H15年3定 島村質問10/02/03

私は「活力とやすらぎのある豊島区をめざして」と題し、

一、中小零細企業対策について

二、住民参加のまちづくりについて

三、利用者の側に立った福祉サービスについて

以上、三点に渡って一般質問を行います。

まず第一番目の「中小零細企業対策」でありますが、最近の経済状勢は株価の上昇、各種の経済指標の改善、そして本年八月に政府が発表した今年四月から六月期のGDPが大方の予想を上回り、物価変動の影響を除いた実質で前期比〇.六%増加という高い伸びを示し、六期連続のプラス成長となりました。

長くデフレ不況に苦しんできた日本経済に、わずかではありますが明るい兆しが見え始め、景気の底離れに期待感が高まりつつあります。

しかしながら、日本経済総体としては、依然デフレ状況から抜け出せておらず個人消費や設備投資も力強さに欠けているのが実態であります。

とりわけ日本企業全体のうち九九.七%を占める中小企業、そしてそのうちの約八割の零細企業においては、未だ厳しい経営環境にあることは論を待ちません。またこうした中小零細企業に勤める人は全勤労者の七割にも上ります。この方々の生活が安定していかなければ個人消費の回復も税収の増加も見込めません。昨年六月に行われた「豊島区住民意識意向調査」においても「経済的に繁栄した活力のあるまち」を望む声が全体の三五.九%とトップに上げられております。

まさに日本経済の屋台骨を担う中小零細企業の活性化なくして日本も東京もそして豊島区の活性化もあり得ません。今こそ、行政は総力をあげて中小零細企業支援に取り組むべきであると考えるものです。

そこで豊島区としての取り組みについて提案及び質問を致します。提案は区の中小商工業融資の改善に関して四点、五点目に産業支援についての質問であります。

第一点目に一般の商工融資でありますが、区は平成十三年、十四年と企業ヒアリング調査を行っております。その回答には区に対して融資枠の拡大を要望する声が数多くありました。一回の外注費の支払いだけで三千万円の運転資金や一台の機械の導入だけで六千万円の設備資金を要する事業者にとっては、現状の区の融資限度額では対応ができません。また、産業界における昨今の技術革新はめざましく、区内における事業者についても常に設備の更新を迫られているケースが少なくありません。さらに今後、景気がわずかでも回復局面にさしかかっていくならば、より一層の資金需要が発生する可能性も視野に入れておくべきであります。その時に、区として対応できる体制を整備しておくべきであると考えます。よって現状の融資限度額を運転資金、設備資金ともに、最低でも一・五倍から二倍に増額することを提案いたします。

第二点目に長引く不況から抜け出せない要因のひとつに開業率が廃業率を下回る「開廃業率の逆転現象」があるといわれます。厳しい経営環境の中での開業であるからこそ行政側は最大限にバックアップするべきです。そこで起業資金申請時の連帯保証人でありますが現状、第三者保証人を徴求されることが多いとのことでありますが、状況によりそれが難しく、開業が困難になったり、あきらめてしまうケースがないとは言えません。連帯保証人は、法人であれば代表者のみ、個人事業であれば家族のみに留めることを提案いたします。また、一般的に言って創業時は資金が乏しい状況にあるのが通上であります。ゆえに開業にあたり事務所等を賃貸する場合も保証金や敷金等の支払いにより資金を逼迫させる要因となります。そこで少しでも起業家の経営環境に対し支援を行うべく、閉校となった学校の空き教室を事務所として安価で貸し出しをすることも提案いたします。

