H17年1木下広代表質問と高野区長他関係理事者答弁全文
「区政の再編で持続可能なとしまづくりを」
平成17年2月22日 15:30~本会議場
私は公明党豊島区議団を代表して「区政運営の再編で持続可能な〝としま〟づくりを」と題し、①平成17年度予算編成について②今後の行財政改革について③今後の区防災対策について④LANの有効活用について⑤その他地元の街づくりについて質問します。簡潔に質問しますので簡潔かつ前向きな答弁を期待し質問に入ります。
まず、平成17年度予算編成、方式について伺います。平成17年度の予算編成は、従来の査定方式から各部局への「一部枠配分方式」に変更したと聞いていますが、2月8日の予算内示会での区長コメントにも「これまでの査定方式から一部枠配分方式に大転換し、限りある財源を有効に活用し、効果的かつ効率的予算となるよう、予算編成の権限の一部を各部局長に委譲いたしました」とありました。
この「枠配分方式」を実現するため、昨年の5月頃、当時『今後5年間で308億円の財源不足が見込まれており、そのうち17年度は71億円の財源不足』であったと記憶しています。その財源不足を仮に「枠配分方式」で解消しようとすると、当時、各主管部局で想定していた事業費の一般財源を、単純に71億円削減することになり、率に換算するとなんと62%の削減をしなければならないという衝撃的な取組みが始まったと読み取らざるを得ませんが、その後、改めて昨年8月に、予算編成にあたって『今後5年間で約370億円、17年度では66億53百万円の財源不足』となり、本格的な編成作業に入ったと認識しています。
そこで、今回の予算案作成まで、いろいろ大変な作業があったと思われますが、まず、①第一に「一部枠配分方式」とはどういう内容なのか。②各部局に一定枠を配分するには、様々な考え方があると思うが、どのような考え方で枠配分額を決定したのか。その結果、各部局の取組み状況はどうだったのか。また、その枠配分の予算額は対前年度比ではどのようになったのか伺います。更に③予算編成を終えて、この方式を導入する趣旨、ねらいは達成されたのか伺います。また、この枠配分方式のメリット、デメリットはなにで、④今後の予算編成もこの方式でいくのか?区民への説明はどのように考えているのか伺います。
高野区長答弁
ただいまの 木下 広議員のご質問に対しまして、順次お答え申し上げます。 平成17年度の予算編成方式について、のご質問のうち、まず、「一部枠配分方式」の内容についてお答えいたします。
予算の枠配分方式は、人件費や投資的経費も含めた総予算枠を各部局に配分し、各部局はその枠内で、トップの政策実現のための事業戦略を立て、予算化することであります。
しかしながら、本区においては、導入初年度でもあること、また、人事権の委譲を伴う人件費の枠配分には、検討すべき課題が多々あることなどから、人件費や一定の政策判断を必要とする投資的経費、各部局の裁量が極めて少ない義務的な経費、首長の政策的経費などを枠内経費から外した「枠外経費」とし、それ以外の経費を当該年度の「予算枠」として配分する方法といたしました。これを便宜上「一部枠配分方式」と表現したものでございます。
なお、枠配分の対象外とした投資的経費など「枠外経費」につきましては、従来どおりの査定方式で予算額を決定しております。
次に枠配分額の決定の仕方ですが、前々年度の決算額をベースに、当該年度の増減要素、さらには、この度の「行財政改革プラン2004」を確実に実行することを前提に、各部局の必要想定額を財政当局で推計し、配分額を決定しました。この配分する予算枠は、一般財源でございまして、各部局の枠内の予算額は、これに国や都の支出金など特定財源を合算した額となります。
今回の枠配分方式における取り組み状況でございますが、各部局とも全職員が一丸となって、配分された枠内での予算案作成に総力をあげて取り組み、様々な創意工夫と知恵を駆使し、全部局が枠内での予算案作成を成し遂げたのであります。このことは、全職員の財政に対する危機意識の現れであると考えております。
また、枠配分方式により策定した予算額の対前年度比ですが、これに該当する16年度の一般財源の予算が92億8千6百万円余で、17年度予算が79億7千4百万円余でありますので、 13億1千2百万円、14.1%のマイナスとなりました。
次に、この一部枠配分方式を導入する「趣旨」、「ねらい」の達成状況とこの方式のメリット・デメリットですが、まず、枠配分方式のメリットは、
第一に、スクラップ・アンド・ビルドを徹底した予算編成になること、
第二に、コスト意識に立脚した全職員参加による予算の編成になること、
