2013年第1回定例会 西山陽介一般質問
「新たな10年へ、災害に負けない、人にやさしい豊島区を目指して」
公明党 西山 陽介
2013年2月20日登壇
私は公明党区議団を代表して、「新たな10年へ、災害に負けない、人にやさしい豊島区を目指して」と題し、防災・震災対策について、子育て支援について、心の健康について、教育課題について、その他として区内圏域の考え方について一般質問を行います。
東日本大震災から間もなく2年が経とうとしています。未だに被災地全体で約32万人の方が、福島においては約16万人の方が故郷を離れ避難生活を余儀なくされている、厳しい状況が続いています。自公連立政権として、この復興の遅れを取り戻し、一日も早く被災者の実情に合った、復興を進めるためにも、わが党はこれまで以上に被災者の思いに寄り添いながら、全力で取り組んでまいります。
このような現実の中で、これまでの防災の在り方は70年代の経済成長期と重なり、社会インフラが次々と整備され、強い防災、壊れない社会を目指した防災対策に重点が置かれていたように思います。ところが21世紀に入り、同時多発テロや新型インフルエンザの流行など、それまで想像もしなかったリスクが社会を取り巻いていることが分かってきました。こうなるとすべてのリスクや災害に対して、強いだけの社会を作ることは可能とは言えない時代になったと感じます。
何が何でも壊れない社会ではなく、被害にあっても立ち直る、回復できることが大切であり、この回復力に重点を置いた防災がこれからの災害に負けない視点であると考えます。
〇1項目目として防災・震災対策について質問します。
今回定例会で「防災対策基本条例」について議案提出されています。本条例案について、特徴のひとつとして、「防災対策はセーフコミュニティ活動の一つとして取り組むことを基本理念」とあります。セーフコミュニティ活動は、主体的な行動によって、原因や要因を排除・低減することによって、事故等未然防止を図ることですから、まさしく防災対策の自助・共助の取り組みとして、セーフコミュニティ活動から積み重ねられることと考えられます。この基本理念を掲げたられたことについて、ご所見を伺います。
【高野区長答弁】
ただいまの、西山陽介議員のご質問に対しましてお答え申し上げます。
防災・震災対策についてのご質問のうち、まず、防災対策基本条例が掲げる基本理念についてのご質問にお答えいたします。
切迫する首都直下地震への対策を継続・強化し、区民の生命、身体及び財産を保護するため、今定例会において防災対策基本条例を提案いたしました。
東日本大震災を改めて振り返りますと、日頃から防災訓練等の活動を続けていた自主防災組織が中心となって迅速な避難が行われ、その後の避難所運営も地域の方々で役割分担を行うなど、地域防災力の有効性、必要性が、国や被災自治体でのさまざまな検証報告により明らかとなっています。
このような教訓から、災害への対応力を強化していくためには、地域防災力の向上をこれまで以上に重視した防災対策を講じていくことがきわめて重要であります。
一方、豊島区は、セーフコミュニティの国際認証を契機として、地域協働による安全安心のまちづくりへの機運がますます高まってきています。
今定例会では、豊島区自治の推進に関する基本条例の一部を改正する条例を提案しており、コミュニティを基盤とする活動によって、安全・安心をめざすことを明確にするものであります。また、同時にセーフコミュニティによって安全安心なまちづくりに取り組み、区民の参加と協働を推進するものであります。
これらのことは、地域の防災力向上の面においても、共通の目標として捉えるべきものであります。
これらを踏まえて、防災対策基本条例では、防災対策を地域の絆を広げながら取り組むセーフコミュニティ活動の一つとして位置づけ、自助・共助・公助により、区、区民、事業者が連携して取り組むことを基本理念としたものであります。
豊島区が未来に向かって安全安心なまちを引き継いでいくためにも、この基本理念に基づき、地域の総力が結集できる、防災・震災対策に取り組んでまいります。
災害時弱者対策について質問します。現在内閣府では「避難所における良好な生活環境の確保に関する検討会」が設置されています。この3月をめどに避難所の生活環境を良くしていくための、新たな指針をまとめることになっています。
はじめにアレルギー疾患を持っている方に対する支援についてです。NPO法人アレルギーを考える母の会代表の園部まり子さんは、東日本大震災被災者が「アレルギー疾患が、子どものわがままや親の過保護のように思われ、悲しかった」という言葉に代表され、避難所でもらった食べ物で重篤な食物アレルギー症状を呈したケースもあったと述べています。
まずは日頃から正しい疾患理解に基づく対応が必要であり、アルファー化米とともに「牛乳アレルギー対応ミルク」が必須の備蓄であると訴えております。その他にもぜんそくの方には毛布や布団などのホコリを減らす配慮や、電動ネブライザーの優先使用、アトピー性皮膚炎の方には、入浴やシャワーは治療の一部であることへの理解と対応の重要性が必要と考えられます。
健常者と要援護者と2分するだけではなく、アレルギー疾患は生命にかかわることを考えれば、災害時弱者であり、周りの理解と支援が必要であります。
次に妊産婦や乳児の避難についてです。通常妊産婦は安静が必要ですが、東日本大震災では一般の避難者と一緒に過ごすことを余儀なくされ、強いストレスにさらされたとの声を聞きました。
文京区では区内大学などに専用の避難所を開設し、「妊産婦・乳児救護所」として、助産師を派遣してケアにあたるプロジェクトを進めています。女性の視点からすれば、妊産婦や乳児は災害時要援護者として支援が必要であります。アレルギー疾患の方や、妊産婦・乳児が安心して過ごせる環境の確保と支援の強化が求められます。
【総務部長答弁】
次に、災害時の弱者対策についてのご質問にお答えいたします。
まず、アレルギー疾患の方への支援についてですが、昨年12月に起きた、給食を食べた小学生が、食物アレルギーのショックによって死亡した痛ましい事案は、今も強く記憶に
残っております。まさにアレルギーは命にかかわる問題であり、本区は以前からこうした認識を持って対策を進めてまいりました。救援センターには、アレルゲンとなる25品目を含まない「ひじきご飯」「わかめご飯」「きのこご飯」を備蓄し、乳児向けにアレルギー対応粉ミルク、高齢者向けにおかゆ、食事制限が必要な方向けに低たんぱく米を備蓄しています。毛布は、ぜんそく等に配慮して毛羽立ちにくいものを採用し、ビニールパックして保管中の汚れを防いでいます。
ぜんそくの電動吸入器などは、日ごろ各自が利用しているものをお持ちいただく必要がありますが、学校の新築・改築の際には、電源確保のための非常用発電装置、車いす対応の「誰でもトイレ」、アトピー患者の衛生管理にも役立つシャワー施設を設けるなど、様々な配慮を施しております。今後も、最新の知見に基づいて、アレルギー対策の充実に努めてまいります。
