令和4年決算特別委員会(10月19日)意見開陳原稿 公明党 辻薫

区制施行90周年を100周年に向けて持続可能な魅力ある街へ

 公明党の辻薫でございます。私は、公明党豊島区議団を代表しまして、令和3年度一般会計決算並びに国民健康保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計の3特別会計決算を認定することに賛成する立場から意見開陳をいたします。

【初めに】
初めに、円滑公平な運営に努められました星京子委員長並びに藤沢愛子副委員長の労に感謝を申し上げます。
また、理事者の皆様には、資料要求を初め、事前調査に快く応じていただきまして、私どもの質問に対し、その意を酌まれ、丁寧に御答弁いただきましたことに心から御礼を申し上げます。

さて、令和3年度決算に当たり、私ども公明党は、1.区民の目線に立った行政運営がなされているか、2.豊島区を取り巻く時代の変化に的確に対応した事業展開となっているか、3.安定的、持続可能な財政運営がなされているか、4.SDGsを基調とした取り組みとともに、セーフコミュニティの安全・安心の取り組みがなされているか、以上4つの指標を基に、慎重かつ厳正に審査に臨みました。

まずは、令和3年度当初予算について、確認の意味から触れさせていただきます。
予算編成時は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、区の歳入環境は、急激に悪化しつつあり、令和3年度における基幹歳入の減収規模は、当初予算対比で合計66億円にのぼると想定。その一方で、福祉や教育、子育て支援など、区民生活を支える基本的な行政サービスを安定的に提供するとともに、感染症への対策についても時期を逸することなく、的確に展開することが求められていることから、令和3年度の一般会計予算規模は、前年度比1.5%増の1,302億2,700万円と、過去2番目に大きい規模となりました。

また、8年ぶりに財政調整基金から69億円を取り崩すことになりましたが、これは、財政状況を乗り越えてきた過去の経験を活かしたものでした。

そして、令和3年度決算についてですが、一般会計の決算額としては、歳入が前年度4.1%減の1,489億7,400万円で、歳出は4.5%減の1,436億9,500万円となり、歳入歳出決算とも当初予算同様過去2番目の決算規模となりました。

ここからは、本委員会での質疑について取り上げます。

【総括質疑】
総括質疑では、まず、令和3年度決算の特徴を伺いました。最大の特徴は、基金残高が過去最大規模の446億円となったこととともに、貯金と借金のバランスがこちらも過去最大規模となる218億円の貯金超過となったことであるとし、財政の健全性をさらに改善させるとともに、将来への備えをより強固なものとした決算であるとの認識を確認しました。

また、貯金と借金のバランスに関して、令和3年度末の貯金の超過見込み額よりも大幅な貯金超過となった見込み違いについて伺いました。

見込み額との差については、財政調整交付金などの基幹歳入が大幅に改善されたことと、また借金である区債については、当初予算において新規の起債56億円を想定していたところ、極力、新たな借金をしないという方針のもと、新たな起債額を5億円にまで圧縮したことによることを確認いたしました。

総括質疑では、その他、コロナ対策経費や不合理な税制改正による影響について質問し、最後に、今後の区政運営に対する高野区長のお考えを伺いました。高野区長からは、今回の決算について、「財政の健全性を維持し、将来への備えをさらに盤石なものとした、本区にとってまさに最高の決算になったのではないか」とのご見解が示されました。

また、今後については、「区民生活を守るため、区民の皆さんの目線に立った堅実な財政運営を実践していくとともに、地域の魅力と活力を高め、価値ある街の実現に向けた区政を展開していく」とのご決意を伺いました。

款別質疑

以下、款別ごとに、具体的な提案も含め、特筆すべきことを述べさせていただきます。

最初に、議会費、政策経営費、総務費について申し上げます。

・議会や行政用語について、分かりやすい用語集の作成を要望します。

・SDGs未来都市推進事業については、90周年の企業との連携の中で、企業認証制度導入の検討をして頂くとともに、第2期計画では、人が中心の選ばれるまちなど豊島区らしい計画の策定を望みます。