第三に、財政状況などの透明性が確保され、区民の皆さまへの説明も容易な予算編成になること、
第四に、総額での予算コントロールによる財政支出の抑制が図られること、と考えております。
制度導入の趣旨、ねらいは、このメリットの具現化と、現下の厳しい財政状況の中で、直接サービスを担っている各部局が新たな視点と発想で実効ある歳出構造の改革を行い、限られた財源の中で、区民要望に即した政策目標を、より効果的、効率的に実現することにあり、さらに、その上に足腰の強い組織体質づくりにあります。
これらの視点から各部局の17年度予算の編成状況や予算内容から判断しますと、職員の理解も得られ、枠内での予算もできましたので、この制度を導入した趣旨、ねらいはある程度達成したと考えております。 なお、デメリットでございますが、各部局ごとの予算編成であるため、類似の事業が予算化される可能性があり、その調整が課題となりますが、そうした問題は今回はございませんでした。また、この枠配分方式は、予算編成作業が早くスタートしなければならず、するため、歳入の見込みが難しいことにあります。
次に、今後の予算編成方式と区民への説明についてですが、18年度以降もこの枠配分方式を継続してまいります。そして、さらに実効ある予算編成とするため、庁内分権を一層推進し、予算枠の配分の対象範囲を極力拡大し、各部局の自己検証・自己責任のもとに予算編成をする仕組みを充実させてまいります。
また、そのことにも連動いたしますが、いわゆる「事業部制」制度についても、今後検討したいと考えております。
続いて今後の財政改善に向けた行財政改革のあり方にについて伺います。
我が豊島区は、高度成長の時代さらにバブルの時代において社会資本整備ため投資を続け、その結果としての公債費償還などに苦しんでいる現状があります。だれもが右肩上がりの経済に慣れ、不況がきてもまた再び税収入等の伸びがあるであろうと期待して、大幅な歳出削減に本格的に取り組んでこなかったことへの反省を踏まえなくてはなりません。
本区の単年度の実質収支が赤字となった平成6年以降、区は自らのスリム化、身の丈にあった行政の再編をするとともに、「プライマリーバランス」、すなわち単年度の収支均衡を図ることを最優先の課題として取り組むべきところを、大きくなりすぎた区の職員給与に係る経費や高度成長期に建設してきた学校や福祉施設などの建て替え更新、あるいは高齢者介護対策などの需要の増大から、厳しい言い方をすれば、結果として思い切った抜本的な再編を行なえず、こんにちの財政危機に至ったと認識しています。
そこで、ここ数年来実施してこられた行政評価の取り組みあるいは財務諸表の作成など、行財政の各種分析について、「財政規律」の確保という観点から、伺わせていただきます。2004で「説明責任と透明性の向上」を訴えている以上、これらの成果をいまこそ改革に役立てていくべきではないかと強く考えるからであります。
まず、区長は、新生としま改革プランを策定し、人事白書、施設白書、行政サービスとコストなどの白書を作成し、透明性の確保を図られてきたわけですが、これらの分析はどのように生かされたのか伺います。特に、バランスシートや行政コスト計算書といった民間経営の手法ともいうべき財務分析は、本区をどのように位置付けているのでしょうか?23区の他団体と較べて、区の資産の状況、負債の状況について、どのような認識に立たれているのか区長のご見解をお聞かせください。また、その認識を基に今後どのような行財政運営をされるのか区長のお考えを伺います。
次に、バランスシートと連結バランスシートについてお尋ねします。
現在区が作成しているバランスシートについては、総務省方式によっています。これによれば昭和43年以前の有形固定資産については資産に計上されておりません。しかし、豊島区にはこの本庁舎を始め、昭和43年以前に取得された資産も多く、資産計上を行わないことは資産の把握に正確性を欠くものと考えられます。これにつきましては、多くの識者から資産台帳等を活用するほうがより正確な資産の状況を表わせられると言われており本区もこのようにするほうがいいと考えますが、区長の見解をお聞かせください。
次に、区には国保会計等の4つの特別会計、8つの外郭団体などがあり、さまざまな形で運営されております。こうした特別会計や外郭団体を含んだ連結バランスシートは、どのような効果があるのかお聞かせください。また、この4月に外郭団体の統合が行なわれ、区長の外郭団体に関する合理化がようやく目に見える形となってきました。バランスシートから外郭団体に係る区の財政支援の情況をどのように認識されておられるのか、この点も併せてお答えください。
