○区長(高野之夫君) ただいまの池内晋三郎議員のご質問に対しまして、順次お答えを申し上げます。なお、教育委員会の所管の属する事項につきましては、教育長からご答弁申し上げます。

  まず、区政運営と予算の特徴についてのご質問にお答えいたします。

  第一点目、私の区政運営に取り組む姿勢についてお答えをいたします。大きな歴史的節目である新たな世紀を迎え、深い感概を持って、私自身過去を顧み、未来を展望いたしたのであります。新年を共に迎えた若者を見るにつけ、豊島区が陥っている危機を打開し、豊島区が持つ限りない可能性と将来の世代のため、懸命に努力することが私に課せられた責務であることを、改めて痛感いたしたのであります。

  財政問題では、十三年度予算編成を終え、議会のご審議を賜る時期ではございますが、はや十四年度の編成が脳裏をかすめております。「財政健全化計画」でお示し申し上げたとおり、十三年度の一・五倍もの財源対策を講じなければならないからであります。健全化計画でお示しした十六年度実質黒字転換という目標達成は、私自身の公約であり、責任であると考えております。この時期を逸すれば、活力ある区政を再生する機会が失われ、最悪の場合財政再建団体へ転落し、区民福祉を安定的に提供できなくなるという強い危機感を持っております。分権の時代には、自らが決定し、その結果責任を自らが負う、自己責任原則が基本となります。本区の財政危機につきましても、いたずらに他へ責任を転嫁することなく、自らの努力で克服しなければならないのであります。また、自己の未来も自ら切り開いていくことが求められているのであります。このような認識を今回、所信表明として申し上げたのでございますが、区議会はもとより、区民各層のご理解とご支持がなくては政策の実現はできないのであります。引き続きご指導、ご支援を賜りますようお願いを申し上げます。

  次に、第二点目、十三年度予算の特徴についてお答えをいたします。十三年度予算では、財政の再建に向けた明確な歩みを確かなものとするため、「財政健全化計画」でのさまざまな見直しを徹底したのでございます。その一方、区民生活に密着する新たな事業などにつきましても、さまざまな工夫を講じ、取り組むこととしたのでありまして、縮小や削減だけの予算では決してございません。

  まず、保健福祉の分野では、介護保険制度のもとでの新たな基盤整備の手法として、区有地を活用しつつ、民間事業者を主体とする施設整備の支援事業を立ち上げております。また、障害者福祉施策では、在宅サービスの向上、施設サービスの充実を図る視点から、新規事業を含め多彩な事業を展開するものであります。さらに、歯科医療の連携システムをつくり上げ、区民の健康づくりを支援する事業も新規に着手したものでありまして、将来の事業の再構築を念頭に財源面から工夫を凝らしております。

  次に、子育て支援の分野では、従来からの事業をしっかりと維持した上で、広く子育ての拠点施設とするべく、子ども家庭支援センターを開設するものであります。また、多様な保育サービスを提供するため、一時保育の拡充、延長保育のスポット事業などへ先駆的に取り組むものであります。

  教育の分野では、地域の基礎となる学校建設への最重点課題として積極的に取り組み、統合校の整備、耐震補強につきましても推進することとしております。さらに、IT時代に対応できる教育環境の整備、「総合的な学習の時間」の充実、開かれた教育の推進にも新規事業などにより、きめ細かく対応したものであります。

  次に、副都心池袋の街づくりについてのご質問にお答えをいたします。

  第一点目の東池袋四丁目地区市街地再開発事業の進捗状況についてでございます。さきの二月十六日、再開発組合において臨時総会が開催され、参加組合員契約、組合定款と事業計画の変更といった事業再構築の集大成となります重要な案件が審議されました。中でも、組合定款の変更につきましては、組合員の三分の二以上の賛成が必要となる特別議決でありましたが、すべての議案が約九割に達する賛成で承認されました。今回の事業見直しでは、権利者の方々の資産を大幅に減額するといった、大変厳しい内容も含まれておりまして、賛成を得るのが難しく、特に慎重な審議が必要だったのであります。このたび多数の組合員の方々の理解が得られましたので、いよいよ再開発事業は大きく前へ動き出すことになりました。今後の取り組みにつきましては、当面は権利変換計画に対します合意形成であります。権利者全員の賛成という高い同意率を目指しますので、私といたしましては、権利変換計画が公平に執行されるよう、組合に対しまして指導・支援してまいりたいと考えております。

