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平成27年9月28日登壇

 

平成27年 第三回定例会 一般質問

 

公明党  西山 陽介

 

私は公明党区議団を代表して「子どもやお年寄りが、安心して暮らせる豊島区を目指して」と題し、1.今後の福祉をめぐる諸課題について、2.介護保険制度について、3.子どもの貧困対策とひとり親家庭への支援について、4.教育の課題について一般質問をさせていただきます。

はじめに、今月10日関東・東北地方を中心に降り続いた大雨の影響で、増水した鬼怒川の一部堤防が決壊するなど、甚大な被害が発生しました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われたすべての方々に、心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復旧・復興を願っております。

我が国は人口減少・少子高齢化が進展し、地域経済の活性化が待ったなしとなる一方、地域の経済を支えるにも、厳しい国際競争を勝ち抜くにも、基盤となるのは人材です。地域において、女性や若者が活躍し、活力ある社会を築いていくことが地方創生の鍵であり、社会のあらゆる分野で活躍する人材を育成していくことが日本と地域発展の礎ともなります。

こうした視点に立って、公明党は、地域に根を張る政党として、生活者の目線に立って地域や現場の声を大切にしつつ、福祉、子育て支援と教育、健康、安全・安心のまちづくりや持続可能発展都市を目指して、これからもわが会派の提言を十分反映させたうえで、着実な実施を強く望むものであります。

 1項目目として、今後の福祉をめぐる諸課題について質問します。

 日本創成会議が「消滅可能性都市」に続いて公表した「東京圏高齢化危機回避戦略」にも強調されているように、今後の人口減少社会の中で、高齢者をめぐる課題は一刻の猶予も許されません。また、社会全体の高齢化がすすむ中、例えば障がい者も相対的に高齢化がすすみますし、その将来を思う家族も高齢化しております。

 年齢を重ねることは、自然の成り行きではありますが、いかに心と体の健康寿命を延ばしていけるか、そのために自治体としての公助はどうあるべきか、より弱い立場にある人にどう手を差しのべられるか、常に福祉の視点が問われていると考えさせられます。

はじめに高齢者の見守りについてお尋ねいたします。

この夏、隣の板橋区で、高齢の三姉妹が熱中症でそろって亡くなるという大変痛ましい事件がありました。三姉妹は90歳、86歳、82歳で、夫と死別するなどして、10年前から同居していたということであります。

一人暮らし高齢者の多い豊島区では、これまで一人暮らし高齢者の見守り等を充実させてきていますが、支援が必要な方はなにも一人暮らしとは限りません。高齢の親と知的障がいの子どもの世帯など、複雑なケースも増えてきています。支援が必要でありながら区が把握できていない方もいらっしゃるのではないかと思います。

5万人を超える高齢者のすべてに対応するのは容易ではないでしょうが、まずは各世帯の実態を一度確認する必要があるのでないでしょうか。もちろん、現在でも多大な尽力をいただいている民生委員さんにすべてを回っていただくのは困難ですので、業者委託等による方法も考えられます。

高齢者全員の実態調査の実施を提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

 

【区長答弁】

ただいまの西山陽介議員のご質問に対しまして、お答え申し上げます。

今後の福祉をめぐる諸課題についてのご質問のうち、まず、高齢者全員の実態調査の実施についてのご質問にお答えいたします。

一人暮らし高齢者の多い本区においては、以前から一人暮らし高齢者の見守り対策を重視してきており、75歳以上の一人暮らし高齢者のうち、介護サービスを利用していない方等を対象に、3年に1回の高齢者実態調査や、年1回の熱中症予防訪問を実施しています。しかし、支援が必要なのは一人暮らしの方ばかりではなく、複数の困難な課題を抱える複雑な家庭なども増えてきています。

このような状況の中で、ご提案のような高齢者全員の実態調査を実施する意義は、大変大きいものと考えています。

条件を絞らないことにより、これまで把握できなかった隠れた要支援者を発見し、早期の対応につなげることができます。また、調査を通じて、全体の状況を把握することにより、今後のより効果的な施策につなげられる可能性があります。