次に、行政評価についてお尋ねいたします。
私は、行政評価と外部評価を導入している杉並区の関係者と以前から情報交換を行っています。杉並区の行政評価システムは「21世紀ビジョン」ならびにその「基本計画」に基づいた政策、施策、事務事業評価の3階層からなっています。例えば「基本計画」の「まちづくり」の分野の中に、政策の一つとして「良好な住環境と都市機能が調和したまちをつくる」があり、それに基づいて「まちづくり施策の総合的推進」という施策があり、その下に「都市計画審議会運営」と「建設工事統計調査」という事務事業があります。評価においては、それぞれの階層に適した評価の手法を用い、総合的で体系化されたシステムの構築をめざしています。行政評価の目的が成果重視の行政への転換、効率的で質の高い行政の実現、説明責任の徹底であり、その手段としての行政評価システムである以上、政策の効果をあげるためには、施策や事務事業の構成が重要となり、携わる職員も事業の効率化、事業の成果に真剣に取組んでいるとのことです。
なによりも杉並区の行政評価は担当部課と総括組織による庁内の評価体制以外に外部評価制度が明確に位置づけられています。行政評価の客観性を担保し、庁内の内部評価の結果について、新たに専門家等5人の委員により設置した「外部評価委員会」により外部評価を実施しています。 内部評価対象数は23政策、78施策、889事業 8団体と膨大であるが、外部評価委員会では限られた時間と労力の範囲で行うために5政策、19施策、3団体に絞って外部評価を行い、その中味は①評価意見②データ等に関する意見③今後のあり方の視点から政策、施策、事務事業の方向性に関する評価となっています。
内部評価では拡充が70%、現状維持が5%、効率化が25%という評価であるが、外部評価では拡充が50%、現状維持が16%、効率化が29%となっており、外から見た目との違いが明らかになっています。
こうして「杉並区外部評価委員会 報告書」としてまとめられ、広く区民に公開されているものであります。
行政の活動を評価することにより区の施策や事業を見直すことで、改善につなげていくことは非常に重要なことと考えます。本区では、平成17年度よりこれまで実施してこられた行政内部の評価に加えて、外部評価を導入されるとのことですが、その目的、意義について区長のお考えをお聞かせください。外部評価が区長の政策判断に対する参考資料となる場合には、その内容について議会でご報告いただけるのかどうか。また、これら外部評価を含めた行政評価の取り組みが、本区の財政の基本を成す政策形成にどのように反映していくのかについて、区長のお考えを伺います。
高野区長答弁
次に、今後の行財政改革のあり方についてお答えします。 まず、各白書等で区の財政構造の何がわかり、それをもとにどのように財政規律を確保するかという趣旨のご質問でございます。
区が、財政困難に直面した平成5年度以降、従来の行財政運営のあり方に対する改革の必要性が叫ばれてまいりました。行政運営の状況を明らかにして行財政改革に取り組むため、区民の皆様へ、財政白書、人事白書、施設白書、行政サービスとコスト、バランスシートなどの白書を発表してきたものでございます。 これら白書は、いずれも右肩上がりの経済を背景とした「ハコモノ」行政と、「コスト意識」あるいは「経営の視点」の希薄さを、データと図解で示したものとなっております。 そこで、これらの白書による分析がどのように活かされてきたかについてでございますが、これらの分析結果は、いずれも、新生としま改革プラン、さらには今回の行財政改革プラン2004に反映されております。
具体的に申し上げますと、財政白書では、投資的経費急増の状況の指摘から、その後の投資抑制に結びつけてまいりました。また、人事白書は、定員適正化計画へ、施設白書は、公共施設の再構築・区有財産の活用案へと、それぞれの計画の基礎として活用いたしております。 これらの白書及び民間の財務諸表による分析につきましては、公務部門に経営感覚を導入するツール(道具)であると位置づけておりまして、ひきつづきこれらを活用してまいりたいと考えております。
次に、バランスシート等民間における財務分析の手法についてお答えします。
バランスシートでは、正味資産と有形固定資産の関係を23区で比較することが可能となっております。たとえば世代間の負担率で分析いたしますと、23区平均が88%であるところ、豊島区は67%と残念ながら最下位という状況にございます。 これまでの区の資産の形成が借金に大きく依存してきたという証左であります。 従いまして、今後の行財政運営につきましては、「事後のコストの測定」を含めた「費用対効果」の分析を徹底し、将来への確かな情報力・分析力を培うことで「財政規律」の確保に努め、区財政の健全化に向け努力してまいる所存であります。