・セーフコミュニティは、初認証から10年が経過し、オール豊島の体制が出来上がったものと評価します。今後は、区制100周年を目指して若い世代を取り込んでいくことを要望します。

・DX推進については、高齢者等デジタルデバイド対策として無料講座とスマホの貸し出しを望みます。

・政治資金規正法違反の反省から一層のコンプライアンスの順守を望みます。

・10月4日に、北朝鮮の弾道ミサイルが5年ぶりに日本上空を通過したことから区民がどのように行動すればよいのかを確認し、引き続き区民を守るための取り組みを推進するよう要望します。

・防犯カメラ設置補助事業については、新規・更新とも計画的に設置可能な予算確保とともに、電柱使用料は、補助事業を受けずに設置した防犯カメラも対象とするよう要望します。

次に、区民費、福祉費、衛生費です。

・電子申請、コンビニ交付等のDX活用について、この夏開始した税証明電子申請が数10倍活用されたことを受けて,転出届の電子化、スマホ転出届の更なる推進を図っていくよう要望します。加えて戸籍証明をコンビニ交付に追加されるようお願いします。

・おくやみコーナーは、ご遺族に寄り添う本区の姿勢を示す事業として、

より一層的確なサポートが出来るよう引き続き改善をお願いします。

・高齢者に優しい健康長寿推進については、としまる体操、夜間緊急24時間相談電話体制、フレイル健診等更なる充実を要望します。

・重層的支援体制整備事業については、令和5度より本格実施され、既存の財源に加え、新たな機能のための財源確保が可能となることを確認。SDGsの誰一人取り残さない社会の実現へ向けて、地域共生社会の構築が図られるよう推進をお願いします。

・発達障害者支援事業については、相談窓口での相談状況を確認しました。

ライフステージを通じて切れ目ない支援が必要なことから福祉・保健・医療・教育などとの連携による取り組みを要望します。

次に、環境清掃費、都市整備費です。

・プラスチック資源回収については、なによりも区民説明が重要。出前説明会などあらゆるチャネルでの周知、例えば分かりやすい排出の動画の作製を要望します。また、集合住宅での賃借人への周知については、不動産関連団体へ協力を仰ぐなど、スムーズな導入に向けて取り組むことを要望します。そして、本区の焼却炉の安定的な稼働や、環境負荷の低減に寄与して頂くようお願いします。

・マンション施策については、マンションの二つの老いの内、居住者の高齢化について、特に認知症への対応を検討するよう要望します。管理不全の予防や居住者の高齢化への対応、管理組合、特に理事長職の価値を高めた評価について今後の施策につなげていただくことを要望します。

・大塚駅周辺整備については、南口・アトレ前の放置自転車対策強化をお願いします。また、大塚駅東側道路の一方通行化に伴う交差点や歩道の拡幅整備工事期間中、自転車や歩行者が安全に通行出来る対策の検討を要望いたします。

・区営住宅千早4丁目アパートの大規模改修時のエレベーター設置の検討状況を確認するとともに、今後予定している改修計画において、低層階においてもエレベーターの設置を要望いたします。

・ウォーカブルなまちづくりについては、都市整備部としての推進状況と効果についても確認しました。池袋駅西口再開発の後押しともなるよう引き続き推進を要望致します。

・住宅セーフティネット事業について、専用住宅の登録には、オーナーへのインセンティブが必要であるとの認識とともに、プッシュ型での登録促進を要望します。

次に、文化商工費、子ども家庭費、教育費です。

・子どもの権利推進事業は、子どもの権利侵害について、救済する機関を設けて真に子どもの権利保障を支援していくことを要望します。

また、家庭で地域で学校で、あらゆる機会を通して子どもたちの声に耳を傾けなるべく意見を取り入れていく「こどもまんなか社会」の実現のための施策を、今後も推し進めていくよう要望します。

・認可保育所の運営について、保護者、保育園の負担軽減のため、紙おむつのサブスクの導入を要望します。

・子どもスキップについて、職員の欠員解消のためには、報酬の見直しとともに、スクール・スキップ・サポーターの増員を提案します。また、本などの一般需用費の増額を望みます。

