集団的自衛権の行使容認に関する請願・陳情の賛成討論

平成26年 7月4日

公明党豊島区議団 木下 広

私は、ただいま議題とされております26請願第4号「海外で戦争する集団的自衛権の行使容認に反対の意見書を求める請願」及び26陳情第19号「立憲主義を否定する政府の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに反対する意見書を国に提出を求める陳情」につきまして、不採択とすることに賛成する立場から討論をいたします。

政府は1日夕に臨時閣議を開き、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行いました。従来の憲法解釈と整合性を保ち、憲法上許される自国防衛のための武力行使の限界を示すとともに、今後、国民の命と平和を守り抜くために切れ目のない国内法整備に取り組む方針を明記しました。
同閣議決定は前文で、戦後日本が専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならず、平和国家としての歩みをより確固たるものにすると強調。さらに、力強い外交の推進や法の支配の重視、紛争の平和的解決への意思も示しましたが、これらは我々公明党の訴えにより盛り込まれました。
その上で、日本を取り巻く安全保障環境の根本的な変化を受け、国際社会の平和と安定に貢献するために、切れ目のない対応を可能にする国内法制の整備の必要性を提起しています。
与党協議で焦点となった「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」については、現在の政府の憲法解釈のベースとなっている1972年の政府見解の基本的な論理は「憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない」と明記された。その上で「自衛権発動の新3要件」を定めました。
公明党はこの新3要件について、「他国」を「我が国と密接な関係にある他国」に変え。また、発動の要件を、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される「おそれ」「明白な危険がある場合」と厳格に変えて歯止めをかけた。さらに、「我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容される」と、あくまで自国防衛に限った措置であることも明確にしました。

また、閣議決定では、国際貢献への新たな対応にも言及。国連平和維持活動(PKO)に関しては、離れた場所で襲撃された文民要員らを自衛隊が救援するための武器使用を認め、いわゆる「駆け付け警護」を可能にしました。多国籍軍への後方支援では、従来の他国の武力行使と一体化しないとする基本原則を維持した上で、他国が現に戦闘行為を行っている現場では支援活動をしないこととしました。すなわち、今回の決定は、私ども公明党からすれば、集団的自衛権の容認ではなく、あくまでも個別的自衛権の拡充なのであります。

総務委員会の審議で我々は、与党協議で話題になった、朝鮮半島情勢を例にとり、韓国で生活している3万5千人の日本人が、もし朝鮮半島有事が起きた場合の救出方法。予想される北朝鮮難民の保護を具体的に考える必要性を訴えました。請願の紹介議員になっている委員は「そもそもアメリカは日本を助けない」「そのような事態はありえない」と専門家が言っているから、心配ない。「その時は民間機が助ける」とまったく、空想的なお話しをしておられました。

何の対案も出さずに、今回の閣議決定に反対を叫んでいるだけの方々は、この生命の危機にさらされている韓国の3万5千人の日本人を見捨てる事に同意する無慈悲な人間と言わざるを得ません。

中国の一方的な防空識別圏の宣言も、東アジアの平和と安定に大きな影を落としており、1972年時代とは全く違った状況のなかで、憲法9条の範囲のなで、国民の生命、財産を守ることを真面目に考えていくことこそ政治の役目と考えています。

冷戦が終結し、日本は国連PKOへの自衛隊参加に道を開きました。我々公明党も大変な議論を重ね賛成の立場をとりました。当時も「自衛隊の海外派兵反対」「戦争への道を開く」等と多くのマスコミ、野党は批判しました。しかし、カンボジア、モザンビーク、南スーダンなど自衛隊の活動は世界の平和に大きく貢献、感謝され、高い評価をうけました。当時、猛烈に反対キャンペーンをはった勢力は、今では180度論調を変えて、この国連PKOへの自衛隊の活躍を大いに評価しています。PKO法案の議論の最中には、戦争の道を開くと国民を不安に陥れて大騒ぎをしたマスコミの方々が、その後は何も述べず、平然としている。節操がないと多くの国民・識者があきれています。当時のPKO法案反対の報道、言論が正しかったのか、間違っていたのか?明確にすべきであります。