次に、バランスシート及び連結バランスシートについてお答えします。
第一に、バランスシートに係る総務省方式について申し上げます。この方式は、ご指摘のように、昭和43年以前の資産、たとえば、この本庁舎でありますとか、公会堂、その他多くの小中学校などは資産計上されておりません。 その点で、「資産の把握に正確性を欠く」とのご指摘はそのとおりでございます。 しかしながらご指摘のような対応をするといたしますとこれら財産の台帳を新たに起こし、資産として計上しなおすことが必要となります。それに要する経費や時間等を考慮にいれますと、現時点ではその効果を改革に活かしきれないのではと危惧いたします。 また、総務省方式に基づいて実施することによりまして、他団体との比較がしやすいことや、経年でのストック情報が比較できるメリットもございますので、当面、この方式によるバランスシートの作成とさせていただきたいと存じます。
第二に、連結のバランスシートの効果についてお答えします。
連結バランスシートでは、区が「投資・出資金」として計上する部分と、外郭団体が「基本財産」として計上する部分を相殺するなど、連結バランスシート自体の見えにくさという点もございます。しかしながら、区や外郭団体の抱える資産や負債の全体の流れを把握することが可能となり、透明性の向上に大きく寄与できるというメリットがございます。
また、外郭団体の財政支援の状況について、でございますが、コミュニティ振興公社を例に申し上げますと、その総収入の9割が区から支出されており、保有する資産につきましても区が出損(しゅつえん)しているという現状が見てとれるのでございます。 これまで外郭団体は、行政の補完機能を担ってまいりましたが民営化の流れの中では、あらためてその機能自体の意義が問われております。従いまして、今後は外郭団体の経営能力と支援の関係を再検証し、再構築していく必要があると考えております。
次に、外部評価についてお答えします。
まず、外部評価の目的等について申し上げます。 行政評価では、区民サービスを、「目標達成度」、「効率性」、「必要性」などの面から評価してまいりました。行政の透明度を高め、区民満足度の向上を志向した成果重視の区政を実現するためであります。 しかしながら、内部の評価だけでは、区民の皆様への「分かりやすさ」や「事務改善の効果」といった点で、自らへの「甘さ」が出ることも否めません。
第三者性の採用という観点から、外部の専門家や区民のご参加をいただき、制度の充実を期す必要がありますので17年度から外部評価を実施することとした次第であります。 この外部評価の結果につきましては、内部評価と並列してとりまとめ、当然議会にもご報告させていただきます。
次に、行政評価と政策形成についてお答えします。
政策課題の改善には、事後の評価を計画に反映させていく「マネジメントの確立」が不可欠です。 評価を含めた経営情報の構築を進めますとともに、公会計制度の充実を図ることが、行政と区民との建設的な政策論争に繋がるものと考えております。区民の皆様との情報の共有が政策形成、政策経営の基本であると考えまして、ひきつづき行政経営の確立に努力してまいります。
続いて「行財政改革プラン2004」に取組むにあたって、行財政改革を進めていく強力な推進体制と協働をめざす上で今後さらに重要になってくる、区民の声を的確に捉える手法の2点に絞って質問します。まず推進体制について伺います。2004では、身の丈を超えた行政サービスの提供を反省し、「選択と集中」、「民との協働」をテーマに行政のスリム化を図ろうとしております。この取組みを実現するためには、これまで行ってきた施策との違いを明確にし、事業の選択基準、スケジュール化の方針、目標値の設定とフォローアップ体制、設定した目標値に従って正しく業務遂行できているか否かのチェック機能を正しく持つ必要があります。現在、中央省庁では、経済産業省が中心となり、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)というものを推進しております。エンタープライズ・アーキテクチャとは、組織全体の観点で問題点、非効率、高コストな事務を見極め、現状と将来像の対比による業務改善を行う手法として注目を集めております。組織の情報化が密接に絡んでおり、IT技術の活用が成功の要であるとも言われています。政府が導入を進めているEA(エンタープライズ・アーキテクチャフレームワーク)の採用に関しまして、政策と情報システムを一体化させた手段として非常に有効であると考えられますが、区長におかれましては、その採用と必要性につきまして、どうのようにお考えか伺います。