  次に、第二点目のグリーン大通り周辺整備の基礎調査の予算に関するご質問にお答えをいたします。グリーン大通り周辺整備調査の実施は、池袋副都心機能のさらなる充実や、歩きやすい魅力あるアメニティ空間の形成を図るためのものであります。併せて地下鉄十三号線新駅の設置の誘導を図り、広域的な発展を促すためのグリーン大通りの地上部並びに地下部の立体的整備のため、基本計画を策定したいと考えております。その策定に向け、あらかじめグリーン大通りの地下部に想定する駐車場、地下街、地下通路の実現手法の調査・研究を行い、事業主体、事業費、事業の採算性等も検討してまいります。したがいまして、現在のところ、事業の実施に向けた区の財政負担等は未定でございます。

  次に、第三点目の池袋駅前の再開発についてお答えをいたします。ご指摘いただきました地区につきましては、池袋駅の直近であり、本来であれば豊島区を代表する商業や業務の集積地となり得る場所であります。しかしながら、現状といたしましては、裏通りはもとより明治通り沿いにも三階建程度のビルが建ち、高いビルでも十階までという状況であります。また、街区内の道路幅員が狭く、沿道の建物が容積を有効に活用できないことや、街区が細分化され過ぎていることも問題であります。

  現在、市街地再開発事業を区の補助金を受けて施行する場合、耐火建築物が全体の三分の一以下という要件があり、当該地区におきましては、ほとんどが耐火のため、市街地再開発事業の対象とはなりません。しかし、国におきましては、一九七〇年代の建築ビルの地区であれば、市街地再開発事業の補助金が受けられるよう都市再開発法の改正の動きが出ております。したがいまして、将来はこうした地区におきましても、再開発事業が可能になると考えられます。

  一方で、東池袋四丁目地区の再開発事業を事例として考えますと、こうした街づくりは、十年から二十年の長期となりますので、地元関係権利者の方々の強い結束が不可欠となります。また、民間企業の積極的かつ強力な支援も必要であります。

  ご指摘のように、南池袋地区だけではなくて、池袋東口・西口ともに同様な地区が見受けられます。このような地区におきましては、既存の街づくりの手法だけでは整備が難しい面がありますが、池袋副都心としてのさらなる発展が期待されておりますので、今後の街づくりのあり方や将来ビジョンの策定も視野に入れた、新たな街づくりの手法の研究や地元関係者との協議に向け、取り組んでまいりたいと考えております。

  次に、資源循環型社会についてお答えをいたします。

  まず、第一点目の新たな資源回収に伴う区民の皆様との対話についてであります。ご質問にありますように、新たな資源回収は、現行のごみ収集体制の変更を伴うものであり、その実施にはこれまで以上に区民の皆様のご理解とご協力が不可欠であります。また、ごみ減量・リサイクルは、全区民の皆様、そして社会生活のすべてにかかわるものであり、常日ごろから行政が地域に入り、区民の皆様とコミュニケーションを行うことは当然であると認識をしております。この視点に立ち、このたびお示しいたしました新たな資源回収の試案でも、各団体等のご意見・ご要望を踏まえまして作成したものでございます。したがいまして、新たな資源回収の実施に向けましては、ご趣旨を踏まえまして労を惜しむことなく、行政が積極的に街に出て、区民の皆様と会話し、意思の疎通を図り、区民の皆様と一体となって、新たな資源回収の実現を目指してまいりたいと考えております。

  次に、第二点目の循環型社会形成推進基本法についてでございます。循環型社会形成推進基本法と関係七つの法律は、我が国が環境立国を目指す理念と具体的行動への道筋を示したものであり、今後、紆余曲折はありますが、これらの法律により我が国全体がごみゼロ社会に向けて確実な歩みを始めるものと考えております。