かなりの費用が掛かることが想定されることから、調査の対象や方法については精査が必要ですが、来年度から実施すべく精力的に検討してまいります。

 【西山質問】

さて、高齢者の見守りの核となるのは、区内に8か所ある高齢者総合相談センターです。高齢者が増加を続ける中、特に圏域内の高齢者人口の多いセンターにはこの4月から職員が増員されるなど、体制強化が図られたところです。しかし、各センターに2名ずつ配置されている見守り支援事業担当についてはそのままで、かなり負担が大きくなっている現状があります。

また、高齢者全員の実態調査を実施したら、当然それに応じて支援をしていく必要があり、見守り支援事業担当の強化が必要と考えます。見守り支援事業担当の増員を図るべきと考えますが、お考えをお聞かせください。

 

【区長答弁】次に、見守り支援事業担当の増員についてのご質問にお答えいたします。

本区では、民生委員や区民ひろばの見守り活動協力員をはじめ、多くの地域の皆さんに見守り活動にご協力いただいていますが、その中の核となるのが、高齢者総合相談センターの見守り支援事業担当です。

見守り支援事業担当は、高齢者の見守り対策を強化するため、各センターに2名ずつ配置していますが、高齢者数が増加するとともに、認知症をはじめ対応困難な事例が増えている中で、かなり負担が大きくなってきているのが実情です。

今後、高齢者総合相談センターの果たすべき役割はより一層増大していくと考えられることから、財政状況を勘案しつつ、見守り支援事業担当の強化はもとより、高齢者総合相談センター全体の充実を図ってまいります。

【西山質問】

高齢者総合相談センターと民生委員さんとの連携も非常に重要です。現在、高齢者総合相談センターの圏域は8つ、民生委員・児童委員協議会は6つの地区に分かれており、圏域にズレが生じています。民生委員さんとセンター職員が連携して対応することがあると思いますが、一人の民生委員さんの担当地区が複数の高齢者総合相談センターの圏域にまたがっているため、連携がとりにくい状況が発生しています。

センターと民生委員さんとの連携をよりスムーズにするためには、高齢者総合相談センターの圏域を見直していく必要があろうかと考えますが、いかがでしょうか。

 

【区長答弁】次に、高齢者総合相談センターの圏域の見直しについてのご質問にお答えいたします。

 

高齢者総合相談センターと民生委員との連携は大変重要で、高齢者の見守り活動においても、両者の協力により多くの問題解決が図られてきています。一方、両者の圏域にずれが生じていることから、連携がとりにくい事例も発生しています。

また、高齢者総合相談センターは高齢者の身近な相談窓口として地域に定着してきており、その圏域を変えることについては、地域に少なからず影響があると考えられることから、慎重な対応が必要でもあります。

そうしたことから、これまでの保健福祉審議会での議論等も踏まえ、関係者との調整を重ねつつ、時機を逸さず、高齢者総合相談センターの圏域を見直してまいります。

 

【西山質問】

また、高齢者総合相談センターと民生委員さんが連携していくためには、情報の共有も重要です。現在は、民生委員さんが日常的に活用できる名簿がなく、連携が取りづらいというご意見を伺いました。個人情報保護の観点もあり、高齢者全員というわけにはいかないでしょうが、特に支援が必要な方等に関しては、センターと民生委員さんで共通の名簿を活用して対応できたらいいのではないでしょうか。

課題はあろうかと思いますが、災害時要援護者名簿の平常時版のような名簿を作成して、高齢者総合相談センターと民生委員とで共有できれば、より一層の見守り支援につながるのではないでしょうか。お考えをお聞かせください。

