令和元年度の歳入歳出決算については、当初の目的を大いに果たされ、コロナ禍における将来の備えをされており適切な予算執行、財政運営が図られたと評価するものであります。
以下、委員会の審議沿って述べさせていただきます。
【総括質疑】について
当該年度の「100年に一度」の集中投資は大きな成果があったものと評価しますが、一方で歳入・歳出減の理由や補正予算・特別会計について「具体的にどの行政要素が増加しているのか」を正確に把握していく事を指摘しました。
また不合理な税制改正により区財政のマイナスの影響が今後更に拡大すると見込まれるところから、例えば人口増加中の他地方都市との比較などの具体的論拠をもって交渉に当たることも必要であります。また、国からの地方創生交付金の活用実態についても必要な方に必要な支援の情報が行き渡るように、より生活現場に踏み込んだプッシュ型の支援を望みます。そして何よりもコロナ渦における「区民の皆様が安心して暮らせる街づくり」「いざという時に頼れる、区民生活に根差した今後の区政運営」に取り組むことを要望しました。消滅可能性都市から「いい区になった!」と言われ続けるよう、またコロナ渦で大変な時だからこそ、それを乗り越える覚悟をもってオールとしまで難局を乗り越え、SDGsを基調とした豊島つくりに我々も一生懸命取り組んでいきたいと思います。
【議会費・政経費・総務費】について
日中韓の東アジア文化都市交流事業を一年限りの打ち上げ花火でなく、レガシーとして刻んでいき今後に生かす事が望まれます。国際アートカルチャー特命大使の皆さんなど更なる民間との協働を強く望みます。安心安全の観点から青パト、公用車へのドライブレコーダー設置を要望します。SDGSを町会、学校、商店街、企業、各種団体などあらゆる方に広報するためSDGSカードを活用した啓蒙の取り組みを望みます。議会改革は不断の努力が必要です。今般最大会派から議会改革に積極的に取り組む姿勢を本会議場で堂々と表明されました。本会議場の発言は大変重い事は皆さんご案内の通りです。議会の常識は社会の非常識と心ある良識の区民から笑われてきた、お茶出しの廃止にあまりにも時間がかかった事を反省し、今後は、我々が提案してきた一般質問での一問一答方式の選択性等の区民にとってより分かり易い開かれた豊島区議会への議会改革に取り組まれる決意を述べられた事を歓迎します。議会事務局としても、働き方改革にとりみながら、議会の活性化に引き続きご尽力頂くことを切に望みます。
大災害時の業務継続計画、受援応援計画について、公明区議団が阪神淡路大震災、中越地震、宮城岩手内陸地震、熊本地震等直後に被災地に足を運んで支援にあたりました。地震だけでなく大規模水害を想定して防災協定都市との連携強化に努めて頂くことを要望します。平成30年区業務継続計画を策定、国、自治体、自衛隊、医療機関、ボランティアの受援を受ける計画を整備されたこと評価します。熊本地震で始まった1つの自治体が1つの被災地を支援するカウンターパート方式の検討を望みます。いつ起こるかわからない地震・水害に備え、区民の生命と財産を守るたえなる備えを望みます。
【区民費・福祉費・衛生費】について
西山議員が提案し推進して5月に開所された日本初の「フレイル対策センター」の取り組みは大いに評価します。今後は好評のフレイル機器の整備を図り全くみん広場で展開するなど有効活用を望みます。緊急通報システム等も活用して『100年健康としま』を目指し様々な課題に挑戦していく事を要望します。がん対策については、平成22年我々の強い要望により他自治体に先駆けて豊島区がん対策推進条例が施行され10年が経過しました。この数年、胃がん、肺がん検診が好評で急激な申し込み増加があります。申し込み方法を変えたことにより、より多くの区民の方が検診の申し込みをされるようになったことを大いに評価します。しかしながら、今年度はコロナ禍もあったものの予約がとりづらくなり、区民から厳しい指摘の声も届いています。引き続き適切な対応を望みます。コロナ禍でがん検診の受診率が低下しています。検診する医療現場では感染防止を徹底しており、命を守る適切ながん検診の啓蒙を要望します。女性のがん患者支援の医療用ウイッグ、胸部補正用具の事業を評価します。同時に我が党が予てから提案している女性健康相談窓口整備を求めます。