次に、妊産婦及び乳幼児への支援についてのご質問にお答えいたします。
区は、平成23年12月、女性を中心とした「女性の視点による防災・復興対策検討委員会」を設置し、避難所運営のあり方などについて検討してまいりました。その検討成果を踏まえ、改定中の救援センター運営マニュアルでは、更衣室や授乳室など女性への配慮を盛り込んでいます。
救援センターにおいては、和室・多目的室・武道場など、畳・じゅうたん等が敷かれ、プライバシーを確保しやすいスペースに「福祉室」を設け、妊産婦などを優先的に収容することとしています。さらに、区民ひろば・保育園などの補助救援センターを開設し、順次、そちらに移っていただいて、妊産婦の方などが落ち着いて過ごせる空間を確保することとしています。
このように、妊産婦等への対応は一定程度進んできているところですが、文京区の母子救護所は、女性だけの空間で妊産婦や乳幼児を収容し、医師や助産師が相談室を設けるもので、新たな試みとして注目しております。今後、詳細に調査研究し、地域防災計画の見直しに際して参考にさせていただきます。
【総務部長答弁】
次に、妊産婦及び乳幼児への支援についてのご質問にお答えいたします。
区は、平成23年12月、女性を中心とした「女性の視点による防災・復興対策検討委員会」を設置し、避難所運営のあり方などについて検討してまいりました。その検討成果を踏まえ、改定中の救援センター運営マニュアルでは、更衣室や授乳室など女性への配慮を盛り込んでいます。
救援センターにおいては、和室・多目的室・武道場など、畳・じゅうたん等が敷かれ、プライバシーを確保しやすいスペースに「福祉室」を設け、妊産婦などを優先的に収容することとしています。さらに、区民ひろば・保育園などの補助救援センターを開設し、順次、そちらに移っていただいて、妊産婦の方などが落ち着いて過ごせる空間を確保することとしています。
このように、妊産婦等への対応は一定程度進んできているところですが、文京区の母子救護所は、女性だけの空間で妊産婦や乳幼児を収容し、医師や助産師が相談室を設けるもので、新たな試みとして注目しております。今後、詳細に調査研究し、地域防災計画の見直しに際して参考にさせていただきます。
次に難病患者への支援についてです。難病対策は東京都事業のため、基本的に区への情報が入りません。しかし災害時には、例えば身体障害者手帳を取得していなくても、自力避難が難しいことは容易に想定できます。また特定の薬の確保や受け入れ病院を特に早急に探す体制の構築が求められます。
難病患者の方に対して、要援護者としての支援とともに東京都との情報共有をどう図るのか、検討を急ぐべきと考えます。
区が定めている要援護者対象以外にも災害時では弱い対場となる方の支援について、具体的な対策が望まれますが、ご見解を伺います。
【総務部長答弁】
次に、難病患者への支援についてのご質問にお答えいたします。
地域防災計画では、災害時要援護者を広義にとらえ、要援護者名簿の対象外である、妊産婦や難病患者などへの支援についても想定しているところです。
現状では、難病患者の個人情報は東京都の管理下にありますが、昨年、東日本大震災を受けて、人工呼吸器を在宅で使用している方の情報が区にも提供されました。こうした事例を増やし、さらに支援が必要な難病患者の情報把握が進むよう、都と協議してまいります。
なお、難病をはじめとする要援護者の方々には様々な病態があり、必要な支援・配慮も多様です。そのため、来年度、保健福祉審議会に災害時要援護者の範囲・支援内容などについて諮問し、専門的なお立場からアドバイスをいただくことを予定しております。その答申に沿って、難病患者などの支援策の充実について具体的に検討してまいります。
また、人工透析が必要な方などには、災害時、いち早く医療を確保しなければなりません。こうした問題は、区単独では解決困難ですが、昨年12月、本区のほか板橋区、練馬区、北区を含む区西北部二次保健医療圏において「地域防災医療連携会議」が発足し、広域的な医療連携について検討が始まりました。こうした機会を活かして、区としても災害時医療の充実強化を推進してまいります。
いずれにいたしましても、災害弱者対策につきましては、区民の皆様への周知が重要であることから、改定中の「救援センター運営マニュアル」に、アレルギー疾患、妊産婦、難病患者などへの配慮について記載いたします。防災訓練の際にマニュアルを使って理解を広め、行政だけではカバーできない避難所運営の具体的な場面で、必要な配慮がなされるよう、周知を図ってまいります。
要援護者対策のうち、援護活動への支援について伺います。避難支援個別計画の充実も喫緊の課題ですが、その中で地域コミュニティの方が援護者になることを考えた場合、高齢者や障がい者への支援を行おうにも、どのようにすればよいのか、援護者のための知識の習得や訓練に不安があります。
社会貢献事業財団では「防災介助士」資格制度を創設しています。防災介助士とは、必要な知識と実技教習を習得し、要援護者や被災者への応急対応ができることに特徴があります。要援護者対策の充実とともに、援護者たる方々に向け、必要な知識・対応方法を広めておくべきと考えますが、ご見解をお聞かせください。
【高野区長答弁】
次に、援護活動者への支援についてのご質問にお答えいたします。
災害時要援護者対策については、防災対策基本条例に新たな仕組みを盛り込み、これまでの「手挙げ名簿方式」から、対象者が拒否の意思表示がない限り名簿に登録する「地域共有方式」による取組みへと発展させてまいります。
これにより、要援護者のほぼすべてを把握することが可能となり、名簿登録者数は、現在のおよそ600名から9000名へと飛躍的に増加するものと想定されます。
これに伴い、実効性ある災害時要援護者対策を進めるためには、条例に基づく新たな地域共有名簿を効果的に活用できる地域の体制づくりや担い手育成への区の支援がきわめて重要であると考えています。
ご指摘の「防災介助士」は、防災・見守り活動を担う人づくりという観点から大いに参考となる制度であり、例えば、区民ひろばにおいて防災介助をテーマとした講座を企画・実施し、災害時の援護に必要な知識や対応方法について普及啓発を図っていくことなども有効な方法の一つと考えられます。
今後、援護活動を担う関係者と協議を進めるための場として「(仮称)災害時要援護者見守り連絡会」を立ち上げ、地域防災組織のあり方とともに、地域共有名簿の活用による支援体制づくりに取り組んでまいりますので、あわせて、援護者となる方々への支援策について検討してまいります。
私は昨年9月、明治大学公共政策大学院 ガバナンス研究科のシンポジウムを聴講してまいりました。パネリストとして参加していた奥山恵美子仙台市長の講演は被災自治体市長として、生々しい大震災時の状況を述べられておりました。表題は「地域防災計画は、なぜ役に立たなかったか」であります。役に立たなかったとは、「何が一番困ったか」と置き換えることができます。