次に、行政改革を進めていく上で、区民の声を的確に捉える手法について伺います。民間企業では顧客ニーズを的確に捉える手法としてここ数年、CRM(カスタマーリレイションシップ マネジメント)という手法が注目を集めております。これは、ホームページやe-メールを有効活用し、集められた情報をコンピュータで分析することで人力では把握困難なニーズを短期間かつ低コストで分析するための手法です。「新生としま改革プラン」におきましても区民を広い意味での顧客として捉えるという方針が出されておりましたが、具体的施策については決定打となるものが登場していないように見受けられます。
すでに、三鷹市、藤沢市などの先進的な自治体では、市のホームページに住民の意見を投票したり、自治体の職員の方とディスカッションを行う仕組みが提供されております。本区でも、パブリックコメントを電子メールで受取る仕組みは用意されておりますが、その情報を有効活用するための取り組みは十分であるとは言えません。
このような戦略的なITの活用により、区民のニーズを的確に理解することは、行政と区民のギャップを少なくし、より満足度の高い地域に育てていくための足がかりになると考えますがITを活用した。顧客ニーズを捉える手法についてのお考えをお聞きし行財政改革関連の質問を終わります。
高野区長答弁
次に、エンタープライズ・アーキテクチャの採用と必要性に関するご質問にお答え申し上げます。
中央省庁では、平成15年7月に「電子政府構築計画」を策定し、「電子政府の総合窓口」を活用したワンストップサービスの拡大や、業務・システムの最適化など、エンタープライズ・アーキテクチャに基づく取り組みが進められております。
こうしたエンタープライズ・アーキテクチャの考え方の導入は、行政の縦割りを改めるとともに、区民の立場に立った各種行政サービスの質と利便性を向上させ、行政コスト自体の削減を図る上で、大変重要かつ有効であると言われております。
したがいまして、まず、国の取り組みについて調査するとともに、導入による効果や必要となるコストなどについて、研究を進めてまいりたいと考えております。
なお、その他の質問につきましては、関係部長から答弁申し上げます。
私に対しての直接の質問もございますが、担当する各部長から答弁申し上げますので、よろしくお願いいたします。
次に、ITを活用した、顧客ニーズを捉える手法に関するご質問に、お答え申し上げます。
豊島区では、区のホームページを試行的に稼動させた、平成11年11月より、Eメールによる、区民の声の募集を行っています。平成11年度には9件、平成12年度には92件の区民の声が、Eメールで寄せられました。その件数は、年を追うごとに急激に増え、平成15年度には、499件となっています。
その一方で、広聴はがきで寄せられた区民の声は、12年度の414件から、15年度の275件に減少しています。 区民の声の内容は、所管部署はもちろん、全職員が、庁内LANを通じて、見ることが可能になっています。代表的な意見と区の回答は、ホームページでも公開するほか、区施設の掲示板にも、表示しています。
また、平成15年度からパブリックコメント制度を実施していますが、これまでに処理を終えた13の案件のうち、12の案件で、Eメールによる意見の提出がありました。そして、8つの案件で、意見を踏まえた、案の修正を行っています。
このように、ITを有効に活用した、区政への意見表示が、区民の間に、急速に広がっていることに対応し、区も、ITを活用した、区民ニーズの的確な把握に、努めています。
一方、民間で開発され、活用されているCRMの手法は、行政の分野においても、住民ニーズを的確に分析、評価し、効果的にサービスの改善につなげられる方策として、有効であると言われています。
しかし、今年度、IT時代にふさわしい、区民ニーズを把握する手法の一つとして、試行的に、インターネット・アンケート調査を、二つのテーマで実施しましたが、回答を寄せてくださった方は、それぞれ約80名程度に、とどまりました。CRMを実施するとしても、どのような手段が効果的であるかは、十分に検討を重ねていく必要があると考えます。
今後は、電子掲示板や電子会議室、コールセンターシステムなど、先進的な自治体が行っている手法なども参考にしながら、区民ニーズを的確に捉える手法について、検討を続けてまいり ます。