支給頸がんワクチン接種について厚労省、日本小児学会から『2013より摂取推奨中止後、報告体制相談体制等対策が講じられることになり、今後は積極的な摂取を推奨』と明記されている。WHOのSDGS目標では2030年までの子宮頸がん排除計画で死亡率30%を目標として、HPVワクチン接収90%の目標を掲げています。ノーベル医学・生理学賞を受賞し、がんに対して免疫が働くようにする新たな治療薬の開発に貢献した京都大学特別教授の本庶佑(たすく)先生は『世界で日本だけが子宮頸がんが増加している。国際的に見ても恥ずかしい現状』と指摘されています。女性の命を守る観点から特に中学生高校生等若い女性に正しい子宮頸がんの情報提供に努めていただく事を強く要望します。平成初期に整備した特養ホームなどの福祉施設の改修時期が来ている。山吹の里、風薫る里等高齢者が安心して住み続けられる施設整備の充実を望みます。上池袋豊寿園跡地は福祉に準じた整備を要望します。
町会加入率が46.4%で町会活動への一層の支援を要望しました、掲示板の支援などより多くの方々が地域で町会活動しやすい環境支援を要望します。
自殺うつ予防対策について、今年は新型コロナの影響で前年に比べ若い女性の自殺増加が問題になっています。本区ゲートキーパー養成に区の新任職員、管理職が講座を受講する取り組みは高く評価します。より多くの方がゲートキーパー養成講座を受講されるように一層の意識啓発、広報を望みます。 自殺対策基本法改正をうけ、本区としてはセーフコミュニティの地域実績を生かし、学校、保育園、保健所、警察、児童相談所等と連携した取組みを評価します。関係機関の更なる情報共有を図り命を大切にする取り組みを望みます。
また、精神障害の方へのアウトリーチ事業を評価します。うつ病、自殺未遂者への支援員訪問事業により、地域生活ケアシステムの構築を推進して頂くことを要望します。また、オーストラリア、アメリカで注目されている市民向けプログラム「メンタルヘルス・ファーストエイド」など新しいプログラムを検討するなど、SDGsのどのような方でも誰一人取り残さない安心の心の体制つくり、取り組みを望みます。
【環境清掃費・都市整備費】について
池袋副都心移動システム「イケバス」の貸切運行や、隣接区へのルート拡大の提案と“乗る必要をつくる”利用者拡大に向けた仕掛けつくりを要望します。我々公明区議団は魅力ある都市のシンボルとしてのIKEBUSを軌道に乗せたうえで、その先に、交通不便地域の住民の移動手段確保の検討を引き続き要望します。
SDGSの大家、慶應大学蟹江先生を会長としてまとめられた本区環境計画が文化と連携した特徴を掲げながら、SDGS未来都市・モデル事業選定により一層の環境施策の充実発展を望みます。特に本庁舎の環境庁舎の取り組み広報に努めることを望みます。
東京都がゼロエミッションTokyo、カーボンゼロ宣言し、全国159自治体でカーボンゼロ宣言がされています。姉妹都市の秩父市とのカーボン・オフセットを評価。今後は、23区協働してカーボンゼロ推進に取り組まれるよう望みます。公明党が推進し昨年成立した食品ロス法案から1年が経過、本区でも我々の要望によりフードドライブが清掃事務所一か所から、本庁舎内、東西区民事務所に拡大し、職員の皆様からも多くの協力を得ることができ評価します。防災備蓄品の期限が近いアルファー米を子ども食堂、生活困窮者に提供する事業が好評です、しかしながら窓口となる社会福祉協議会のスペースが手狭になりつつあります。物資を置く場所確保を要望します。
各種交通安全の取り組みの中で、自転車損害賠償保険義務化が令和元年施行され安価な区民災害共済が急増しました、転入者が年度途中でも加入できるよう、加入自治体との協議を望みます。高齢者ドライバー事故対策で急アクセル改造費用の一部を区が助成し自己負担無しの制度を評価します。また、ながらスマホ対策が他自治体で条例化されつつあります、歩きスマホによる事故も増加しているところから、条例化の検討と全ての交通安全対策に取り組み、セーフコミュニティ認証都市として模範の安全対策を望みます。
【文化商工費・子ども家庭費・教育費】について
コロナ渦における教育現場への影響や現況、学校現場の感染拡大防止対策、在宅学習に対する子供への心のケア体制などの適切な対応を要望します。