第一声は「公助がメインで書かれている。自助・共助への踏み込み不足」だと。「家庭内備蓄3日分が周知されていない、企業の自助計画が無いなど備蓄に対する多重化が必要」と。また「いわゆる若い人たちは備蓄など何もしていない。その結果、避難所に食料等を求めてくる若者が殺到し、地域の町会長が「お前たちの来るところじゃない」と一喝した後、よく話を聞いてみると、全部自分の町会内の住民だった」と、これが大震災の現実なんだと、市長は述懐しておりました。
今年6月には地域防災計画の改定が予定されています。防災対策に女性の視点やニーズが反映されるよう、検討委員会が8回行われ、区地域防災計画や救援センター開設マニュアルに活用されると聞いております。地域の皆様による検討委員会に対し、改めて敬意を表する次第です。災害は現場、災害対策は実務であり、本区のあらゆる知見を集積して対策に備えるべきであります。この地域防災計画改定に向けて、本区の防災会議の体制と震災対策への決意を伺います。
【高野区長答弁】
次に、地域防災計画の改定に向けた防災会議の体制と震災対策への決意についてのご質問にお答えします。
東日本大震災は、あらゆる分野での防災対策の見直について課題を提起しました。
とりわけ、避難所運営等への女性の配慮など防災対策への女性の視点の導入については、阪神淡路大震災において指摘されていたにもかかわらず、今回の東日本大震災ではその教訓が十分生かされていなかったことが指摘されています。
地域防災計画の改定にあたっては、女性や多様な生活者の視点を取り入れ、防災対策に反映させていくことがきわめて重要であります。
これまで、防災会議の委員は、災害対策基本法の規定により防災関係機関の充て職として構成されていることもあり、47名の委員のうち、女性はわずか3名で、かねてよりその拡充が望まれていました。
こうしたなかで、昨年6月の災害対策基本法の改正により、防災会議への多様な参加が可能となり、地域防災組織を構成する町会、自治会や障害者関係団体など、幅広い意見を反映させることができる体制の充実を図るとともに、委員総数に占める女性の比率を高めるため、今回の定例会において防災会議条例の改正を提案いたしております。
現在、地域防災計画の修正については、昨年11月の東京都地域防災計画の修正の反映とともに、本年1月の女性の視点による防災・復興対策検討委員会報告の提言を積極的に取り入れるべく作業を進めています。
今後は、新たな防災会議において、多様な視点からのご意見をいただきながら、地域防災計画の充実・強化を図ってまいります。
いずれにしましても、切迫する首都直下地震からの被害を最小限に食い止め、被災後の区民生活や都市の復興を円滑に進めていくためには、地域防災計画を不断に見直し、これを着実に実行していかなければなりません。
防災会議の体制の拡充とともに、さまざまな立場からの意見を踏まえ、さらに、区民、事業者の皆さまとの連携を強めながら、実情に即した計画の具体化が図られるよう、全力を挙げて防災・震災対策に取り組んでまいります。
次の10年を見据えたとき、防災危機管理においては、行政中心から行政と区民、そして事業所と一体の防災体制へとかじ取りが必要であります。これまでも区は備蓄品や資器材の整備から災害情報の発信、防災訓練や避難支援までほとんどを行政が担う計画であります。ところが現実の災害は、たとえすべてのインフラや行政機能が停止したとしても、発災後3日間は区民だけの“自助と共助”だけで持ちこたえられる地域力が向上しなければなりません。
海外メディアで「災害時にも秩序だって行動できる日本人」と取り上げられた反面、公的依存、他者依存に傾きがちな側面も否めません。自己責任というと、何か非情な言葉にも聞こえますが、我々住民も、また事業者も自分の命と生活は自分で守る、これは自己投資であり自分の安全・安心に対し、投資をするものではないでしょうか。
東京都帰宅困難者条例では、事業者に3日分の備蓄物資保有を促します。また本区防災対策基本条例案でも従業者に対して、同様の物資確保を規定しています。今後は区民も事業所も自助の責任と役割をより明確にするために、(仮称)防災備蓄推進条例を検討されるよう提案しますが、お考えをお聞かせください。
【高野区長答弁】
次に、(仮称)防災備蓄推進条例の制定についてのご質問にお答えします。
災害対策においては、行政は大きな責任がありますが、一方で、行政による対応には限界があり、大規模な災害による被害を軽減するためには、日頃からの自助、共助による備えをいかに取り組んで行くかが重要であります。
とりわけ、発災直後の命を守るために必要な物資の備蓄については、区民や事業者が自ら備えていくことがきわめて重要であり、区はこれを促進していく必要があります。
この観点から、防災対策基本条例では、区民、事業者の自助、共助を明らかにし、備蓄物資については、区民は飲料水及び食糧を確保することとし、また、事業者は従業者の3日分の飲料水、食糧等及び帰宅困難者のための必要な物資の確保に努めることと規定しています。
さらに、マンションについても、大震災によるエレベーターの停止等に備えることが必要であることから、この条例では、マンションの防災対策として、居住者や管理組合が物資の備蓄に努める規定を設けています。
このように、防災対策基本条例のなかで、災害時に必要な物資の備蓄を含めて、防災対策の基本事項を規定しておりますので、ご指摘の「防災備蓄推進条例」については、まずこれらの取組を進め、その状況を見極めたうえで、必要性について検討してまいります。
災害情報システムの整備について質問します。先月、防災・震災対策調査特別委員会において、新潟県長岡市の災害情報システムについて、柏崎市では被災者支援システムなどについて視察してまいりました。
災害情報システムでの主な特徴は、個別情報を大型ディスプレイで活用するなど、総合的かつ同時閲覧が可能に、またこれまでの数値情報が、リアルタイムの現地映像が活用され、多様化した災害情報の整理能力が高まり、迅速対応につながったものでした。
目に見える映像による情報収集は、極めて重要と考えます。長岡市では、市設置のほか、県や国,また民間が設置したカメラを駆使できるようにしています。
本区では高所カメラの設置導入について長年検討されていますが、この映像によるリアルタイム情報収集をどのように果たされていかれるのか、お考えをお示しください。
【高野区長答弁】
次に、映像によるリアルタイム情報収集についてのご質問にお答えいたします。
区は、映像情報の重要性に着目し、これまで帰宅困難者訓練においてテレビ会議システムやタブレット端末を試験的に活用し、映像による情報収集の訓練を行ってまいりました。