本区の防災対策について
次に本区の防災対策について伺います。私は昨年、10/23の新潟県中越地震に際し、第3回定例会が終了した翌日10/28日に中島議員、島村議員と堀之内町に救援のお手伝いに行って参りました。今回の地震では被災地の関係者からの情報として防災対策についての様々な観点が新聞・テレビで報じられていますが私は情報連絡網の確保という点と災害弱者への対応の2点について伺います。まず情報通信手段についてですが、堀之内町関係者によると、地震発生直後は携帯電話もアンテナが被害を受け使用できなくなり、もちろん有線電話は電話線が切れ使用不能となり、町内の被害状況を確認するための手段は、職員と駆けつけた消防団員が自転車やバイクに乗って現地に行って確認されたという事です。やはり情報伝達手段は、あらゆる可能性を考える必要があると思われます。先日お隣の文京区では区内のアマチユア無線・ハムの愛好家と災害時の情報伝達に対する協定を結んだそうです。本区でもアマチユア無線・ハム愛好家との協定を結ぶべきと考えますが区長のご見解を伺います。又、現在本区が導入している防災無線については数年後には法律により周波数帯域の変更を余儀なくされており防災無線計画の抜本変更が必要となっていますが、現実の厳しい財政状況のもとこの周波数変更についてどのように対応されるお考えなのか伺います。私はどうせ変えなければならないのであれば他自治体で導入されているGISを使った「災害情報システム」等のデジタル時代にあった取り組みが必要になると考えますが、区長のご見解を伺います。
第2番目に大災害時の災害弱者に対する救援体制については、災害が発生する度に議論されてきました。元より地域住民のご理解とご協力がなくては話になりません。高齢者や障害者のプライバシー保護という観点も絡むことから非常に難しい面があることも充分承知していますが、新潟県中越地震に関し多くの関係者が災害時の災害弱者の救援体制の確立の重要性を語っておられるところから、本区の検討状況と今後の取り組みについて伺います。2004では今後の地域社会発展のポイントを「区民との協働」と捉えているところから、豊島区の実情にあった区民と「協働」した災害弱者対策に取り組むことは区政と区民の信頼を醸成していく上でも非常に重要と考えます。積極的な取り組みを期待します。
高野区長答弁
防災対策についてのご質問にお答えいたします。 まず、情報連絡網の確保についてお答えいたします。情報通信の手段につきましては、あらゆる状況に対応できるように、防災無線はもとより、携帯電話やインターネットの活用など、様々な方策を講じる必要があります。
ご提案のアマチュア無線・ハム愛好家との協定につきましては、災害時における情報連絡網の手段の一つと考えますが、アマチュア無線は個人単位でありますので、現在の普及状況や防災を前提とした組織づくり、基地局となる区の態勢などの課題もあり、今後、調査・研究してまいります。
また、電波法の改正により、周波数帯が変更されデジタル化される地域防災無線は、区の災害時における情報連絡網の根幹を成す物であり、非常に重要な課題として、積極的に取り組んでまいります。 現在、更新する予定で検討しております「災害情報システム」は、デジタル無線との連携を前提として、GIS(地図情報)や携帯端末による被災現場の映像送信など、最新の技術を盛り込んでございます。なお、現在、本区が誘致を進めております新東京タワーの構想には、デジタル放送とEWSと呼ばれる緊急警報放送システムとの連動により、新東京タワーから携帯電話や家庭のテレビ、車両のカーナビなどに一斉に災害情報を伝達する機能も含まれております。区といたしましては、常にこれらの技術革新を視野に入れながら、より高度な情報通信システムを構築させていきたいと考えております。
次に、大災害時の災害弱者に対する救援体制についてのご質問にお答えいたします。
発災直後における区の重要な責務は、災害情報の収集・伝達と被災者の受け入れ体制の確立であり、救出・救助活動は、主として、東京消防庁・警視庁が実施することとなります。
しかしながら、大災害時における救援活動につきましては、行政の力だけで行うことは限界がありますので、区民との協働が必要とのご指摘は、正にそのとおりと存じます。特に、災害要援護者に限らず、倒壊した建物の下敷きになった方々の救出活動は緊急を要し、近隣住民の助け合いがなければできないのであります。
