令和7年豊島区議会第三回定例会一般質問
「誰もが安心して暮らせる持続可能な地域社会の実現に向けて」

公明党区議団 幹事長 西山陽介
令和7年9月24日登壇

公明党区議団を代表し、「誰もが安心して暮らせる持続可能な地域社会の実現に向けて」と題し、1.令和6年度決算について、2.保健・衛生政策について、3.子ども・若者政策について、4.福祉政策について、5.環境政策について、一般質問を行わせていただきます。

区民生活を取り巻く環境は依然として厳しく、物価高騰や少子高齢化の進展、社会の急激な変化により、多様で複雑な課題が顕在化しております。こうした時代の中で、豊島区は、国や都の施策を先取りし、時代を見据えた先駆的な取り組みを重ねてまいりました。

区民の皆さまの暮らしを守り、誰もが安心して未来に希望を持てる、誰一人取り残さない持続可能なまちづくりを進めるために、これからの施策の充実に向けて、いくつか提案を交えながら伺わせていただきます。

1.初めに、令和6年度決算について伺います。

まず昨年度の特徴と言えますのが、高際区長として初めて予算編成され、その予算が執行された決算であり、中でも最大事が、新たな基本構想、基本計画を策定され、高際区政が本格始動された一年であったと振り返ることができます。

私ども公明党区議団としても、区政の新たな方向性が打ち出された一年であったと受け止めつつ、区民生活に直結する視点から、以下3点について伺います。

1点目は令和6年度決算の総括についてです。

令和6年度決算では、一般会計歳出決算額1,497億円、前年度比3.9%の増加となり、定額減税調整給付や非課税世帯への給付金に加え、物価高騰に苦しむ事業者への支援など、区独自の施策が展開されました。さらに、出産費用の実質無償化やスポーツ施設の子ども利用料免除、「おたっしゃカード」の拡充など、区民の声を反映したきめ細やかな施策が実施された点は大いに評価します。

健全財政を維持しながら、物価高騰対策や子育て支援など区民生活に直結する施策を進めていただいたことに、まず敬意を表します。

そこで伺います。施策の成果と課題を区としてどのように整理し、今後の財政運営にどのように生かしていかれるのかについて、決算の総括的な所見を伺います。特に、物価高騰対策や子育て支援、高齢者福祉といった区民生活に直結する分野における整理についてお示しください。

 

2点目に区の価値向上と持続可能な財源確保についてです。

令和6年度の歳入決算額は1,545億円、前年度比4.9%増となりましたが、その背景には一時的要素も多く含まれています。経常収支比率も81.7%と上昇し、財政の硬直化が懸念される中、区民サービスを維持・向上していくためには、安定した自主財源の確保が不可欠です。

そのためには、単に歳入を補う発想だけでなく、区民や企業が「豊島区に住み続けたい」「豊島区で事業を展開したい」と思えるような、まちの価値向上こそが重要ではないかと考えます。

今後10年を見据えた新たな基本構想・基本計画には、「誰もが安全・安心して暮らせるまち」「子どもと女性にやさしいまち」「文化とにぎわいにあふれるまち」といった将来像が示されています。これを着実に実現していくことが、結果的に人口定着や企業誘致、交流人口の増大につながり、持続可能な財政基盤を形づくるものと確信します。

そこで伺います。区長は、区の価値をさらに高め、区民や企業に「選ばれるまち」として持続可能な発展を遂げるために、今後どのような重点施策を展開されるお考えか、お聞かせください。

 

3点目に教育投資・子育て世代支援の充実についてです。

令和6年度事業では、出産費用の実質無償化や子ども向けスポーツ施設利用料の免除、学校改築を進めるための公共施設更新計画の策定など、子育て・教育分野で先駆的な取組が実施されました。これらは区民からも大きな評価を得ているところです。

一方で、児童相談所の体制整備や職員の増員などに伴い、人件費は大幅に増加しています。また、学校改築や教育環境整備は今後数十年にわたる巨額の投資を必要とし、持続可能な財政運営の中でどう位置付けるかが問われています。