第三点目に区独自の借り換え制度について提案をいたします。現在、一般の保証付融資に関しては公明党が推進をした「資金繰円滑化借換保証制度」により複数の借入金の一本化が図られ、多くの中小零細企業にとって月々の返済負担が軽減をされております。同制度の趣旨は、長引く不況によって資金繰りが逼迫している中小零細企業を支援するため複数の保証付き融資を一本化することにより月々の返済負担を軽減させた上で、さらに資金が必要ならば申し込むことができるようにしたものです。本年二月にスタートした同制度の利用件数はすでに二十万件を大きく突破をしております。いかに多くの事業者の方が資金繰りに苦労をされていたかが見て取れます。こうした動きを受けて各自治体においても独自の借り換え制度を実施しているところがあります。北九州市や東京の大田区においては一定の条件のもと複数の制度融資を一本化したうえで新規借り入れ金を合算して申請を行うことができるようにしました。豊島区においても、こうした借り換え制度導入の検討を行うべきであると考えますがいかかでしょうか。

第四点目に区の商工業融資の取り組み方自体に提案をいたします。今申し述べた第一点及び第二点の提案事項である融資限度額と連帯保証人については当然ながら区単独で行うことは困難であることは承知しております。実施に至るには東京信用保証協会や取り扱い金融機関に対する強い要請と連携が必要となり、場合によっては都や国に対する申し入れも行っていかねばなりません。しかしながら分権化時代の今日、自らの自治体の活性化の基盤となる中小零細企業の繁栄のため、独自の商工業施策を強力に推進することを要望するものです。そうした観点から豊島区としても受付の段階で従来の書類審査だけではなく、申請者の具体的な事業内容と事業環境を的確に把握、分析し、将来の成長性や決算書には必ずしも明記されない個人資産や関連資産も考慮に入れ徹底した審査を行う必要があります。また申請者の意図と要望を明確に聞き取ったうえで、その可能性と危険性を充分に申請者にアドバイスし理解をしてもらうきめ細かな経営相談を行う必要もあります。そして、そのためには中小零細企業の実態を把握することに長けた地域金融機関の経験者を相談者として起用していくことも合わせて提案いたします。

第五点目は産業支援についての質問です。東京大田区の外郭団体である産業振興協力会は大田区内の中小企業が持つ技術を大学の研究開発などに生かす「橋渡し」事業を開始いたしました。例えば大学が研究に使うため新たに試作したい部品などについて同協会が窓口となって相談を受け、それに該当する企業を紹介し区内中小企業の受注につなげるものです。大学の先端的な研究に合致する機器などの開発を中小零細企業に促し地域産業を活性化しようというものです。また新宿区と立教大学は本年七月に商工施策についての協定を結びました。事業者向けに女性起業家支援や創業支援などをテーマに講習会を開いたり地場産業や商店街の支援などの商工施策について立教大が調査などで協力をするものです。翻って豊島区では、先に述べたアンケートの回答において、産業支援に対して区がどのような取り組みをしているかわからないという声が数多くありました。アンケートの要望欄にもあるように事業者の中には生き残りをかけて技術革新に伴うIT化やデジタル化を図るため、それに必要な知識を習得する講習会やあるいは新たな経営手法を身につけるきっかけを作るための異業種交流会などを要望する方が多くいるにもかかわらず区からはほとんどそういった情報は入ってこないとのことです。現在、豊島区は産業振興計画において「しなやかスモールビジネス」の育成を通し交流、情報機能の強化や人材育成、経営基盤の強化、そして起業支援のしくみづくりなどをうたっておりますが、その具体的な取り組み方法と現在までの効果についてお聞かせ願います。

以上、中小商工融資の改善と産業支援について、さらに今後の中小零細企業支援についての区長のご意見と取り組み方法をお伺いいたします。

第二番目は、「住民参加のまちづくりについて」の質問であります。わが国はバブル崩壊以降、大きな転換期を迎えており、高度経済成長の時代における物質面の豊かさのみを追い求める生き方にも疑問を投げかける声が多くなりました。そうした時代背景のもとで各自治体は地方分権型の行政への転換が迫られております。豊島区においても基本構想を策定し、向かうべき方向性を高らかに謳い上げております。その基本構想の実現を図るために打ち出された基本計画の中のまちづくりに関する部分が今回の私の質問事項であります。