【区長答弁】次に、高齢者総合相談センターと民生委員で共通の名簿を活用することについてのご質問にお答えいたします。

高齢者総合相談センターと民生委員は、日頃からさまざまな形で連携していただいていますが、個人情報保護の観点もあり、日常の見守り活動等において活用できる名簿は作成していません。一方、世帯の状況も多様化している中で、実態把握が困難な状況も発生しています。

ご提案の名簿の共有につきましては、名簿登載を希望しない方も少なからずいらっしゃることや、名簿の管理等、いくつか課題もありますが、見守り活動の充実を図る上では、大変効果的な方策であると考えています。

今後、災害時要援護者名簿の例等も踏まえ、名簿登載の範囲や管理方法などについて検討を進め、来年度中の実現を図ってまいります。

【西山質問】

一方、見守りは専門家の方たちだけで足りるものではありません。区ではさまざまな関係者が協力して見守りと支え合いネットワークを構築しておりますが、地域の皆様の日頃からの気付きということが非常に重要です。現在もさまざまな声が高齢者総合相談センターには寄せられていると思いますが、日常生活の中でのちょっとした気付きをそのままにしないことが大事です。

高齢者の相談窓口として高齢者総合相談センターはかなり定着してきていると思いますが、それでもまだご存じない方も少なからずいらっしゃいますし、気付きの内容は高齢者だけとは限りません。どこに連絡していいか分からないために放置されてしまうようなことは、絶対に避けなければなりません。

高齢者・障がい者・子ども等に分けずに、異変に気づいたらここに連絡すればいいという分かりやすい通報窓口を設置すべきと考えますが、いかがでしょうか。

また、通報窓口を周知するとともに、積極的な通報を呼びかけるべきと思いますが、お考えをお聞かせください。

【区長答弁】次に、高齢者・障害者・子ども等に分けない通報窓口の設置及び周知等についてのご質問にお答えいたします。

地域の皆さんの日頃からの気付きはとても貴重で、高齢者の異変等に気づいた時に通報しやすい環境を整えていくことは、大変重要であると考えています。

高齢者に関する拠点としては、高齢者総合相談センターが地域にかなり定着してきており、高齢者や地域の方から、日常的にさまざまな相談や情報が寄せられています。一方、これまで全く接点がなかった方にとっては、まだまだ馴染みのない施設でもあります。

ご提案の高齢者・障害者・子ども等に分けないわかりやすい通報窓口を設置することにつきましては、通報しやすい環境を整える上で大変効果的な方策であると受け止めています。今後、課題を整理し、速やかな実現を図ってまいります。

また、設置に当たっては、広報としま等で十分に周知し、積極的な通報を呼びかけてまいります。

 【西山質問】

次に司法と福祉の連携について質問します。

 法律の専門家に頼ることが難しい認知症高齢者や知的障がい者らを支援するため、司法と福祉の関係機関が連携する動きが広がっています。

高齢者や障がい者が、詐欺被害や多重債務などのトラブルを抱えていても、的確な状況判断ができず、ご自身で専門機関に相談できないケースは少なくありません。

認知症の高齢者や知的障がい者は、意思の疎通が難しかったり、トラブルに巻き込まれていること自体を意識していない場合が多いと考えられます。福祉と法律の問題が複雑に絡み合い、弁護士や司法書士の手助けがなければ解決できない状況でも、自分で救済を求められないこともあります。

トラブルの早期解決のためには、福祉関係者が高齢者・障がい者の問題を把握し、公的な法律相談窓口の法テラスなどの関係機関と連携して対応することが欠かせないと考えます。こうした取り組みは「司法ソーシャルワーク」と呼ばれ、各地で広がり始めています。

司法の相談窓口にたどり着けない人たちを支援するためには、弁護士らが福祉機関へ出向いて情報を共有したり、直接訪問して相談に乗る対応が有効です。全国各地の法テラス事務所では自治体などと協力して、弁護士の福祉機関への派遣や、出張法律相談に乗り出しているところもあります。