平常時における区民との協働事業につきましては、高齢者福祉課による「見守りと支えあいネットワーク事業」などを展開しておりますが、大災害時における救援体制につきましては、現行の取り組みが決して充分なものとは認識しておりません。そのため、既に、防災課と保健福祉部において、区民との協働のあり方や区の支援策等について協議を進めておりますが、今後、関係各課によるプロジェクトチームを発足させるなど、前向きに取り組んでまいります。
次にLAN(ローカルエリアネットワーク)の有効活用と行政コストの削減
次にLAN(ローカルエリアネットワーク)の有効活用と行政コストの削減について伺います。本区の情報化も私が初当選した平成7年当時から比べると比較にならないほどIT化が進みました。その典型的な例が数年前から活用されているLANによる、業務のIT化であると思います。しかしながら、ある調査によると、この大容量のネットワークも活用できている割合がネットワークの持つ実力の数十%でしかないとの調査結果がでています。せっかく巨額な費用をかけて導入した設備も、有効に活用できなければ税金の無駄使いといわれてもしかたありません。そこで、私は、LANを有効活用し、且つ行政コストの大幅な削減を可能にする、IP電話導入を提案するものであります。
今までの電話機能はPBXと呼ばれる交換機から電話回線で繋がれて通話を行っております。PBXは1台数百万円で、高いものは数千万円のものもあります。それに繋がる電話機もPBXメーカーと同じものを使用し、メンテナンスも同じメーカーの関連事業者に任さざるをえない現状です。又、それら電話機能の定期的な契約更新はPBXごとに契約時期が複雑にからみあっています。又、毎年の春の人事移動や部署の変更により部屋割り替えがある度に、回線の設置等、移動工事費がかかります。
そこでIP電話を導入すると、既に張り巡らされているLANと1台のパソコンにインストールされた「SIP」というプロトコールソフトを使うことにより、この数百台のPBXそのものと定期的に行われるメンテナンス、回線などの契約更新が今後、一切不要になるというもので、大幅な経費削減に繋がります。本区の場合、約100箇所の区関連施設があり、庁舎と出先機関の回線は殆ど無料となりその経費削減は年を経るごとに膨大になります。
私は、昨年8月IP電話の導入を開始した我孫子市の方々と情報交換をしました。人口約13万の我孫子市では昨年8月、市役所と出張所、図書館、保育園といった関連施設37箇所のIP電話を稼動しました。導入前には毎月200万円にものぼっていた電話料金が約110万円になる見通しということです。まず、市庁舎と関連施設間での通話料金がゼロになります。外部との通話料金もSIPソフトにより最も安い回線を自動選択でき20~30%削減。回線の集約により、基本料金が従来の4分の1に削減できたというものです。今後もPBXの契約更新ごとにIP電話への切り替えを行い経費削減に努めていくとの事です。詳細な財政効果については、平成17年度の決算を待つこととし、16年度の半年で絶大な経費削減が実現できたそうで。又、ある雑誌のインタビューで我孫子市の福島ひろひこ市長は「職員の通話明細を集計したところ市内通話の80%が区役所と市内関連施設同士の通話であることがわかり、まずその経費がゼロになることに着目。同時にPBXの更新コストも削減されると同時にソフトで『IVR』音声応答システムによって、受付業務を一元化することにより、時間外の市民からの問い合わせにも親切に対応でき、業務の効率化を図るだけでなく、市民サービスの向上にも繋がり、効果は抜群である」と言われています。
IP電話が実現できたのも、光ファイバーに代表される大容量・高速回線上でのデーターのやり取りの方式=プロトコールがSIP(セッション イニシエーション プロトコール)に世界標準に統一されつつあるからで、SIPによりどんなメーカーの器機でもデーターの送受信が可能になったためです。数十万円のPCサーバと数百万円のソフトウェアの組み合わせによって、総額数千万円はするPBX200台分の仕事を優にやってのける時代に突入しました。
未曾有の財政危機に陥っている本区では行政コストの削減はなにをおいても取組まなければなりません。IP電話導入についてぜひ積極的な検討を進められたいと考えますが区長のご所見を伺います。
高野区長答弁
次に、LANの有効活用による、行政コストの削減を可能とするIP電話の導入についてお答えいたします。
議員もご指摘のとおり、情報通信技術の進歩はまさに日進月歩であり、区といたしましても、業務のIT化による区民サービスの向上とコスト削減に向け、日々研究に努めなければならないと考えております。