また、先日、私も長岡市の災害情報システムを視察してまいりましたが、大型ディスプレイにライブ映像が表示され、庁舎内の本部室に居ながらにして、現場の状況が手に取るようにわかるシステムであり、改めて映像の重要性を実感いたしました。
こうした経過を踏まえ、現在、情報収集を災害情報システムの重要な機能と位置づけて概要設計を進めておりますが、長岡市と同様にライブ映像の活用を想定しています。まだ、素案段階ですが、駅前や主要な交差点、救援センターなど、なるべく多くの地点に定点カメラ・高所カメラを設置し、遠隔操作してライブ映像を視聴できるようにいたします。さらに、区内各地に派遣する職員にモバイル端末を持たせ、現場の写真・ライブ映像などを送信させる情報収集も組み合わせます。定点カメラと機動的なモバイル端末を組み合わせ、迅速・効果的な災害情報収集を実現いたします。
大災害発生後は、被災者に対する罹災証明発行を基にして、生活再建支援が待ったなしです。本区の目指すべき災害情報システムの全体像についてお聞かせください。
【高野区長答弁】
次に、災害情報システムの全体像についてのご質問にお答えいたします。
本区は、今年度、柏崎市の被災者生活再建支援システムをバージョンアップした「り災証明書発行システム」を導入し、総務省消防庁の実証実験によって「防災情報伝達制御システム」を構築しております。こうした、既存のシステムをうまく生かしながら、災害時の司令塔となる新庁舎の完成に向けて、総合的な災害情報システムを整備してまいります。
本区にとって最大の脅威である首都直下地震に備え、平常時の管理業務から応急対策業務、復旧・復興対策業務まで幅広く対応し、区民の皆様の生命、身体、財産を守るために役立つシステムを整備いたします。
システム構成のイメージですが、第1に、ライブ映像等によるリアルタイムの情報収集。第2に、GIS(電子地図)を活用した被害情報のわかりやすい表示。第3に、ICTによる被害情報・避難者情報等の自動集計。第4に、多様な手段の一括制御による確実な情報伝達。第5に、漏れのない被災者生活再建支援。第6に、平常時の備蓄物資等の管理、訓練支援機能などで、区市町村レベルでは全国的にも類を見ない、最先端の総合的なシステムであります。
また、財政負担を抑えるため、国の支援制度を活用するほか、パッケージソフトを積極的に採用し、最小のコストで、将来的な更新も比較的容易にできる柔軟なシステムを構築します。
3.11では家族をはじめ、連絡手段がとれず安否確認ができないことによる不安や混乱が大きな課題として現在でも残されたままです。公衆電話の有効性や携帯電話は通話よりメールの方がつながりやすいことが分かってきました。
災害時の安否確認や連絡手段は「持ち運びができて、インターネットに接続でき、ある程度バッテリーが持つ機器であること」が筆頭に挙げられます。帰宅困難になったとき、家族などの安否確認ができないと、一斉帰宅の抑制にはつながらない懸念があります。そのためにも救援センターや幼稚園、保育所など区施設での無線環境(Wi-Fi)スポットを整備することにより、通信手段の確保につなげることが有効と考えますが、この点いかがでしょうか。
【高野区長答弁】
次に、Wi-Fi(ワイ・ファイ)スポットの整備による通信手段の確保についてのご質問にお答えいたします。
本区は、行政情報化推進本部のもとで、計画的にICTの推進を図ってきておりますが、平成23年秋以降、ソフトバンクテレコム社の協力により、本庁舎をはじめ救援センターとなる小中学校や幼稚園・保育園・区民ひろばなど157施設に公衆無線用のWi-Fi(ワイ・ファイ)スポットの設置を進めており、現在189台が設置されています。従いまして、ソフトバンク社の通信を利用したモバイル機器については、通信環境の整備を終えている状態です。他のキャリアの通信機器への対応が課題ですが、順次協力を呼び掛けて対応可能な機種を増やしてまいります。
実践的な震災訓練について伺います。災害対応は訓練以上のことはできないと言いますし、実際に訓練の通りに行くとも限りません。区は地域防災組織とその対応を強化する方向であるならば、例えば情報ひとつとっても、どの情報が重要で優先すべきかを仕分ける能力など、防災危機管理対応力が区職員と地域におけるリーダーの皆様に求められると思います。そこで大規模地震の発生日時だけを決めておいて、あとは伏せておくブラインド型の演習が参考になります。
またアメリカで普及した市民参加型の一斉震災訓練「シェイクアウト」が日本で広がりつつあります。日本の学校の防災訓練が参考にされ、アメリカからの逆輸入された形ですが、昨年北海道で11万人が参加。大阪府や千葉市、愛知県蒲郡市も計画しました。
シェイクアウトとは「地震を吹き飛ばせ」という意味の造語で、一般公募の参加者が指定された日時に一斉に同じ動作をすることです。職場や家庭など居合わせた場所で、「身を伏せ」「頭を守り」「揺れが収まるまで動かない」という単純な安全行動をとるのが唯一の決まりです。
23区では昨年千代田区が初めて実施し、2万5000人を超える参加がありました。実施後のアンケートでは、効果も上々で、防災意識の啓発が図れるとのことであります。前述したブラインド型訓練や、区民に限らずシェイクアウト訓練など今後の本区の震災訓練について、ご所見をお聞かせください。
【高野区長答弁】
次に、今後の震災訓練についてのご質問にお答えいたします。
区としても、シナリオ通りに実施する防災訓練ばかりでは、危機管理対応力が向上しない懸念があると考えております。そこで、昨年、初めて実施した全職場訓練では、BCPマニュアルに基づいて、各職場が訓練メニューを作成・実施し、その内容を災害対策本部に報告する方式を採りました。
また、昨年11月の千登世橋中学校での防災体験授業ではシェイクアウト訓練を導入し、同月、池袋駅で実施した帰宅困難者対策訓練では、帰宅困難者役の方々には行き先となる一時滞在施設を伏せておき、各自で情報を入手し、自力で施設にたどり着いていただく形にいたしました。このように、これまでも、訓練内容や手法の工夫を重ねてまいりましたが、今後もたゆみなく、内容の充実に努め、区全体として、災害時における危機管理対応能力の向上を図ってまいります。
エレベーター対策について伺います。3.11の翌日、私は担当地域内の被害掌握の際、ある3階建てマンションで、エレベーターの閉じ込めにあいました。指定したフロアーで停止しても扉が開かない。他のフロアーへは動き出したので、脱出できましたが、一瞬動揺が走りました。原因を調査したところ、オーナーによる保守点検がほとんどされていない状況で、3.11の揺れで故障が発生したものでした。
区施設及び区が関係する諸施設も含めて、地震時におけるエレベーター閉じ込め対策は万全を期すべきと考えますが、ご見解を求めます。
【高野区長答弁】
次に、地震時のエレベーター閉じ込め対策についてのご質問にお答えいたします。