  次に、第三点目の新たな資源回収の位置づけについてでございます。先に申し上げました循環型社会形成推進基本法は、ごみの発生・排出抑制を基本としております。本区が進めております新たな資源回収は、従来の可燃ごみ収集日の一日を資源日として、資源を効果的に回収しリサイクルを促進するものであります。また、併せましてこれまでの資源回収を中心としたものから、可燃ごみ収集日を減らすことにより、排出抑制等も含め、新たな視点によりごみ減量・リサイクルを推進するものとして位置づけをしているところでございます。

  次に、第四点目の家庭用生ごみ処理機への助成についてでございます。ご質問にありますように、家庭用生ごみ処理機は発売当時と比較いたしますと、低額となり徐々に家庭に普及しているところであります。本区におきましても前年度モデル実施を行い、その結果、効果があるとのご意見の一方で、臭気等の課題もあるとの報告を受けております。しかし、生ごみ対策は今後ごみ減量への重要な要素でありますので、ご提案のございました生ごみ処理機の助成につきましては、財政状況や処理方法の技術的進捗等を踏まえまして、検討してまいりたいと考えております。

  次に、平和への取り組みについてのご質問に対しましてお答えをいたします。教育委員会所管の郷土資料館についてのお尋ねも含めて、教育委員会との協議を踏まえまして、私からお答えをさせていただきます。

  現在、郷土資料館におきまして、お話にございました第三回収蔵資料展「思い出は資料館へ」を三月三十一日までの期間で開催をしております。これは、区民の皆様からご寄贈いただきました戦時中のものを含めた三百点を展示しているもので、ご来館の方々にご好評をいただいております。これも郷土資料館に対しまして、区民の方々が信頼を寄せ、思い出を託していただいたからでありまして、心より感謝をいたしております。

  第一点目の戦争当時の資料収集と展示についてでございますが、郷土資料館では、昭和五十九年の開館以来、区内に残る戦争関係資料や学童疎開関係資料の調査と収集に努めてまいりました。そして、昭和六十年、六十一年、また平成元年、平成七年には、区内の戦争関係資料の特別展を開催いたしました。また、昭和六十二年、六十三年には、学童疎開をテーマにした特別展を開催をいたしました。さらに、毎年六月から八月にかけての時期には、常設展示の一環として、戦争関係資料のコーナーを設置し、平和の重要性を訴える展示を行っております。今後とも資料収集及び年に一度の展示会の実施を継続してまいりたいと考えておりますので、区民の方々のご協力を引き続きお願いをいたしたいと思います。

  第二点目の非核都市宣言を先駆けた豊島区として、核廃絶の機運を豊島区から盛り上げてはどうかとのご提案についてでございます。私は、区政運営の基本理念の第一に、「平和と基本的人権を尊重する区政を実現すること」を掲げ、区民の皆様や区議会のご協力をいただき、核実験への抗議を初めさまざまな取り組みをしてまいりました。しかしながら、二十世紀中に核兵器廃絶を実現することはできず、今世紀の課題となってしまいました。このことは非常に残念でなりません。

  今年は、二十一世紀最初の年であり、また非核都市宣言から二十年目に当たります。こうしたことから、例年区民センターの文化ホールで行っております「としま非核平和のつどい」につきましては、公会堂で開催し、より多くの皆様のご参加をいただきたいと考えております。さらに、七月の七夕に区民の皆様からの平和への願いを書いた短冊を募集し、七夕飾りを庁舎ロビーに展示し、それを冊子にまとめるなど、区民のご参加をいただけるイベントとしていきたいと考えております。核兵器はもちろんのこと、戦争という残虐な行為は、いかに人を傷つけ、悲しませることでしょうか。戦争体験を風化させず、地球上のすべての人々が平和と安心を得られる世界になるよう、皆様方と全力で取り組んでまいりたいと考えております。