そこで伺います。区長は、教育への投資を「将来世代への最大の先行投資」と位置付ける観点から、学校改築や豊島区ならではの特色ある教育・子育て環境をどのように進め、同時にどのようにして財政面での持続可能性を確保していくのか、ご所見を伺います。

 

2.次に、保健・衛生政策より、住宅宿泊事業、いわゆる民泊について伺います。

本区における住宅宿泊事業の届出住宅数は、区資料によると平成30年の条例制定から8年目で 1,682件 に達し、23区内では新宿区・墨田区に次いで3位、全国でも5位の規模となっています。利用者数も増加を続け、観光需要の一翼を担っている一方で、区民生活との摩擦も顕在化しています。

実際、区にはこれまで 500件もの苦情・相談が寄せられ、内容は「騒音」「ゴミ出し」「標識不備」「緊急連絡がつながらない」「タバコ」「宿泊者確認を行っていない」など、住環境や安全安心に直結するものが多数を占めています。

区が6月に実施した町会長アンケートでも、「民泊施設を起因としたトラブル」は約7割の回答があり、半数以上が「生活環境が悪化した」と認識していることが明らかとなりました。

こうした状況を踏まえ、区は9月9日に住宅宿泊事業にかかわる条例改正等検討会を設置し、生活環境の悪化を防ぐために、区域や期間の制限を設ける必要性を示されました。

まず、区長は現在の民泊をめぐる状況をどのように総括しておられるのか伺います。

次に、法と条例の実効性について伺います。

住宅宿泊事業法や現行条例では、事業者に「苦情対応」「対面による宿泊者確認」「30分以内に現場で対応」などを義務付けていますが、実際には履行されていない事例が後を絶ちません。このままでは「制度と実態の乖離」が拡大し、まじめに運営している事業者までが不信を招きかねません。

改善命令や業務停止命令を含めた、厳格かつ迅速な行政指導の強化が不可欠と考えますが、区の方針を伺います。

さらに、今回の条例改正の方向性についてお聞きします。

民泊に起因する生活環境の悪化防止に対して、区域や期間の制限、また周辺住民の同意や事前説明会の義務化など、合意形成を担保する仕組みの検討内容と、あわせて説明会や協議の場を「形骸化させない」実効性をどう確保されるのか。さらに、ルールを守って地域と共存している優良事業者を守るための仕組みについても検討状況を伺います。

区に求められるのは、観光振興も住環境を守ることも大切なことであり、「観光と生活の調和」を実現することだと考えます。区民の信頼を取り戻すためにも、条例改正にとどまらず、行政指導の運用強化と地域合意を重視した実効性ある制度設計を求め、区長の見解をお聞かせください。

 

次に区内繁華街におけるネズミ被害対策について質問いたします。

近年、区民や事業者の皆様から「ネズミの被害が増えている」との声が数多く寄せられています。特に池袋西口地区においては、商店街歩道上の植栽に巣をつくり、昼夜を問わず目撃されるなど、衛生面で深刻な懸念が生じています。私のもとにも、地域の皆様から直接の陳情がございました。

ネズミは、飲食店からの残飯やゴミにより繁殖しやすく、また樹木の根元や排水溝など、都市環境の隙間を利用して生息域を広げるといわれています。衛生害虫や感染症の媒介となるリスクもあり、地域の安全・安心な暮らしを守る上で、軽視できない課題であります。

既に千代田区などでは、区が積極的にネズミ対策に取り組み、地域や専門団体と連携して駆除・防除を進めていると聞いております。こうした先行事例を参考にしつつ、本区としても実効性ある対応が急務であると考えます。

そこで伺います。現在のネズミ被害について、どのような対応を行っているのか、まずお示しください。

特に池袋西口をはじめとする繁華街エリアでのネズミ対策について、商店街や地域住民との連携をどのように構築していくのか、お聞かせください。

千代田区など他自治体での取組事例を参考に、ネズミの温床となりやすい環境改善を、街づくり・環境衛生の観点から進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

 