法テラス東京と東京都新宿区では、昨年1月に協定を締結し、地域包括支援センターと区の高齢者相談係に法テラスのスタッフ弁護士が週に1回程度常駐する体制を構築しました。相談件数は昨年4月から12月までで400件を超え、弁護士による出張法律相談がきっかけとなり、多額の借金と家族からの身体的虐待を受けていた認知症高齢者の問題解決に結びつけた事例もあると聞いています。

法テラス埼玉では、さいたま市と協議し、福祉事務所を法テラスの巡回相談場所としています。

アウトリーチ(訪問)型の法律サービスが必要な高齢者・障がい者が無料で法律相談を受けられるよう、本区においても司法と福祉の連携として、その体制整備を図るべきと考えますが、お考えを伺います。

 

【区長答弁】次に、司法と福祉の連携として、その体制整備を図ることについてのご質問にお答えいたします。

社会が複雑化し、高齢者や知的障害者で、詐欺被害や多重債務などのトラブルを抱える方は増えてきています。

高齢者総合相談センターにもさまざまな相談が寄せられており、各センターでは状況に合わせ、消費生活センターや弁護士等と連携しながら対応してきています。社会福祉協議会「サポートとしま」の専門相談の活用のほか、昨年度からは「法テラス東京」にご協力いただき、随時電話相談を受けてもらえる体制も整いました。

今後も専門的な対応が必要な方がさらに増加してくることも見込まれることから、ご指摘の趣旨も踏まえ、司法との連携を積極的に推進してまいります。

【西山質問】 

身寄りのない一人暮らし高齢者からの声です。

普段は独力で生活しているが、いざ急病となって入院しようにも、病院側は保証人を立てるよう求めてきます。経済的な生活資金があったとしても、保証人の問題で入院がかなわない場合があります。こういう場合、どうすればいいのか、入院は医師の判断であるにもかかわらず、入院治療を諦めなければならないことはなんともやりきれません。

こういう時こそ、公が、身近な自治体が支援する仕組みが求められてくると思いますが、真に身寄りのない高齢者の支援について、区の対応を伺います。

【区長答弁】次に、真に身寄りのない高齢者の支援についてのご質問にお答えいたします。

身寄りのない高齢者の場合、保証人を立てられないために、さまざまな制約を受けてしまう場合があります。判断能力が不十分な方のための制度としては成年後見制度がありますが、手術や入院の際の保証人にはなることができず、大きな課題となっています。

一方、民間の保証人代行サービス等も増えてきており、それらのサービスの活用により、解決する場合もあります。

一人暮らし高齢者の多い本区においては大変大きな課題であると考えていますので、全国の事例や民間サービス等を検証しつつ、真にお困りの方に対して、しっかりと支援してまいります。

【西山質問】

高齢患者の付添について質問します。

東京都健康長寿医療センターの調査で、通院する高齢患者の付添を困難と感じる人が48%に上ることが分かりました。付添者の半数は就業しており、仕事を休むのが難しい事情があります。

付添が必要な理由は、一人で移動することが難しい、認知症や耳が不自由といった理由から、医師との意思疎通に不安がある。親族以外の付添者でボランティアなどの利用は5%にとどまっています。

今後高齢化の進展に伴い、自力での通院が困難な患者は今後、増え続けるとみられます。

この通院の付添を支援する仕組みを整える必要があると考えますが、ご見解をお聞かせください。

【区長答弁】次に、通院の付き添いを支援する仕組みについてのご質問にお答えいたします。

地域包括ケアシステムの構築を進めるにあたり、高齢者の在宅での暮らしを可能とするため、単身高齢者の多い本区では、通院における付き添い支援は重要な課題であると認識しております。

現在、リボンサービスや知人の援助で通院しているという事情も伺っており、今後、区のサービスにおける位置づけについて検討する必要があります。

本区では、平成27年4月に生活支援コーディネーターを配置し、現在、生活支援サービスを構築する場となる「協議体」について検討を進めているところであります。この協議体はNPOや民間企業など様々な主体で構成され、生活支援サービスの担い手を養成・組織化するとともに、サービス提供者を実際に支援活動につなげていく機能を有し、制度の狭間のサービスを構築していくうえで重要なものであります。