今回の集団的自衛権に関するマスコミ報道にも私たちは注視していきたいと思います。

先日の新聞報道では、アジアのASEAN加盟10カ国すべてが、今回の日本政府の閣議決定に賛意を示しており、多くの国はきわめて強く歓迎しています。韓国政府も、朝鮮半島への関与については、韓国の同意を要請していますが、反対の意見を示していません。強く批判したのは、世界で200カ国ほどある国の中で、中国ただ、一国です。その中国も、今回は驚くほど抑制的な対応でした。反対する方々が「多くの外国が心配している」等と宣伝していますが、感情的に嘘をならべるのはあまりにも見苦しいと思います。事実は、アジアのASEAN加盟10カ国すべてが、今回の日本政府の閣議決定に賛意を示しており、200か国のうち反対を表明したのは中国だけであります。

さらに、今回の閣議決定で、自衛隊が集団的自衛権の行使が可能になるわけではありません。そのためには、自衛隊法の改正をしなければならず、もしも国会での審議の結果としてそれが拒否されれば、内閣の意思として集団的自衛権の行使が可能だという解釈を表明しながらも、実際には自衛隊は行動できないことを意味します。また、自衛隊法を改正しても、そのときに国会がその行使の容認を拒否すれば、国会での承認が必要となっているので自衛隊は動けません。野党や一部政党が「一内閣の意思で戦争ができるようになる」、というのはあまりにも事実に反する理解です。今回の閣議決定は、単に内閣としての意思を示したものにすぎず、それだけでは自衛隊は行動できません。自衛隊法に書かれていないことは自衛隊は活動できないのです。反対する方々は、この重大なポイントには一切触れないのはどうしてでしょうか?今後、国会において法制化の議論する時間は十分あるのです。

またある雑誌のデータでは、日本以外の世界中の国が、集団的自衛権の行使が可能なはずですが、世界中の国がすべて戦争に参加しているわけではない。陸軍、海軍などの、遠征能力、前方展開能力、戦略輸送能力をもっている国はイギリスぐらいしかなく、コソボ戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争の戦闘の局面ではほとんどイギリス以外の諸国は、軍事作戦には参加していません。アメリカとともに戦闘に参加する軍事能力をもたないのに、戦争に巻き込まれると宣伝するのは、日本の軍事能力を間違って高く見積もる「うぬぼれ」にすぎません。と指摘しています。軍事専門家の見解では、遠征能力をもった高度の戦闘能力を身につけるためには、日本の防衛予算を現在の2倍から3倍に増強が必要とのことです。

 朝日・毎日等の反対の論陣をはる新聞社は世論調査で、「集団的自衛権の行使を容認すべきか」」と質問し、それに反対する意見が多いことをことさら強調していますが、それが全面容認ということであれば、現状では、おそらくは、ほとんどの方が反対すると思います。今回の閣議決定では、きわめて限定的で抑制的な部分容認であり、従来の個別的自衛権とほとんど変わらない自衛の範囲を明らかにしています。あたかもアメリカやイギリスと同等の水準で、集団的自衛権の行使が全面容認されるかのように報道することは、事実の歪曲か無知か、悪意かのいずれかと断ぜざるをえません。

また従来から、「日本の自衛隊のPKOに参加する隊員は、助けを求めに来た目の前で暴行をうけている現地の少女を助けることも、武装集団に襲われて助けを求めるNGOボランティアの方々を助けることも、従来の内閣法制局の憲法解釈ではできません。また侵略を受けて多くの犠牲者が出ている国に、医療品を提供することもできません。いずれの場合も、日本が組織的に武力攻撃しているわけでもありませんし、戦争に参加しているわけでもないのに、なんら手が出せない」との法解釈に大きな疑問がなげかけられてきました。

現政権における、平和主義の精神は、公明党がいる限り、今後も日本の安全保障の根幹に位置づけるのは当然です。1972年以降の硬直的な内閣法制局の憲法解釈を精査することで、上記のような場面で、より人道的な、そして国際協調主義的な対応が可能となるのです。これらを行わないことは、国際社会における利己主義であり、また人道主義への裏切りです。
 これら現実的な世界情勢をすべて無視して、今回の政府の抑制的な決定を見て、「これで立憲主義が死んだ」あるいは「これで日本は戦争のできる国になってしまう」」というのは、あまりにも短絡的であります。