次に健康施策として、「誰もが安心して暮らせる、としまモデル」の構築について質問いたします。

区長はこれまでも「子どもと女性にやさしいまちづくり」を掲げ、さらに「防災に強い区政」をリーダーシップをもって推進されてきました。私は、この方針を医療・福祉政策に重ね合わせることで、「誰もが安心して暮らせるとしまモデル」を全国に先駆けて示すべきと考えます。

まず在宅医療の観点です。

豊島区医師会からは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために欠かせない「在宅医療24時間体制の推進」が掲げられています。さらに、豊島区看護師会からも、令和8年度から区独自事業として「在宅医療推進強化事業」を実施するよう強い要望が出されています。

この事業は、豊島区医師会が運営する「池袋休日診療所」の在宅医療担当医師と、豊島区看護師会の看護師が連携し、夜間・休日に在宅患者の急変に対応するものです。看護師はファーストコールを担い、医師に代わって初期対応を行う極めて重要な役割を担います。

ICT・DXを活用した電子カルテの情報共有やタブレット端末を通じた連携も取り入れれば、全国に先駆けた在宅医療モデルの構築につながると考えます。

本区における「在宅医療24時間体制の推進」について、ご見解をお聞かせください。

次に、防災対応の観点です。

災害時には医療機関の休診や救護体制の混乱が想定されます。在宅医療で培ったICTネットワークや、医療・看護の連携体制を防災時にも活用することで、「平時にも有効、災害時にも役立つ医療インフラ」を構築することが可能です。これを医療DX基盤として整備し、被災時の医療情報共有や救護活動につなげるべきと考えますが、ご見解を伺います。

さらに、子育て世代・女性の安心という視点です。

在宅医療相談窓口を子育て世代にも開放し、発熱や体調不良の際に「すぐに相談できる」体制を築くことは、子育て世代の医療不安を軽減します。また、妊婦への予防接種支援の充実も重要です。これらを在宅医療体制の中に位置づけることで、子どもと女性にやさしい仕組みづくりが一層進むのではないでしょうか。

また、地域包括ケアシステムの機能強化については、高齢者支援にとどまらず、子育て・女性・災害弱者も支える「地域の安心の仕組み」として、ICTを活用した包括的支援体制を強化していくことが必要です。

豊島区は、在宅医療の充実、子どもと女性にやさしい施策、そして防災に強い体制を ICT・DXを結節点として統合できる大きな可能性を持っています。まさに「健康寿命の延伸」「災害時の医療確保」「子育て世代の安心」を三本柱とする、としま発・誰もが安心して暮らせるとしまモデルを全国に先駆けて築いていただきたいと考えます。本区の力強いご決意を伺います。

 

3.次に子ども・若者政策についてです。

はじめに子どもに関する取組より、「保育園の預かり時間に関する豊島区の運用改善」について質問いたします。

以前、子育てに奮闘している区民の方からつぎのような陳情を受けました。

2歳の息子と3か月の娘を持つ父親からで、母親は育児休業中であります。息子は保育園に通っていますが、母親が育休中であることから、保育時間が9時から17時の間と短縮されました。

しかし、現実には母親は乳児を抱えており、朝夕の送迎は極めて困難です。これまで父親が送迎を担っていましたが、保育時間が制限されることで、勤務に大きな支障をきたしています。この問題は園の都合ではなく、区のルールに起因していると考えられます。

他自治体では、フレキシブルな判断により、就労形態が不安定な方や在宅勤務が多い方についても柔軟に受け入れる例が見られます。

文京区では育児休業中でも、兄姉の送迎困難など家庭の事情を総合的に考慮して、時間短縮を柔軟に運用。杉並区では保育理由を形式的に区分するのではなく、世帯全体の養育実態を踏まえて、保育時間を決定。横浜市では育児休業中の家庭でも「兄弟児の保育継続性」を重視し、長時間保育を認めるケースもあります。

これらは「子どもの最善の利益」を第一に考え、家庭の実情を踏まえた対応といえます。本区においても、労働の有無のみならず家庭の実情を踏まえた総合判断をすべきではないでしょうか。