通院における付き添い支援など、高齢者が在宅で暮らし続けるために必要な生活支援サービスについて、今後、協議体をはじめとする地域支援事業などにおいて検討してまいります。

【西山質問】 

次に施設という視点に立って質問させていただきます。

間もなく開設される「旧中央図書館」跡地に整備されます「東池袋桑の実園」の入居者の決定により、区の待機者の状況はどのようになるのでしょうか?

 また、この入居者選定の過程で、区が感じた豊島区の要介護者の状況など全般的な待機者の現状についてお答えください。

【区長答弁】今後の福祉をめぐる諸課題についてのご質問のうち、まず、東池袋桑の実園の入居者決定による区の待機者の状況についてのご質問にお答えいたします。

「千川の杜」特別養護老人ホーム入所決定後の今年6月末現在のAランク待機者は152名でありました。「東池袋桑の実園」の入所定員は86名、現在入所が決定しているのは半数程度で、残り半数は今後入所決定となる見込みであります。いずれの入所予定者も全員Aランクかどうかは不明でありますが、今回の開設により、緊急性の高い待機者は一定程度解消できると考えております。

しかしながら、本年4月の「千川の杜」の開設時もそうでありましたが、新規施設の開設によりこれまで申し込みをされていなかった方が新たに申請されるケースもありますので、全体の待機者数は大きくは減らないのではないかと考えております。

次に、入居者選定の過程での区が感じた待機者の現状についてのご質問にお答えいたします。

毎回とは言えませんが、入所者選定委員会には区職員がオブザーバーとして出席しております。詳細な状況把握は困難でありますが、全般的な状況としては、要介護3及び4の方が多くなり、今すぐの入所を希望される方はかなり減ってきています。また、入所の順番が来てもしばらくは在宅で頑張りたいという方も少なくなく、緊急性の高い方の需要は概ね応えられているものと考えております。

 

 【西山質問】

次に、区で検討の行われている豊島区外に特養ホームを整備することについて質問します。

これまで、豊島区は先ほどの東池袋、そして今年4月の千川と、区の東側・西側にそれぞれ特養ホームを整備し、区内に10か所の特養が整備できております。たいへんな努力を注がれたものと高野区長の福祉への思いを感じております。その高野区長をしても、この先の区内での整備は容易なことではないと判断せざるを得ないことは、まさに苦渋の決断であろうと思います。

 そこで質問します。本区の特養整備の状況は他区に比較して、どのような状況にあるのでしょうか? 客観的な指標に立って評価すべきと思いますが、どのように受け止めているのでしょうか。また、特養以外の老健やグループホームなどの状況についてもご説明を願います。

 

【区長答弁】次に、特養整備等の状況の、他区との比較及び客観的指標に立った評価についてのご質問にお答えいたします。

本区の特別養護老人ホームの整備状況については、高齢者人口に対する定員数という整備率の指標で見てみますと、「東池袋桑の実園」の86床を含むと1.34となります。調査時点のズレは多少ありますが23区平均は1.15であり、本区は上位5区に位置付けられるので、良好な状況にあると考えております。

 次に、特養以外の老健やグループホームの状況についてのご質問にお答えいたします。

老健施設については整備率が0.36となり23区平均の0.61に比べて厳しい状況でありますが、現在進められている南池袋4丁目の150床の老健施設が開設されれば、23区の平均0.6程度にはなるものと考えております。

また、グループホームについては現在13か所、定員157人となっていますが、整備率は0.28で、23区平均の0.35に比べ多少下回っております。

グループホームについては、300~500平方メートル程度の用地が確保できれば整備できますので、今後も更に整備が進むものと考えております。

【西山質問】

そのうえで、区外に特養が整備されることで懸念されること、つまりデメリットとして考えられるのはどのようなことか、また、そうした懸念を乗り越えるためにどのようなことを考えているのか、現時点での区の考え方をお聞かせください。