まず、区の施設に設置されている乗用エレベーターは、全部で73基あり、全てのエレベーターに地震時の管制運転 装置を取り付けています。また、年一回の法定点検を行うことはもちろん、複数回の点検調整も行っています。
区が関係する諸施設につきましては、一例として住宅課 所管の借上げ住宅があります。エレベーターは区民住宅に 17基、借上げ型の福祉住宅に7基、安心住まい住宅に6基が設置されています。
このうち、区民住宅及び借上げ型福祉住宅については、 建物単位で借り上げていることから、区有施設と同等の 管理を行っています。
また、安心住まい住宅については、居室部分のみの借上げになっていることから、エレベーターの保守・点検は、建物の所有者が実施しています。
一方、区内には約4,500基のエレベーターがありますが、そのうち不特定多数が利用するエレベーター約1,100基の 所有者や管理者に対して、建築審査課より閉じ込め対策の 状況の報告と改修を講じて頂くよう今月郵送にてお願いしたところです。
今後ともエレベーターの適正な管理に向けて、指導・助言を継続し閉じ込め防止対策を推進してまいります。
昨年5月より池袋本町地区震災復興まちづくり訓練が行われました。訓練前ガイダンスでは総勢80名の参加者となり、その後4回の訓練を重ね、12月に地域報告会により終了したものです。
私も地域の一員として、まち歩きや図上訓練に参画させていただき、大変に参考となりました。参加者にとっても大いに経験となって、「自分たちのまちは自分たちでつくる」意識の醸成につながったものと思われます。
今定例会では、震災復興の推進に関する条例案が出されておりますが、震災復興への地域協働の取り組みは、今後も事前復興への取り組みを継続することが肝要と考えますが、今回の成果と課題、今後の方向性についてお示しください。
【高野区長答弁】
次に、震災復興まちづくり訓練の成果と課題、今後の方向性についてのご質問にお答えいたします。
「震災復興まちづくり訓練」は、震災直後を想定した通常の防災訓練とは異なり、震災後のまちや暮らしをどのように「復興」していくか、地域の皆さんと行政、専門家がともに考える参加型の新しい防災訓練です。
これまで上池袋地区、今年度は池袋本町地区において実施し、大勢の地域の皆さんにご参加いただき、熱のこもった議論がなされました。成果報告会では、災害が起こる前に準備しておくことが沢山あり、準備しておけば災害に立ち向かえる、といった意見など、事前復興の重要性が認識され、有意義な訓練となりました。
これからも、事前復興の考え方をより多くの方に知っていただき、多様な年代の方にもご参加いただけるよう、実施時期等を再検討し、今回の訓練を分析しながら更なる改善を図ってまいります。
25年度以降も、雑司が谷地区などの密集地域を中心として、順次、地域を拡大してまいりますが、このたびの定例会に提出しております「防災対策基本条例」、「震災復興の推進に関する条例」の基本的な理念に基づき、震災に負けない豊島区を築いてまいります。
〇2項目目として、子育て支援について質問します。
人口減少・少子高齢社会における総合的な子育て支援と待機児童問題についてお尋ねいたします。
昨今、晩婚化や非婚化の進展による出生数の減少など、我が国は人口減少社会に突入しました。その背景には不況による非正規雇用の増加やそれに伴う教育費の負担に対する不安や、仕事と子育てを両立するための環境整備の遅れがあることが、これまで指摘をされ続けています。
一方、国際通貨基金のリポートによれば、我が国の女性就業率が7割になれば、国内総生産は4~5%押し上げられるとの指摘もあります。すなわち、国の支え手である若い世代を総合的に支援するために、雇用政策の強化はもちろん、子どもを安心して産み育てられる社会環境を一刻も早く構築していかなければならないと考えます。
本区においては昨年12月時点で、保育所待機児童数289名を数え、来年度部局予算編成方針の重点事業施策の1番目に待機児童対策事業経費を位置づけておりますが、このことが仕事と子育てを両立するための環境整備に、どのように生かされるのかお示しください。
【子ども家庭部長答弁】
子育て支援についてのご質問のうち、まず、待機児童対策事業についてのご質問にお答えいたします。
女性の就労機会を増やし、社会参加をさらに進めるとともに、仕事と子育てを両立させるためには、保育定数を拡大し待機児対策を推進するなど保育環境の整備が大変重要であります。
本区においても、保育環境を充実させることが、仕事と子育ての両立に寄与し子育て支援に繋がると考えているため、待機児童対策を平成25年度の子ども家庭部の最重要施策と位置付けております。
今後は、昨年8月に子ども・子育て関連3法が成立し今まで以上に自治体の裁量で子育て支援施策を実施しやすい状況となります。
こうした方策も十分に活かし、待機児童対策を含めニーズに合った子育て支援策を実施し、豊島区で安心して子どもを育てていきたいと思えるような仕事と両立できるまちづくりを進めていくことが、大変重要であると認識しております。
次に国の対策を受けての本区の今後の取組みについてお尋ねいたします。昨年の国会において、子ども・子育て関連3法が成立し、子育て支援に対して1兆円を超す増額予算を計上することが決まりました。
制度は大きく分けて幼稚園、保育所に対する「施設型給付」と小規模保育事業や事業所内保育、また保育ママ事業に対する「地域型保育給付」を行うこととなりますが、これ以外にも保育士の待遇改善や保育経験者の復職支援、また病児・病後児保育の拡充や放課後児童クラブへの助成など多角的な支援策が盛り込まれております。
この財源を具体的に活用して地域で子育て支援策を実施するのは区市町村であります。関連3法に基づく支援策の本格実施は2015年ですが、それまでに自治体が準備すべき事項は山ほどあります。ライフスタイルの変化に伴い、子育て支援に関するニーズも多様化し、同時に多様な働き方を支える環境整備が強く求められる中、国のこの支援策をどのように生かしていこうとされているのか、お考えについてお聞かせ願います。
【子ども家庭部長答弁】
次に、国の子育て支援策の活用についてのご質問にお答えいたします。
ご指摘のとおり、子ども・子育て関連3法は、子育て支援に関するニーズの多様化に対応するため、これまでの子育て支援策を、「施設型給付」と「地域型保育給付」とに再構築するなどとともに、子育て支援体制の強化、充実を図ろうとするものであります。
法律の内容と施行に向けたスケジュールの概要については、国から通知があり、より詳細な制度設計を行うため、国の説明会、国と全国知事会との意見交換会、国と区市町村との懇談会などが開催され、新制度における支援策の具体化に向けた協議が進みつつあります。