  以上をもちまして、池内晋三郎議員のご質問に対する私の答弁を終わります。

      〔教育長二ノ宮富枝君登壇〕

○教育長(二ノ宮富枝君) 引き続きまして、教育委員会の所管事項に関しまして、私よりお答えいたします。

  ご指摘のように、いじめ、不登校、いわゆる学級崩壊や青少年の凶悪な犯罪の発生など、子供をめぐる状況は深刻でございます。

  昨年五月十一日、教育改革国民会議座長の江崎玲於奈氏は、次のような緊急アピールを出しました。「まず、子供たちに言いたい。あらゆる失敗は回復できるが、自殺と殺人によって失われた命は二度と回復できない」。「国民の皆様に次のことを訴えたい。子供を見つめ、語りかけてほしい。その上で自分の子供も他人の子供も、褒めるべきは褒め、しかるべきときはしかろうではないか。また、子供にかかわる社会のそれぞれの場で、子供が悩みを相談できるように、考えてほしい。相談を受けたら、決して、たらい回しにしないでほしい」という訴えは、いまだ私どもの記憶に新しいところでございます。

  豊島区教育委員会といたしましては、この思いを厳粛に受けとめ、児童・生徒の問題行動に対応しているところでございます。

  ご指摘の、いわゆる学級崩壊とは、教員の学級運営がうまく機能しない状況を指しているものでございます。その背景といたしまして、子供たちが人とのかかわりにストレスを感じている。生活にいらいら感がある。自己肯定感が持てず、家族や学校への不満が解消できないことなどが挙げられます。

  第一のご質問の本区における実態でございますが、小中学校の圧倒的多数の学級では、学級運営が正常に機能した状態で行われており、その様子は学校参観週間などでもごらんいただいているところでございます。しかし、残念ながら今年度、いわゆる学級崩壊に至った事例も一件見られました。これにつきましては、教育委員会と学校間の連携を図り、子供の人権を守り、安心して学習に打ち込めることを最重点にして、問題解決に当たってきているところでございます。

  また、教員が自信を失いかけているとのご指摘につきましては、一部否定できないところがございますが、児童・生徒の理解や教育相談などに中心を置き、より現実の子供たちの状況を理解するための研修を一層充実させてまいります。

  第二に、いじめについてでございますが、ご指摘のように、人権上極めて重大な問題であります。弱い者をいじめることは、人間として絶対許されないこと、いじめられている子供の立場で親身に指導すること、いじめはあるという前提に立ち、学校組織を挙げて早期発見、早期対応を図っているところでございます。学級崩壊やいじめの問題解決のかぎは、児童・生徒、保護者、教員が三位一体となって取り組み、互いの信頼関係を強めることにあります。私は、この考え方に立って、各学校を励まし、支援してまいりたいと考えております。

  第三に、子供の学力の低下の問題についてでございます。今日、大学生等の学力の低下が言われているところでございますが、小中学生の学力低下を実証する確かなデータは現在のところございません。しかし、どの子供にも学習内容を完全に習得させることが教育の目的でありまして、これまでにも増して教科の内容を厳選し、基礎・基本の徹底を図り、基礎的学力の向上に努めてまいります。

  第四に、子供の可能性を伸ばし、幸福にする教育についてでございます。ご指摘のように、子供たちの未来の可能性を信じて、常に温かい心で子供たちを見守り、認め、励ますことは、私たち大人の責務であると受けとめております。「教育は人なり」、

 「教師のたった一言が子供の心を励ます」と言われます。教員は、子供の思いを受けとめ、心のひだに触れながら、その内にある意欲を喚起することが肝要であることを、より一層徹底してまいりたいと存じます。

  私は、過日行われました豊島区小学校研究会の発表会に参加いたしました。本区の教員の教育に向ける情熱をひしひしと感じてまいりました。子供たちに限りない愛を持ち、豊かな専門性を発揮できる教員の育成は、現在、最優先の課題でございます。研修はもとより、研究会活動を通じて、また私自身も教員の方々の実践にできる限り触れる機会を持つなどによりまして、その育成を進めてまいりたいというふうに考えております。

  以上をもちまして、池内晋三郎議員のご質問に対する私の答弁を終わります。