【区長答弁】

 次に、区外に特養が整備されることのデメリットとそれを乗り越えるための区の考え方についてのご質問にお答えいたします。

豊島区の高齢者の単身率の高さという特性を踏まえますと、地域包括ケアシステムの構築による在宅生活の支援を手厚く行った場合でも、入所型施設の代表である特別養護老人ホームの確保を外すことができません。遠隔地での入所により懸念されるのは、地域社会との関わりが薄れてしまうこと、また、孤立感を募らせ、生き甲斐の喪失といった状況になることも考えられます。

これを克服するためには、自治体間連携を推し進め、施設が地域の中で受け入れられ、様々なレベルで交流が活性化することが必要であると考えております。現在、秩父市と意見交換などをしている日本版CCRCのような交流が、特養ホームの周辺で実現すれば、孤立感の軽減につながるのではないかと期待されます。

【西山質問】

また、区としても十分に配慮されていることと思いますが、決して高齢者の意思を無視した入所であってはならないと思います。そうした意味では、私ども公明党が強く推進している地域包括ケアシステムと同じ方向を目指すべきと思いますが、この点もお答えください。

【区長答弁】次に、高齢者の特養入所にあたっては地域包括ケアシステムと同じ方向を目指すことについてのご質問にお答えいたします。

本区としては、これからも地域包括ケアシステムの一層の構築を図っていきますが、区外で特養ホームの整備を進める場合には当該自治体とも連携し、地域包括ケアシステムを共通の財産として活用する、その可能性について議論したいと考えております。

大切なことは、あくまでも地域包括ケアシステムの追求がベースにあり、これと矛盾しないかたちで区外における特養ホームのあり方を模索していくことであると認識しております。その意味でも、高齢者の意思に反した入所とならないよう十分に配慮してまいります。

【西山質問】 

そういった2025年を視野に入れた議論と併せて、当面の差し迫る課題への対応も重要と思います。

私の地元の養浩荘は、区内で最初にできた特養ホームです。すでに30年以上が経過しております。先日も、敬老祝賀会にお招きを受けましたが、施設スタッフの皆さんも、この老朽化には胸を痛めていると伺いました。

私は、昨年の第三回定例会の一般質問で、「既存施設の建て替えについて」と質問し、「防災目的で確保している約2000㎡の用地が、候補の一つ」との答弁をいただきました。その後、今年の7月には区政連絡会に福祉総務課長が、そうした方向性を示しております。私も、その区政連絡会には出席しておりましたが、町会長の皆さんからも、特養ホームの必要性を理解しながらも、これまで地域で検討されてきた状況を十分に踏まえて、丁寧に対応することが重要とのご意見が大勢を占めておりました。地域の「まちづくりの会」などでもご説明したと聞いております。

私も、町会長の発言にあるように、丁寧に対応し、これまでの防災を中心とした地域でのまちづくりの機運に水をささないように、地域と法人がともに歩むような施設となることを願っております。とはいえ、老朽化が迫る中で、ある程度は時間の制約も意識しなければならないものと考えます。区として、今後、どのように地域の理解を得ていくのかを中心に現在の状況をお聞かせください。

 【区長答弁】次に、養浩荘の建替え等について、今後どのように地域の理解を得ていくのかについてのご質問にお答えいたします。

養浩荘は昭和56年10月に開設された本区で最初の特養ホームで、老朽化が相当進んでいますが、現在の法令基準に照らすと現在地での建替えは困難な状況にあります。しかし建て替えに対する支援は、区内における特養ホームの整備に不可欠であります。

池袋本町1丁目の用地については、「防災生活圏事業」用地として、平成11年度に東京都の補助を活用し取得したものであります。その後、「池袋本町 新しいまちづくりの会」を中心に防災生活圏事業の検討が進められてきたところであります。