そこで伺います。兄弟児送迎の困難性への配慮として、乳児を抱える母親が雨天時に2歳児を連れて通園することの困難さなどを踏まえ、「安全確保」の観点からも、家庭の実態を踏まえ、必要があれば標準時間相当で利用できるよう、今後の「保育の預かり時間の運用」について、柔軟な対応を認めることをぜひ検討していただきたいと思いますが、ご見解を伺います。

延長保育は本来、必要に応じて利用できる制度のはずです。国基準上も「保育の必要性」は単に就労の有無だけでなく、疾病・介護、ひとり親世帯、あるいは家庭での養育困難など、家庭状況全体を勘案すべきとされています。本来の制度趣旨に沿って、延長保育は必要に応じて利用できるようにするなど、運用を見直せないでしょうか。

今回の件は、予算制約によるものではなく、区の運用次第で直ちに改善できる課題です。子育て家庭の安心を支える施策へと転換していただくことを要望いたします。

 

次に区民の切実な声を受けまして「保育園の入園・転園の改善」について質問をいたします。

先日3歳と1歳のお子さんを育てているご家庭から、次のようなご相談をいただきました。「0歳児の子は希望園に入園できたものの、2歳児は枠が少なく兄弟別園となりました。夫婦で協力して何とか送迎してきましたが、今年度も兄弟同園が叶わず、しかも昨年より遠い園になり、負担が大きくなっています。兄弟加点をもっと強めてほしい、小規模園からの転園加点と兄弟加点を重ねて認めてほしい。来年度以降、同じような家庭が困らないよう検討していただきたい」。こうした声は、このご家庭に限らず、他にも多くの子育て世代から届いている課題であります。

豊島区の入園選考は「指数・調整指数」によって公平性を担保しています。しかし、兄弟別園となった場合の家庭の負担は極めて大きいにもかかわらず、兄弟加点の効果が十分に働かない。特に小規模保育園からの転園時は、卒園加点がある一方で「兄弟同園」という観点が十分に反映されず、結局、兄弟別園が解消されないケースが続出しています。結果として、制度の趣旨である「家庭の養育環境に配慮する」観点と、子育て世帯の実態との間に乖離が生じています。

そこで以下の改善を提案いたします。

現在の加点では効果が不十分であり、実際には兄弟別園が常態化しています。家庭負担を軽減するため、加点の幅を拡大することを検討すべきです。

また小規模園からの転園に際し、卒園加点と兄弟加点を重ねて認める仕組みに見直すべきです。他自治体では、兄弟加点を優先して適用する運用も見られます。本区も柔軟な対応が可能ではないでしょうか。

待機児童対策では年度当初に「定員以上」の受け入れを行う園もあると伺っています。であれば、年度途中で1名でも欠員が生じた場合、兄弟同園を希望する家庭を優先的に受け入れる弾力運用を認めるべきです。これは枠を増やすというより「既存の枠の運用改善」であり、区の負担増には直結しません。

区民が切実に求めているのは「公平でありながらも、現実的な家庭負担に寄り添う制度」です。豊島区の未来を支える子育て世帯にとって、兄弟別園が続くことは、仕事と育児の両立を大きく妨げる深刻な問題であります。

そこで伺います。区として、兄弟加点の強化について検討する考えはありませんか。

小規模園卒加点と兄弟加点を重ねて評価する仕組みへの見直しを検討できないでしょうか。

年度途中での転園について、柔軟に兄弟同園を優先する運用を取り入れる考えはありませんか。

以上、区の見解を伺います。

 

次に若者世代への支援を取り上げます。

現在、区内において主に20代・30代の若者世代は多数居住し、豊島区の活力を支えております。若者は税や社会保険料を通じて社会を支えていますが、同時に就労・住宅確保・人間関係の希薄化・健康問題など、さまざまな課題に直面しています。

ともすると行政サービスから若者世代は、支援の網からこぼれ落ちやすい現状にあります。これは将来的に地域社会とのつながりを持てない世代を増やし、孤立や未婚化・少子化にもつながりかねません。

この「若者世代の孤立感」や「将来不安」を和らげ、安心して学び、また働ける環境を整えることは、地域社会全体の活力を高めるためにも重要な課題です。豊島区として、若者が安心して生活し、夢や希望を持てる社会環境を整えることが喫緊の課題であると考えます。