事例をあげて質問します。現在、染井地域の住民の間で問題となっているJR駒込社宅跡地の分譲マンション建築計画であります。同跡地については、最近まで豊島区において広域指定避難場所として、社宅跡地、学校用地の一部、近接する民有地なども含め、ニヘクタール以上の都市計画公園の整備を前向きに検討してまいりました。JRに対し用地の取得を働きかけ、計画も順調に進展するべく鋭意努力を傾けてきたところです。地域住民もこの計画に対し期待を寄せ区の努力を見守り続けてきたところですが残念ながらJRは諸般の事情からより高く購入する民間企業に売却をいたしました。その結果、一万四千㎡を超える広大な敷地に地上十四階建てのマンションを中心として計五棟の分譲マンションが建築されようとしています。同マンションは総戸数四百八十八世帯、設置駐車場二百四十八台と大規模なものであり、当然地域住民はこれまでの環境と安全性を考慮して一抹の不安を抱いております。現在住民側は事業者である野村不動産に対しても、また許可権者である豊島区長に対しても都市計画法などの法律も引用しながら環境面や防災、安全面について具体的な要望書を提出しております。このような現状から問題の本質がどこにあり、また区の基本計画に打ち出された将来の豊島区のあるべき姿を実現するためにこうした問題にどう対処したらよいのかを考えると同時に区長のお考えをお尋ね申し上げるものです。

この地域はご存知のように豊島区の木にも指定されている有名なソメイヨシノの発祥の地であり、マンションの前面道路は染井通りと呼ばれております。敷地内にあった桜の木は、社宅の解体工事に伴い住民の願いも空しく、その半分が伐採されてしまいました。もちろん業者側は独自の緑化計画により最低限の樹木保存を行い、豊島区みどりの条例に基づく緑化基準もクリアーをしております。しかし計画図を見る限り、五棟のマンションを中心とした樹木の配置がなされているとしか思えません。

そこで基本計画第一章「ゆとりある生活空間をきずく」の第四「アメニティの形成」の記載事項にもとづいて申し上げます。伐採された桜も含め敷地内の桜はそのままの姿で「それぞれの地域に生活する人々が自らの手ではぐくんできた個性ある環境であり、次の世代に引き継ぐべき地域社会共有の財産」に相当するものであると思います。また敷地内の桜の木々は「個性ある街並みや景観」を形作っていたものではないのでしょうか。そしてそれが地域の住民にとって「生活の質の向上につながるもの」として愛し親しまれてきたものと思われます。

また、同じく基本計画には「身近な自然環境、歴史や文化、特徴的な景観や街並みなど地域の中ではぐくまれ、その特徴と個性をかたちづくっている要素を大切に守り育て区民、事業者との協力と連携のもとにアメニティの形成を総合的に推進する」とありますが残念ながらこの十四階建を中心としたマンション建築計画と区のめざすまちづくりの理念とは大きな落差が生じてしまったものと思います。

区のアメニティ形成条例に定める樹木の伐採は、それに着手する前日までに届け出ればよいことになっており、実質上、土地所有者は地域の要望を考慮に入れなっかたとしても伐採が可能であり、建造物も建築基準法に違反しなければ、なんら問題はないことになります。事実、同マンション建築後の住環境について住民側が問題提起をした際に区は「指導はできる限り行っていくが法律の規定以上の規制はかけられない。行政は違法でなければ許可せざるを得ない」と答えております。当然の答えでありましょう。