一方、取得から15年以上が経過し、本件地に隣接して小中連携校の整備も進んでおります。この整備にあたっては防災井戸やマンホールトイレの設置等、防災にも配慮したものとなっております。

こうした事情を踏まえ、特養ホームを整備する際も、特養ホームが福祉救援センターとして、地域の防災機能の一端を担うこととすることで、東京都からも特養整備の了解を得られたことから、区政連絡会ならびに「まちづくりの会」で、特養整備について説明させていただいたところであります。「まちづくりの会」では、どのような特養ホームとして整備していくことが地域のためになるかとの視点でグループワークを行い、意見を出していただきました。

今後、こうした意見を踏まえ法人が図面に落とし、再度「まちづくりの会」と意見交換を行ってまいります。そのうえで、まとめられた案をもって地域での説明会を開催するとともに、東京都との補助協議に必要な資料を整えていきたいと考えております。これからも、充分に地元の皆様の理解を得て、地域に愛される施設となるように努めてまいります。

【西山質問】

あわせて、特養ホームである養浩荘が池袋本町の方にできるとなると、気になりますのが現在の池袋四丁目の土地の活用です。建物は老朽化していることが移転を必要とする背景なのですから、現状の建物を活用するのは難しいものと考えます。

では跡地はどうするのか。もちろん、千川や東池袋の整備と異なり、法人の自前の施設ですので、区が決定することはできないと思いますが、貴重な区民の財産である2000㎡の土地を利用することを認めるのであれば、法人にも区の考え方を尊重するよう求めるべきと思います。区長のお考えを伺います。

 

【区長答弁】次に、養浩荘跡地の活用において、法人にも区の考え方を尊重するよう求めることについてのご質問にお答えいたします。

今回の養浩荘老朽化に伴う建替えについては、法人からの強い要請を踏まえ、本区の福祉施策全般に照らし支援することを決定したものであります。法人と区が同じ方向を向き、区民福祉の増進に努めることで認識が共通していることから、跡地計画についても、当然、区の意向に沿って進めていただきたいとの思いがあります。

こうしたことから、法人は自律性を踏まえつつも最大限区に協力をすることを明らかにしておりますので、今後も、本区の福祉施策と法人の取り組みが整合するよう調整に努めて行けるものと考えております。

【西山質問】

厚生労働省の検討チームで、高齢者介護や保育、障がい者福祉のサービスを一体的に提供する「共生型福祉施設」の支援策などが議論されています。

共生型福祉施設は、高齢者や子ども、障がい者らが一緒に利用できる施設です。他世代との交流を通じて高齢者が生き生きと過ごしたり、子どもの思いやりの心が育まれる効果が期待できます。障がい者も、社会参加の意欲が高まると指摘されています。

高齢者や障がい者、子ども向けの福祉施設をそれぞれ単独で設けるには、財源の問題もあり、専門スタッフの確保も難しい。それに対して、共生型福祉施設は1カ所で複数の福祉サービスを効率的に提供でき、利点が多いと考えられます。

ただし、課題がないわけではありません。介護、保育、障がい者福祉の各分野ごとに、法律や施設に関する規制、補助金の仕組みなどが異なっているため、行政のタテ割り的な対応で、共生型の強みが発揮できないケースが考えられます。

利用者の安全とサービスの質を確保するのは当然でありますが、支障のない範囲で利便性を高めるための柔軟な運用はできないものでしょうか。

 そして、その際、私の提案としては、この養浩荘の移転後は先に述べた、共生型福祉施設として活用しては如何でしょうか。この土地の活用により、区民の福祉増進に大きく寄与されると考えます。区長のお考えをお聞かせください。

 

【区長答弁】次に、共生型福祉施設における利便性を高めるための柔軟な運用についてのご質問にお答えいたします。

ご質問にありますように、「共生型福祉」について、厚生労働省検討チームで支援策などが議論されています。

このサービスでは、デイサービスからショートステイやグループホームなど、地域のニーズに応じサービス形態を様々に設定できるため、1か所の施設で複数の福祉サービスを効率的に提供することが可能となります。