このような方々は、独裁者の弾圧にある他国の民衆を助けるな!自衛隊員以外の人命を救助するな!といっているようで、同じ人間として、とても悲しくなります。ある学者は、「平和主義」という仮面をかぶったエゴイズムが確実に広がる姿と断じています。憲法に記されている国際協調主義の精神、苦しんでいる他国を支援するという倫理を今一度考えていく必要があるのではないでしょうか。

 請願、陳情文では、我々の議論を「日本を海外で戦争する国にしようとするものであり、立憲主義の否定」と断じており、我々とは、大きな見解の違いがあることを発言しました。

そして採決では、新聞社大手の朝日、毎日、東京の戦争に突入する反対の論調と読売、産経の世界貢献に資する英断との賛成の論調との真っ二つに分かれているこの集団的自衛権に関する重要な課題を、もっともっとより多くの国民の間で議論されるべきであり、全国の自治体で採択されている「慎重な議論を望む」という考え方も必要であると継続を主張しました。残念ながら、継続は賛成少数で否決され、改めて結論をだすにあたっては、請願、陳情文の主旨である「日本を海外で戦争する国にしようとするものであり、立憲主義の否定」との主張は全く当てはまらないことから不採択との意思を表明しました。

閣議決定後、野党は、「集団的自衛権の行使は国民の命を危うくする。国会で議論することなく、密室の与党協議で決めてしまった」「政権は説明不足だ」と声高に訴えたが、今のところ野党が批判で足並みをそろえられるのは、「拙速だ」とする政権の手法への批判どまり。集団的自衛権行使そのものを積極的に認める党もあり、野党が一致して対立軸を作れていないと報道されています。

委員会でも述べましたが、現在の日本を取り巻く情勢は、多くの識者が指摘しているようにきわめて緊張感が高まっています。その最たるものは、先のも述べたとおり、北朝鮮崩壊の可能性です。拉致被害者に関する日朝協議のまっ最中にミサイルを協議する相手国である、こちらに向けて撃ってくる国家であり、この先、もし中国に見捨てられたら、何をするか、どうなるか?非常に心配されます。

委員会の審議で請願の紹介議員の方々は、専門家が「そのような事態はありえないと言っているからありえない。」「もしその事態になればちゃんと民間機が助けにいくから大丈夫」という意味の主張をされました。拉致被害者に関する日朝協議のまっ最中にミサイルをこちらに向けて撃ってくる国を、半島有事はないと言い切れるのでしょうか?かの国をそれほど信頼できる理由はどこにあるのでしょうか?我々は過去に独裁国家の崩壊と大勢の難民の悲惨な姿は何度も見て来ています。

更に、朝鮮半島情勢に詳しい識者は具体的な想定をし問題提起をしています、「北朝鮮が崩壊すれば、飢えた難民が韓国に流入してくる。北朝鮮軍の兵士も武装して流入してくる。韓国は大混乱になる。日本にも難民は流入してくる。韓国政府はこれに備えて「7ヶ月計画」という対応プランを立てており、全ての学校を休校にして受け入れる。毛布や衛生用品は備蓄しているが、必要とされる100万人規模の食糧は備蓄は出来てない。韓国政府は日本の備蓄米に大いに期待し頼らざるをえない。こういう事態に韓国軍と在韓アメリカ軍が対応する中で、韓国で現に生活している日本人3万5千人はどうなるか?日本に上陸した北朝鮮難民はどうするか?やはり自衛隊が後方支援に行くべきだろう。」とのべています。

これが今回の新たな3要件である「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」との一番分かりやすい例だと思います。「このような事態は考えられない」から考える必要はないと言い切れるのでしょうか?

今回の「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定が、憲法9条のもとで、今後の我が国の国民の生命と財産を守り、隣国の善良な人民を守る英断であることを重ねて申し上げ、26請願第4号「海外で戦争する集団的自衛権の行使容認に反対の意見書を求める請願」及び26陳情第19号、「立憲主義を否定する政府の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに反対する意見書を国に提出を求める陳情」は、不採択とする事が妥当であることを改めて申し上げ、討論を終わります。ご清聴誠にありがとうございました。