本区では、子ども・子育て新制度に対応する支援策を総合的に検討するため、平成25年度予算案に、子育て支援のニーズ調査や子ども・子育て会議設置の経費を盛り込むとともに、庁内に検討会議を設置いたしました。今後、国や東京都の動向も見極めながら、具体的な支援策作りを進めていくところですが、いずれにいたしましても、国の支援策を最大限に活用して、多様化する区民の子育て支援ニーズに応えられるよう、積極的に取り組んでまいります。
また、この新たな支援策を実施するに当たり、各自治体においては「子ども・子育て支援事業計画」の作成が求められており、この計画立案のため、保育、子育て関係の事業者や利用者など現場の声を反映させる仕組みとして「地方版子ども・子育て会議」の設置が努力義務として定められております。この取組み方針・内容についてお聞かせ願います。
【子ども家庭部長答弁】
次に、子ども・子育て会議についてのご質問にお答えいたします。
子ども・子育て関連3法は平成27年度からの施行が予定されておりますが、ご指摘のとおり、この法律による支援策は、実施主体である区市町村が新たに策定する「子ども・子育て支援事業計画」に基づいて実施することとされています。
この計画策定にあたっての、「子ども・子育て会議」の設置は努力義務にとどまっておりますが、本区といたしましては、子育て事業関係者や利用者などの意見を反映し、実効性のある計画を策定するためには、「子ども・子育て会議」が必要であると考えており、「子ども・子育て会議設置条例案」を本年第二回定例会に提案できるよう、準備を進めてまいります。
次に東京都の対策を受けての取組みについてお尋ねします。子どもを産み育てるという観点から、最初に求められるのは、やはり保育施設の整備であります。しかしながら、立地や財政的な要因により保育所の増設は容易なことではありません。
この度、都の来年度予算の新規事業において、小規模保育整備促進支援事業、いわゆる「東京スマート保育」が国に先行して実施されることとなりました。定員数6人から19人の小規模施設を開設する場合、準備経費、賃料補助、また国の支援が開始されるまでの2年間にわたり、児童の年齢に応じた運営費も助成されます。認可・認証保育所と異なり、財政負担も少なく、ニーズ減少後の廃止についても容易であり、待機児童対策に苦慮している本区としては積極的にこの事業を活用すべきと考えますが、お考えをお聞かせください。
小規模保育整備について一例を上げさせていただければ、本年3月に廃止される巣鴨豊寿園はマンションの1階で、面積327㎡ほどあります。こうした場所も含めて小規模保育施設を検討すべきと考えますが、ご見解を伺います。
【子ども家庭部長答弁】
次に、小規模保育整備促進支援事業についてのご質問にお答えいたします。
小規模保育整備促進支援事業は、東京都が平成25年度から実施する予定で、小規模保育施設の整備を行う区市町村を支援する新規の補助事業です。この補助事業では、開設準備にかかる経費への補助額が大きいため、空き家、空き店舗、空き公共施設などを有効活用した小規模保育施設の整備を行う際に大変有利であり、改修費や賃借料の補助を受けることが可能となります。
今年度中に東京都から、具体的な補助要綱が示される予定ですので、待機児童解消の対策の一つとして、この事業を活用した小規模保育施設の整備を積極的に検討してまいります。
なお、具体的な小規模保育施設の整備個所につきましては、待機児童数が多いエリアや保育計画の進捗状況などを踏まえて、判断していきたいと考えています。
また、区内にはこれまで認可基準に満たず、公的支援を受けられなかった保育施設も存在しております。これらの施設が、補助対象となった場合、事業拡大も可能であり、さらに保育機能の拡充が見込まれます。このことは本区における待機児童解消に大きな効果をもたらすと考えますが、こうした施設への支援についても今後の取組み方針をお聞かせください。
【子ども家庭部長答弁】
次に、公的支援を受けられなかった保育施設への支援についてのご質問にお答えいたします。
子ども・子育て支援の新制度では、待機児童の解消や小規模保育を支援するために、新たに地域型保育給付の創設を予定しています。これにより、新制度が開始される平成27年度からは、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育などの保育事業について、区の認可事業とすることで、新たな財政支援の対象に加わるとともに、利用者の選択の幅が拡大いたします。
認可に際しては、新たに客観的な認可基準が必要となりますが、保育の質の確保及び本区の既存の保育施設の状況、待機児童の動向等を踏まえ、設定してまいります。
こうした地域型保育給付の創設により、今まで公的支援が受けられなかった保育施設についても、一定の基準を満たしていれば、地域型保育給付の対象となりますので、今後の待機児童解消の対策の一つとして、大いに活用してまいりたいと考えています。
〇3項目目の心の健康について質問します。
精神的なエネルギーが低下し、気分が沈みこんだり、物事に興味をもったり楽しんだりすることができなくなる「うつ病」や、行き過ぎた不安を感じるようになる「不安障害」は、現代のストレス社会においてより身近な問題になりました。
本区では、2011年1月に「自殺・うつ病予防対策委員会」が設置され、セーフコミュニティの柱の一つとして取り組んでおります。地域活動団体や各行政機関が委員となり、現状分析や取り組みについて、活発な意見が出されてきた模様が議事録から読み取れます。
しかしながら、画期的なこの委員会も、セーフコミュニティ認証後の活動については明確に示されておりません。まだまだ議論の中で問題提起もされておりますし、5年後の再認証に向け今後の取り組みについて伺います。
【池袋保健所長答弁】
心の健康についてのご質問のうち、まず「自殺・うつ病予防対策委員会」についてのご質問にお答えいたします。
当委員会は平成23年1月に設置以来、昨年の11月までに8回開催し、豊島区の自殺やうつ病を少しでも減らしていくことを目指して、情報共有や対策の検討を行っております。5年後のセーフコミュニティ再認証も一つの目標として、社会的な自殺・うつ対策の推進と普及啓発を図るよう、今後も委員会の活動を継続し充実してまいりたいと考えています。
また、自殺に追い詰められた状態になる前に問題の連鎖を防ぐため、「豊島区窓口職員向け自殺予防対応マニュアル」を作成されました。このマニュアルの今後の活用と区内にある関係諸機関との連携について伺います。
【池袋保健所長答弁】