このような状況の中で、困難や不安を抱える若者や女性を支えるNPO法人が、居場所づくりや相談機能を持ち、本区が支援する形で若者支援として一定の成果を出していただいております。

そこで若者世代への支援として注目が高い、奨学金返済応援について質問します。

若者世代の中でも特に深刻なのは、奨学金返済の負担です。学びを終えて社会に出た後も、毎月の返済に追われ、結婚や出産、住宅取得などライフイベントの選択を躊躇せざるを得ない若者も少なくありません。

このほど政府が新たに返済支援策の強化に踏み出していることが報じられました。今後は国としての取り組みが一層進むことが期待されますが、基礎的自治体としても若者の不安を軽減する支援が、さらに求められるのではないでしょうか。

すでに複数の自治体では、奨学金返済を独自に支援する施策が始まっています。大田区では、人材確保が厳しい区内中小企業等への就職を促すために、区内在住・在勤で奨学金の返済を抱えている就業者を支援。長野県中野市では、市内中小企業等への就職者を対象に、返済支援と地域雇用促進をセットで実施しています。

いずれの事例も、単なる金銭的援助にとどまらず、若者の定住促進や地域活性化と結びつけている点に特色があります。

豊島区は若者人口比率が高く、大学や専門学校も多く集積する地域です。奨学金返済支援は、まさに区の将来を担う若者の安心とチャレンジを後押しする政策になり得ると考えます。

例えば、区内中小企業やスタートアップに就職する若者を対象に返済支援を行い、地域産業の担い手を確保する。子育て期の世代に対して返済軽減を組み合わせ、安心して家庭を築ける環境を整える。また学び直し(リスキリング)に取り組む社会人への支援を加え、キャリア形成の応援につなげる。若手社会人に向けて「地域貢献活動と支援制度」を結びつける。そして地域活動やボランティアに参加することで奨学金返済の補助を受けられるような仕組み、といった豊島区ならではの視点で展開できるのではないでしょうか。

そこで伺います。若者世代が直面する生活課題、とりわけ奨学金返済の負担について、区としてどのように認識されていますか。

他自治体で進む奨学金返済支援について、豊島区として調査・研究を行い、区独自の仕組みを導入することをご検討いただけないでしょうか。

若者が「奨学金の返済があるから夢をあきらめる」のではなく、「区が応援してくれるから挑戦できる」と実感できるような環境づくりを、豊島区から積極的に進めていただきたいと思います。

 

4.次に福祉政策より、初めにヒアリングフレイル対策事業について伺います。

本区では、平成30年度から補聴器購入費助成を開始し、さらに令和2年度からは、講演会やスクリーニングを組み合わせたヒアリングフレイル対策事業を実施されております。難聴は、高齢者の社会参加の低下や認知症のリスク要因とされる大きな課題であり、いち早く対策に取り組んでこられたことは、大変意義深く、高く評価するものであります。

一方で、近年の実績を見ますと、講演会や相談会の参加者数は減少傾向にあり、またスクリーニングを受けた方のうち、医療機関への受診が6割程度にとどまっております。

また区民へのアンケートでは補聴器購入費助成について、「助成額の拡充」や「2回目以降の助成」「購入後のアフターケア体制の充実」といった要望が数多く寄せられているとのことです。実際、他の自治体では、助成額を本区よりも手厚く設定したり、「5年ごとに助成を受けられる」制度設計を行っている例も見られます。

こうした状況を踏まえ、以下の点についてご見解を伺います。

第一に、普及啓発の強化についてです。これまでの講演会に加え、区民ひろばや各種イベント、文化施設など、区民が日常的に集う場に出向いた相談・啓発を進めることで、より幅広い層への浸透が期待できると考えますが、いかがでしょうか。

第二に、補聴器購入費助成制度の拡充についてです。利用者の声や他区の状況を踏まえ、助成額や利用回数の柔軟化など、制度の見直しを検討していただけないでしょうか。

第三に、アフターケア体制の充実についてです。補聴器は購入後の調整や相談が欠かせません。補聴器相談医や認定補聴器技能者との連携をさらに強め、利用者が安心して長期にわたり活用できる体制を整えることが必要と考えますが、ご見解を伺います。