・千川中学校の改築については、校舎の高層化と複合施設化という、これまでにない計画であることから、特に周辺住民の皆様には、引き続き丁寧な説明と対応をお願いします。また、校庭の人工芝化の検討も要望します。

・特別支援教育については、公明党区議団の要望により、令和5年度から、池袋第一小学校と区内初の池袋中学校に増設されることを高く評価します。教員の指導力向上への取り組みと共に、今後の「インクルーシブ教育システム」の構築を要望します。

・子どもの健康については、ICT化が加速する中で、児童生徒の目の健康予防とともに、体力・運動能力の向上、そしてコロナ禍における心のケアへの取り組みなど、心身の状態についての状況把握を行い、学校現場と各家庭での児童生徒と保護者がしっかり健康管理できるように取り組まれるよう要望します。

次は、公債費についてです。

・3年度当初予算に計上した特別区債発行額約56億円が、3年度決算では、発行額5億2千万円と縮減されました。今後も中長期的な計画と最悪の想定への備えとともに、区民のいのちと暮らしを守る深い信念も求められている。持続可能な財政運営について、不断の努力をお願いします。

次は、一般会計歳入についてです。

・特別区税は、前年度比3億円の減少、特別区民税が11年ぶりに4億円の減少、また、納税義務者も減少していることを確認しました。また、ふるさと納税の影響額16億円、その対策として、自治体版クラウドファンディングを、住民などの身近な課題解決のために対象事業を絞って、ふるさと納税の仕組みを活用することを提案します。

次に、国民健康保険事業会計については、令和3年度の区の医療費が国と同様に新型コロナウィルス感染症の影響による減少の反動により、増加に転じたことから、引き続き、糖尿病重症化予防事業やジェネリック医薬品利用促進、さらにレセプト点検による医療費の適正化を図るよう要望します。また、被保険者への各種封書の宛名が極めて小さいことから、改善をお願いします。

【まとめ】
以上、様々意見を述べさせていただきましたが、その他、時間の関係で質問出来なかった事業についても、会派の勉強会で事前に頂いた資料を基に、理事者からの聞き取りや、令和3年度豊島区行政評価(事務事業評価)などを参考に審査を行いました。その結果、各事業については、冒頭に述べた私どもの指標に照らし、概ね問題なく実施されていることを確認させて頂きました。

また、3番目の指標である「安定的、持続可能な財政運営」については、総括質疑はじめ、款別質疑の一般会計歳入や公債費でも時間をかけて質問させて頂き、本区における財政運営の健全性が十分に保たれているものと判断させていただきました。

その上で、特にふるさと納税については、本区の歳入に16億円の影響があることから、国に是正を求めていくとともに、華美な返礼品の競争には反対の立場との基本方針を理解しつつも、一方で区民税への影響や産業振興を考えれば、ここは一歩、踏み出すべきであり、例えば区の伝統工芸を広めていく視点や、環境配慮を先進しているイケバス、そしてマンガ文化の拠点となるトキワ荘など、ふるさと納税について積極的な活用を検討されるよう要望させて頂きました。

そして、4番目の指標であるSDGsとセーフコミュニティ」の視点では、個々の事業で取り組み状況を確認するとともに、改めてこの2つの関係性を確認したところ、区からは「この10年間、セーフコミュニティにより培われてきた『安全安心』のまちづくりの基盤の上にSDGsがある」として、「『安全安心』が確保されているからこそ、SDGsという大きな目標にチャレンジが可能となっているのではないか」との認識を確認させて頂きました。

最後になりますが、昨今のウクライナ情勢などの不安定な国際情勢による原油高や物価高騰、さらに、コロナ感染症の収束の見通しが立っていないなど、日本経済を取り巻く環境は不確実性が高まっています。

今後とも安定的で持続可能な身の丈に合った財政運営にご努力頂くとともに、区制施行90周年という節目の年に、100周年に向けて展望の開ける決算として持続可能なものとしていくためにも、令和5年度の予算編成にあたっては、今委員会での審議を充分に反映させていただき、最小の経費で最大の効果を挙げる新年度予算となるよう強く、強く要望して、令和3年度決算における認定に際し、公明党からの意見開陳と致します。

ご清聴、誠にありがとうございました。