次に、窓口職員向け自殺予防マニュアルの活用と関係諸機関との連携についてのご質問にお答えいたします。本マニュアルは、区役所の窓口職員が、様々な問題を抱えて追いつめられているような区民に気づいて、その問題に対応する相談窓口や関係機関につなぐことを目指して、前述の対策委員会の取り組みの一つとして作成しました。既に各関係部署へ配布するとともに、2月には職員対象の研修を行い、35名が受講しており、今後、より多くの職員が受講できるよう研修を継続してまいります。また、対策委員会の各委員にもマニュアルを配布し、1月には区内薬局を対象に行ったゲートキーパー研修で本マニュアルを紹介しています。これまでも関係諸機関との連携を様々な場面で図ってまいりましたが、マニュアルを活用したさらなる連携強化について、今後、対策委員会において検討していきたいと考えています。
今月私ども公明党区議団は「NPO法人きぼうのにじ」の中村博保理事長を講師に迎え、「うつ病とこころのケア」について勉強会を開催しました。担当理事者の方々にもご出席頂き、また関心のある多くの区民も聴講されました。
現在では15人に1人がうつ病になると言われ、啓発の上からもより多くの区民に、うつ病や自殺予防について正しい認識を深めて頂く事が重要であると考えますが、今後の取り組みについて伺います。
【池袋保健所長答弁】
次に、うつ病予防と自殺予防に関する啓発についてのご質問にお答えいたします。区ではこれまで、うつ病や自殺予防について、ホームページや自殺対策強化月間における広報特集記事での啓発、メンタルヘルスに関する講演会やゲートキーパー養成講座、こころまつりでの啓発コーナー設置、若年健診対象者へのメンタルヘルスに関する資料送付等を行ってまいりました。昨年の3月には、区内コンビニエンスストア等でのポスター掲示やメッセージカードの配布を行い、今年の3月には、アニメイト池袋本店や「ものづくりメッセ」での啓発グッズの配布を予定しております。今後も、保健福祉分野に限らず、特に若者や働き盛りの年代の方への啓発について、大学やNPO等との連携も含めた取り組みを進めてまいりたいと考えております。
頑張る人ほど相談もできず、うつ病が深刻化する例も多くあると言われております。そうした中で、うつ病の早期発見を促す「こころの体温計」というものがあります。ストレス度・落ち込み度をQRコードにより携帯電話やパソコンで、いつでも何処でもセルフチェックできるシステムであります。相談が必要な場合を考慮して連絡先等も表示されています。
本人や家族、また赤ちゃんママモード用があり、東海大学医学部付属八王子病院でおこなわれているメンタルチェックをシステム化したものであります。また区内にどのくらいハイリスクの方がいるのかを把握する事も可能で、セーフコミュニティ活動のデータ収集にも活用できると考えられます。
導入した世田谷区では30代40代男性が、ケア対象・うつ傾向が一番多い事がわかり、このデータをもとに30代から40代の男性に絞り込んだセミナーやゲートキーパー研修等を行っているとの事です。
これまで一般質問など導入の提案をしましたが、ホームページ上に同様のチェックシートがあるとの答弁でありました。しかしながら、ホームページ上で特に精神保健関係を訪れる方は決して多くなく、広報紙や行政発行のチラシにQRコードを印刷して配布する等、こころのケア支援として一歩踏み込んだ施策が必要ではないでしょうか。
セーフコミュニティ認証都市厚木市は、2010年に「こころの体温計」を導入し、「こころ、元気ですか?」とのチラシにQRコードと相談窓口一覧を掲載し、全戸配布をしました。
都内では既に江東区、大田区、江戸川区、品川区、世田谷区等が導入しています。初期導入費用は20万円程、管理費は1か月約2万円であります。しかもこの事業は国の地域自殺対策緊急強化基金を活用できる事業であります。ぜひ本区での導入を再度提案いたしますが、お考えを伺います。
【池袋保健所長答弁】
次に、「こころの体温計」事業の導入についてのご質問にお答えいたします。先ほど申し上げた通り、区では様々な啓発を行っており、その一つとしてホームページに自分や家族の心の状態をチェックできるページを設けています。また、昨年作成配布した若者向けのメッセージカードには区のホームページアドレスと共に携帯用ホームページのQRコードも掲載する等の工夫をしています。ご提案のこころの体温計については、インターネットや携帯電話の利用頻度の高い世代に対する啓発手段として有用であるとは思われますが、地域自殺対策緊急強化事業補助金は人口によって定められた上限があるため、限られた財源を今後、自殺予防対策の事業にどのように有効に使っていくか、検討してまいりたいと存じます。
〇4項目目に教育課題について質問します。
今回予算案では、小中学校及び幼稚園に対して、児童・生徒・園児及び教職員用の防災備蓄品を確保することが盛り込まれています。これは交通機関等が停止し保護者の帰宅が抑制された場合に、子どもたちは保護者への引き渡しを終えるまで学校等で待機することによるものです。そのため学校にはこれまで以上に自助の意識を高め、防災体制を構築することが求められます。
稲城市教育員会では「子ども防災自助パック」と称して、公助としての備蓄に加え、自助として各自が保存食や飲料水などの防災用備蓄品を備えるという、防災教育の視点で取り組んでいます。
自分にとって必要な備蓄品を自分で考えクラスで話し合い、各自で準備して教室などに保管します。中には自分自身への励ましの手紙や、保護者からの励ましと連絡先を書いた手紙、家族写真などを入れる子どももいたそうです。
例えば食物アレルギーの子どもは、あらかじめ除去された保存食が必要ですし、クラスで話し合うことで、お友達に理解してもらうことも命を守るうえで、大切なことであります。発達段階に応じて、子どもたち自身で考えることによって、自助の意識を高める防災学習に結び付けようとするものです。
必要最低限の備蓄は区が用意するとしても、前述のような取り組みは大変に参考になると思います。自分にとっての備蓄、自助とはどういうことなのか、ひいては家族での自助の取り組みにつなげる、このような防災学習について、教育委員会のご所見を伺います。
【三田教育長答弁】
引き続きまして、教育委員会の所管に属する事項に関するご質問に対しまして、お答えいたします。
まず、教育課題についてのご質問のうち、防災学習についてのご質問にお答えいたします。
先の東日本大震災時には、学校現場において、通信手段が途絶え、遅くまで児童生徒が学校に待機するなど、教職員は対応に大変苦労いたしました。また、帰宅困難者の対応に追われ、学校現場は騒然とした状況下にあったことを鮮明に記憶しております。
教育委員会では、東日本大震災の教訓を受け、本年4月に東京都帰宅困難者対策条例が施行するのに伴い、大規模災害発生時に、迎えに来られない保護者が一定数生じることを想定し、各学校に児童・生徒用の飲料水、クラッカーなど、防災用備蓄品を購入する計画でおります。備蓄品については、単に、学校施設に搬入するだけでなく、これを機会に、児童生徒の防災意識の向上につなげたいと考えております。
例えば、備蓄品を学習教材として活用し、学校に備蓄品を搬出入する際、児童生徒を立ち会わせたり、どのような物資がどのくらい保存されているのか、どのような使い方をするのかといったことを確認させたりする等、防災意識を高めるよう工夫してまいります。