次に、高齢者のフレイル予防と社会参加の促進について伺います。

高齢社会の進展に伴い、区民が住み慣れた地域で自立した生活を続けられるようにするためには、健康寿命の延伸とフレイル予防が一層重要となります。本区では既に「ヒアリングフレイル対策事業」や「おたっしゃカード」の拡充など、多様な施策を展開されており、着実に成果をあげていると承知しております。

一方で、難聴は認知症や社会的孤立につながる大きなリスク要因とされており、フレイル予防と社会参加を進めるうえで、聞こえの支援は欠かすことのできない基盤であります。特に、補聴器を装用するほどではない軽度難聴や加齢性難聴の方に対しては、これまでの制度の狭間に置かれがちで、支援が十分に行き届いていないのが実情です。

その点で、区役所窓口などに導入されている「軟骨伝導イヤホン」は、職員との会話補助に効果が発揮されていると思います。補聴器と比べれば安価に入手でき、日常会話の円滑化や孤立の防止に寄与するほか、転倒予防や災害時の呼びかけにも有効とされる、まさに「生活を支えるセーフティーアイテム」であります。

そこで伺います。この軟骨伝導イヤホンなどの新しい支援ツールを、フレイル予防の観点から社会参加を後押しする手段のひとつとして、区民ニーズの把握や体験機会の提供など、段階的に活用を広げていく可能性について、どのようにお考えでしょうか。

ぜひ、本区ならではのフレイル対策をさらに発展させ、誰もが安心して地域で暮らし続けられる仕組みづくりを進めていただくことをお願い申し上げます。

 

5.次に、環境政策の観点から、リチウムイオン電池の安全回収体制について伺います。

区民の安全・安心な生活を守る上で、廃棄物処理に伴う火災リスクの低減は極めて重要であります。本区でも、8月16日にごみ収集車両が火災を起こす事案が発生し、原因はリチウムイオン電池などの二次電池類と推定されています。現場の職員の皆様が大変な危険に直面されたことは記憶に新しく、再発防止に向けた取組は喫緊の課題であります。

全国的にも、モバイルバッテリーなどのリチウムイオン電池による火災は急増しており、都内では今年上半期だけで143件、過去最多となっています。こうした中、環境省は4月に「二次電池の安全な処理体制の構築」を求める通知を出し、政府も来年4月からモバイルバッテリー等の回収・リサイクルを事業者に義務付ける方針を固めたところです。すでに町田市では、集積所での定期回収を実施し、区民が気軽に排出できる体制を整えています。

本区は人口密度が高く、集合住宅や繁華街も多いという特性から、二次電池類の不適切な排出が火災につながるリスクは、他区以上に高いといえます。現状では、区民が「面倒だから」と一般ごみに混入してしまうケースもあると聞いております。防災・安全の観点からも、区民が正しく分別・排出できる体制を整えることは急務です。

そこで伺います。区として、今回の火災事案をどのように受け止め、再発防止に向けてどのような対策を講じていくのでしょうか。

また、区民が手軽に排出できる体制の整備については、まさに「集積所での回収体制」が有効な方策であり、実現すれば正しい排出を促進し、火災リスクを大きく減らすことにつながります。この点について、区の検討状況と今後の方向性をお聞かせください。

さらに、家電量販店やドラッグストアなど民間事業者との連携による回収拠点の拡大や、区民への周知啓発についても、火災事例や国の新方針を背景に、「正しい排出が自らの命と財産を守る行動につながる」ことを強く訴えていく必要があると考えますが、区の見解を伺います。

リチウムイオン電池の回収体制整備は、防災・安全・環境にまたがる重要課題であり、国も事業者も制度整備に踏み出しています。本区においても、区民が手軽に正しく排出できる体制の実現に向けて、一層前進されることをお願い申し上げます。

結びに、区民一人ひとりの声に寄り添い、豊島区が「誰一人取り残さない」まちとしてさらに発展し、子どもから高齢者まで全ての世代が笑顔で暮らせる地域社会を築いていくことを心より願い、私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。