今回ご紹介いただいた我孫子市の事例につきましては、さっそく市役所に問い合わせをさせていただきました。また、板橋区でも平成18年4月からの運用に向けて導入を進めているとの事ですので、あわせて調査をいたしました。その結果、板橋区では年間700万円の経費節減効果を見込んでいるなど、相当の効果が期待できることを確認いたしました。
一方、本区の庁内LANは光無線を使用しているために通信速度が遅く、通話が中断してしまう可能性があることから、有線への変更が必要となります。また、既存の受話器では対応できないため、機種を一斉に交換する必要があるなど、導入に際していくつかの課題がございます。さらに、万一の障害に備えて、機器構成を二重化する必要もあるため、現状では初期投資として、8千万円から9千万円程度が必要と見込まれます。
そうした点を考慮いたしましても、IP電話が将来的に極めて魅力的な選択肢であることは間違いございません。我孫子市や板橋区では、交換機のリース契約の更新時期にあわせて、順次IP電話の導入を進めているとの事ですので、本区におきましても、現在使用している交換機の更新時期にあたる平成21年4月に向けて、機会を逸することのないよう、積極的に検討してまいりたいと存じます。
椎名町駅周辺の街づくり
最後に、地元、椎名町駅周辺の街づくりについて伺います。中央環状新宿線の工事も着実に進行しており、環状6号線の拡幅事業とともに地元住民としては早い完成を心待ちにしているところです。現在、西武池袋線を南北にまたぐ椎名橋の架け替えも少しづつその姿を見せ始めています。そこで何度も一般質問で触れていることですが、新しい椎名橋完成後の橋脚下の広場整備について、十数年から地域住民のご要望によりコミユニテー広場の整備を訴えてまいりました。完成を数年後に控えた現在、この広場整備についてどのようにお考えなのか伺います。又、整備にあたっては地元住民の方のご要望を充分に反映して戴き、新しい区西側地域の名所として戴きたいと考えますがその事についてもご答弁願います。更に、椎名橋は何十年に亘って頑張ってきた盛り土の橋を新しい橋脚に架け替える訳ですが、地元地域の新しいシンボルとして、橋の一部に椎名橋の由来を刻んだりするメモリアル名盤を作るなど、地域住民の記念になるものとし、地元地域に愛される橋、地元地域の誇れるシンボル、名所としていけば街の活性化につながるものと考えますが、区長のお考えをお聞かせ下さい。
以上で私の発言全部を終わります、ご清聴、誠にありがとうございました。
高野区長答弁
まず、椎名橋桁下の広場整備についてのご質問にお答えいたします。
工事中の椎名橋は、桁下空間を有効利用できる構造となっており、約4300平方メートルが広場として活用できます。
これまでの地元要望を受け、駅前広場や自転車駐車場のほか、地元商店街との連続性の確保など、開放感があり、地域性豊かな桁下空間として、整備いたします。
スケジュールとしましては、椎名橋が完成した後に広場工事に入りますので、平成19年度となります。
これまでの地元のご要望につきましては、具体的な施設内容を、これから決定いたします。
引き続き、地元町会・商店街の方々と、精力的に意見交換を行ってまいります。
また、平成16年第2回定例会で採択されております「地下自由通路早期実現に関する請願」につきましても、広場整備と同様に、街づくりの重要課題と捉えておりますので、建設年度は確定しておりませんが、早期実現に向け、西武鉄道はじめ関係機関と積極的に調整してまいります。
次に、椎名橋の名所・シンボルについてのご質問にお答えいたします。
山手通りの拡幅により、新しくなる椎名橋は、長さ156メートル、幅員40メートルと規模が大きいわりに、スチール桁を採用しているため、橋の厚さが薄い構造となります。 また、橋の中腹部に、首都高速道路の「出入りランプ」と「料金所」が設置されますので、景観的にも現状とは大きく様変わりします。 したがいまして、歴史を重ねてきた椎名橋が、今後も末長く、地域の方々に親しまれる橋とするために、「橋の高覧」、「親柱」、「歩道照明」など、椎名橋を強く印象づける施設を、計画的に配置していくことが大切であると考えます。
現在、首都高速道路公団は、地元町会が参加した「山手通り地域意見交換会」を運営しており、この中で、「歩道の植栽」や「舗装の色」など、歩道のデザインを検討しております。 椎名橋を地域のシンボルにしていくことは、街づくりを進めていく上で、重要なテーマと考えますので、この意見交換会の中で、景観計画と併せ、由来板の設置など、地域に誇れる名所となる「具体策」が示されるよう、調整してまいります。
以上をもちまして、木下 広 議員のご質問に対する 答弁を終わります。