稲城市教育委員会で取り組んでいる「子ども防災自助パック」を活用した防災教育は、自らの安全は自ら守り防災行動力を高めるという本区の方針と一致していることから、今後、各小中学校と共に、自助意識を高める防災学習の素材として十分検討してまいります。
学校における防災機能の充実について伺います。災害時の避難所として学校が指定されている自治体の中には、学校における防災機能、避難所機能を充実させる取り組みが多く聞かれるようにもなりました。
わが会派中島幹事長の母校である、改築された長岡市立東中学校を過日の防災・震災対策調査特別委員会で視察してまいりました。長岡市では中越大震災の経験から、体育館における避難生活の問題点に対応するため、「地域の避難所としての学校づくり」との方針で、「既存学校施設対策」と「改築学校施設対策」に分け、既存学校については避難所対応工事を3年間で1億円を投資して完了させました。
内容は①スロープの設置、②様式便所の設置、③TV、電話の配線、④受水槽への蛇口の設置、⑤プロパンガスに変換できる接続口の設置、⑥防災物品の備蓄の6項目です。特に強調されていた点は、避難所ではTV設置は必須であり、電話応対も職員室への往復が頻繁で苦労した、とのことです。また停電や断水時でも受水槽から飲料水を確保し、最も復旧が遅い都市ガス停止時の対応を工夫されたことです。
また改築校に求められるのは、教育活動エリアと避難エリアを分けておくこと、これは避難所が長期化しても、学校は2週間程度で再開しないと、子どもたちの心に影響をもたらす、との考えに基づいています。
予算案では、無線LAN環境の整備が盛り込まれ、タブレット型に切り替えていくことは大変に結構なことと大いに評価しております。また救援センターとなる主に体育館においては、Wi-Fiスポットなどの無線環境の整備が必要と考えます。
いずれにしても既存校、改築校ともに教育活動をメインとすることは当然ですが、学校防災機能を充実させることによって、学校が震災に負けない拠点となることが重要と考えますが、ご所見を伺います。
【三田教育長答弁】
次に、学校防災機能の充実についてのご質問にお答えいたします。
長岡市の例にもありましたが、本区で学校を改築する際には、あらかじめ地域開放エリアを設け、災害時には、教育活動エリアから独立して救援センターとしての機能を最大限発揮できるよう計画しております。
地域開放エリアは、教育活動から独立させた機能を持たせ、避難所となる体育館に冷暖房を設置し、近くに洋式トイレやシャワー室、更衣室を配置するよう配慮しております。また、避難所運営の拠点となる会議室や和室を配置させ、バリアフリー化を行い、高齢者や障害者の方々が安心して使用できるよう整備しております。さらに、停電対策として、照明や情報確保のための非常用電源装置を設置し、3日間の電源を確保しております。
また、既存校につきましても、計画的に大規模改修を行い、トイレの洋式化や災害用マンホールトイレ、スロープの設置、停電時も使用できる水道水の直結化、体育館にテレビ配線を設置するなど、生活に不可欠な設備を備え、防災機能の充実を図っております。
さらに、情報通信手段の確保として、移動可能で災害時でもつながりやすいPHS電話を各学校に4台配備し、体育館でも電話対応ができるようにしております。無線環境の整備につきましては、区長からお答えしましたように各学校にワイファイをすでに設置しておりますので、校舎内や体育館で、モバイル端末を利用してインターネットに接続することが可能となっております。
学校は、子どもたちの学習・生活の場であるとともに、災害時の避難場所ともなることから、今後とも、計画的に改築・改修を進め、学校の防災機能を特段に充実させてまいります。
〇最後にその他として、区内圏域の考え方について質問します。
コミュニティについて阪神大震災の際に指摘されたことがありました。それは被災者が避難所から仮設住宅に移る時、公平性が優先され抽選などで知らない人ばかりの中で、つながりづくりに苦労した。また仮設住宅から復興住宅に移る際にも、同じことが起きてしまい、短期間に2度も生きる支えとなる絆が壊されたというものです。
コミュニティという表現は、まちづくりの理念や政策を表すものとして、1969年国民生活審議会中間報告では「コミュニティ、生活の場における人間性の回復」と、その後当時の自治省が「コミュニティ:近隣社会対策」を施策として推進してきたものであります。
このコミュニティを圏域として考えた場合、多くの区割りが存在しています。
町会を単位とした12の区政連絡会、学校の学区域、区の政策上の圏域、福祉関係施策上の圏域、青少年育成委員会など区政と密接な関わりのある諸団体が位置づける区割りなど、圏域というもの自体が複雑化した状態ではないでしょうか。
しかしながら町会をはじめ、コミュニティの主体となる方々が、長い歴史の中で築いてこられたものは、大いに尊重すべきであり、区がこのことを検討される際は、当然に町会などそれぞれの主体となられている方々の意向を十分に反映すべきです。
今後区が施策を展開するうえでの圏域について、目指すべき目標をどう考えておられるのか、ぜひお示しいただきたいと存じます。
以上で一般質問全部を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【高野区長答弁】
区内圏域の考え方についてのご質問にお答えします。
区政連絡会、小中学校の学区域、地域包括支援センターの圏域など、様々な圏域が複層的に展開している状況と課題は、まさに議員のご指摘のとおりでありまして、非常に重要な、区政運営の基幹に繋がる課題であると認識してきました。
施策の目的や、適切なサービス提供等の観点から、最適と判断される管轄が設定されてきました。その上で、12出張所から区民事務所への統合、少子化の流れの中での学校の統廃合などが行われた結果、現在のような複雑な圏域の構成となったものと考えています。
しかし、区民活動の基盤ともいえる町会を跨いだ圏域があることなど、重要な課題として考えてきました。
一方、少子高齢社会の進行によって住民の構成が変わることによって、圏域の見直しが必要になること、また、都市計画道路の整備などによって地域における繋がりが変容することがありうるなど、圏域自体も永続するものではないと考えています。
ご指摘のように、長い歴史の中で築き上げられてきた圏域であり、さらに、警察、消防など区以外の行政官庁の管轄もありますので、区単独の視点のみで見直せるものではありません。
検討する際には、お住まいのみなさん、活動をされているみなさんのお気持ち、お考えを伺いながら、関係官庁との調整を図りつつ、時間を掛けて相談させていただきたいと考えています。
以上をもちまして、西山陽介議員のご質問に対する答弁を終わります。