またインフルエンザの季節となり、中学3年生の受験への影響や発症時の対策、インフルエンザ予防接種の受験生への支援体制、濃厚接触者となった場合の学習体制、インフルエンザ治癒証明の不要化など、受験生が安心して受験に臨める体制づくりを望みます。SDGsの誰一人取り残さない教育の推進にSociety5時代のGIGASchoolの体制を他自治体に先駆けていち早く準備をされ、9月末には全小中学生へのタブレット整備を実現されたことを大いに評価します。まずは、教員も児童生徒も「慣れる」ことからはじめ、段々と調べ学習やコミニュケーションの「あたりまえの道具」となるように自宅の保護者へのご協力と外部人材活用にも積極的に取り組む事を望みます。SNS上のトラブルなど情報モラルの徹底に取り組んで新しい時代の楽しい学びの創出を期待します。また、従来から要望して来た、不登校児等支援が必要な児童へのコミュニケーションツールとしての有効活用を望みます。児童相談所設置準備については、職員の確保、人材育成に取り組んで頂き、現在本区の児童100名が乳児院、児童養護施設、里親にお世話になっています。様々な状況を勘案して今後の施設整備の充実に努めるように要望します。更に、地元地域住民にとっては初めて整備される施設であることから、この施設の実情を町会、商店街、育成委員会、民生委員、小中学校PTAなどの皆さんに充分理解を得られるよう、説明につとめて頂くことを要望します。
子ども子育て支援事業計画の現状や今後の保育園の誘致計画、保育現場でのコロナ感染拡大防止対策や保育内容について、この4年間で3,179の定員を拡大し待機児童0実現したことを高く評価します。幼児保育の無償化により保護者の負担軽減がはかられ今後は多様な保活に質量共に保護者の期待に応えられることが期待されます。また需要の高い一歳児へ保護者のニーズに応えられるよう適切な対応を望みます。これからも「子どもと女性にやさしい街づくり」をさらに向上させて頂くことを要望します。
【特別会計】について
国民健康保険会計では、国全体で毎年1兆円づつ増加する医療費の現状から医療費の適正化は今度の大きな課題。負担が大きい糖尿病の重症化予防に加えて、服薬情報提供を開始。ジェネリック薬品、データヘルス・レセプト点検で更なる重症化対策等できうる限りの対策で医療費の削減を望みます。
以上委員会審議に沿って、一般会計、特別会計に対する意見・要望を述べさせていただきました。
今決算年度は「100年に一度の大変革」と位置づけ、国家事業である東アジア文化都市2019の交流事業の成功はじめ、HAREZA池袋など4つの特色ある公園整備、子育て女性支援、高齢者対策においても将来に繋がる予算執行ができ、更に全小中学生へのタブレットPCの確保を図るなど、大きな、大きな成果が得られ、豊島区が大きく脱皮した年であると感じます。その底流には高野区長の長年に渉る豊島区に掛ける熱い思いがリーダーシップとなり職員に波及し、そして地域に波及し、多くの区民の心を動かし、まさしく「オール豊島」でこの大変革が実現できたと感じられます。中国の西安や韓国の仁川にあれだけの大勢の豊島区の民間人が高野区長と共に交流団を結成した姿が如実に物語っていると思います。
あらためて、本決算委員会に付託されました、令和元年度一般会計決算及び3特別会計決算ともに適正な会計決算であると判断いたします。
今後の豊島区の区政の方向性は、豊島区基本構想審議会のもと、後期基本計画について議論がされます。区長からは後期基本計画にはSDGS未来都市、モデル事業に選定された本区にとって、将来のあるべき施策の方向性にSDGsの観点を盛り込むと話されました。また、女性の視点からを重んじ女性の委員も増やすと伺いました。ウイズ・コロナ、アフターコロナの誰もが経験したことのない社会での基本計画策定となります。令和元年度に大きく姿を変えた本区が、これからは、中身の充実を図っていく観点が必要と考えます。過去にも大きなピンチを何度も盛り返してきた本区の底力を大切な区民とタッグを組んで、子どもたちに誰一人取り残さない新しい豊島の姿を造り上げていただくことを期待しております。
以上で、意見開陳を終わります。ご清聴ありがとうございました。