しかし、さきほど引用した基本計画の「アメニティの形成」に加え「みどりと広場」の記載事項にも「人々にやすらぎを感じさせ、都市の魅力を高める大きな要素であるみどりと広場は、防災や環境保全等に効果をもたらすとともに、豊かさを実感できる生活のために不可欠な施設である」とあります。街並みや景観やみどりがいかに人心に大きな影響を及ぼすものであるかを考慮にいれた法律は、未だ日本にはありません。しかしながら豊島区の基本構想にはその精神が高らかに掲げられているのです。本来、地域の個性、風土、文化といった価値は長年にわたり、そこに住む人たちの意識の集積の中から生じたものであり、建築や都市計画はそれに呼応するものでなければならないはずです。住人の意識の集積である地域の個性を破壊することは住人の生存に必要なやすらぎの基盤を破壊することになると言っても過言ではありません。したがって建築や開発という行為は地域の特徴に合うものでなければならなし地域環境の改善に役立つものでなければならないと考えるものです。過去においては、神奈川県の真鶴条例に見られるような建築行為に強烈な規制をかけた条例も生まれましたが、豊島区でも基本構想のなかでまちづくりにおいても区民の参画を促す「自治基本条例」を策定しようとしています。本来、条例とはその地域の住民の総意を住民が自己決定するものであることからすれば、まことに新時代にふさわしい計画であります。

しかしながら、そうした計画の策定の最中にも地域の個性が見失われていくような計画が残念ながら進行しているのです。基本計画において染井地域は特徴ある街並みを保全すべき「特別推進地区」として位置づけられておりますす。また、今後同跡地の問題において民間企業の計画に区がどこまでかかわれるか難点は多々あるとおもわれますが一度は区が都市整備公園の計画を立てた地でもあります。そうした観点から歩道空地の確保や桜等樹木の保存を図り、環境、安全、防災等に対する地域住民の不安が解消されるように全力で取り組んでいくべきであると考えます。

さらに豊島区の緑被率は最新のデータで平成九年五月現在一〇.八%であり年々減少の傾向にあり、さらに公園面積も区民一人当たり〇.七七㎡と二十三区中最も低い割合となっております。こうした現状を踏まえ基本構想ならびに基本計画にうたわれたまちづくりを今後のどのように取り組んで行かれるのでしょうか。このJR駒込社宅跡地の問題が将来のまちづくりに大きな禍根を残すことがないように切に願うと共にこれを契機に豊島区のまちづくりについて地区計画の策定等により一層良好な条件を作り出す努力を傾注していくことが重要であると思われます。区長のご意見をお聞かせ願います。

最後に第三番目、「利用者の側に立った福祉サービスについて」でありますが、豊島区はこれまで高齢者や障害者も安心していきいきと暮らせる福祉社会の形成に力を注いでまいりました。そして、基本計画においても「今後とも、障害をもつ人も持たない人もともに生きることのできる社会を形成しようとするノーマライゼーションの実現のために、だれもが安全かつ快適に行動できる福祉環境整備の一層の推進が必要である」と謳っております。そこで一点だけ事例を上げ、もう一歩踏み込んだ福祉サービスの実現に向けて提案いたします。

現在、豊島区社会福祉協議会で行っているハンディキャブの運行事業であります。車イス利用の方が外出のために低料金で利用できるこの移送サービスは運転も民間のボランティアの方が行っています。まさに区民による地域福祉活動の典型であります。平成十四年度のハンディキャブの利用件数は五’六四七件にも上ります。それまでひとりでは外出が困難であった車イス利用者の行動半径を大きく広げる役割を担った重要なサービスであります。同サービスの改善について二点申し上げます。第一点は、現在利用の申し込み締め切りは利用日の一週間前であります。したがって、その間に行きたいと思うところが出てきたり、誘いを受けても利用できないことになります。せめて三日前までに申し込めば利用できるように提案いたします。その間に車両や運転手の手配は充分に可能であると思います。

第二点目は同サービスは土日、祭日も利用できますが、ふだん連絡先になっている福祉協議会は休みのため緊急時の連絡先が職員の自宅であり運転手としては非常に連絡しずらいとの声もあります。職員の休日出勤が無理であるのなら熟練し、ある程度研修等を受けたボランティアに委託するなど休日の連絡体制を整えることを提案いたします。きわめて的の狭い提案ではありますが、一歩踏み込んだサービスの実現と今後高齢化社会に向け他の福祉サービスにも参考になればと思い提案をさせていただきました。区長のお考えをお聞かせください。

以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。