また、多世代との交流を通じ、高齢者や障害者については日常生活の改善や会話の促進、子どもには他人への思いやりや優しさを身につける成育面の効果があり、地域では住民の皆様の様々な相談に応じるコミュニティの拠点となることから、「共生型福祉施設」の必要性は今後も拡大するものと想定されます。

本区においても、障害者の高齢化などに対応して法律や施設に関する規制、国等の補助金の仕組みなどを研究し、地域に根ざした「共生型福祉施設」の整備を検討していく方向であります。

養浩荘跡地の活用については、今般、法人からの提案もあり、共生型福祉施設の検討を開始したところであります。

共生型サービスとして高齢者の小規模多機能型居宅介護と障害者の日中活動の場の他にショートステイなどが、また、建物全体としても高齢者向け住宅や障害者のグループホームや、地域交流スペースなどがある案が提案されています。

今後検討を重ねていく中では、ご指摘のような柔軟な発想と運用がなければ、豊島区型の「地域共生型福祉施設」の整備は難しいと思いますが、実現に向けさらに議論を深めてまいりたいと考えております。

 今後の人口減少社会の中で、高齢化がすすみ、障がい者の皆さんも含めて高齢化対策を考える必要が生じることは明らかです。一方、社会全体の負担や分担の問題を考えますと、対応策は針の穴を通すような難しさがあることと拝察します。これまで以上に、豊島区の福祉が既存の思い込みにとらわれず、ありとあらゆる検討を試みられることを大いに期待しております。

 【西山質問】

2項目目の介護保険制度より2点質問します。

公明党区議団は本年7月岡山市を訪問、在宅介護総合特区の取り組みを視察してきました。

コンセプトは「高齢者が介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らすことができる社会の構築」を掲げており、わが党が強く推進する地域包括ケアシステム構築の主眼であります。

そして岡山市は、在宅介護に特化した規制緩和等を求める11項目を提案しました。本区においても特に参考となるべき2項目を申し述べます。

一つ目は、「デイサービスの質の評価事業」であります。これは介護事業者によるデイサービスの質の評価制度を導入し、利用者のQOLの向上、家族負担の軽減、事業所の改善意欲の向上という効果をもたらし、加えて事業所には強いインセンティブを与える仕組みを構築したものであります。

現行制度でのデイサービスの利用では、ともすると本人の出来ることまでも減らしてしまい、結果要介護度が悪化することによって、本人もさることながら、家族のケアも深刻化してしまいます。そして特養など施設入所の選択肢しか考えられなくなってしまいます。このことを克服するために、岡山市ではデイサービスの質の評価制度を導入しました。

例えば要介護3の利用者がサービスを利用する中で、事業所は機能改善向上を強化した結果、要介護1に低減、本人のQOL向上とともに、家族介護の負担も大きく軽減し、本人の社会参加など活動意欲の向上が図れるというものです。

またそうした取り組みを促すため、インセンティブを与える仕組みの創設があります。従来の制度では、要介護度を改善させると報酬が減る仕組みだったものを、要介護度を改善させるほど、報酬すなわちインセンィブが増える仕組みを実施したことであります。これだけでは制度の根幹に関わることとして厚労省は難色を示すことは当然であり、また事業所による利用者選別が起きかねないなどの、懸念が沸き起こります。

そこでサービスの質の評価指標として、ストラクチャー(構造)、プロセス(経過)、アウトカム(成果)と指標の視点を分散させることによって、事業者の得意とするサービスにも改善に応じてインセンティブを付与する仕組みへと作り上げたものであります。

介護報酬に対するインセンティブ付与や指標達成した事業所の公表など、介護サービスの質の向上に努力する事業所を評価することで、全体のサービス向上がはかれるものと考えますが、本区での介護サービスの質の評価をどうとらえているのか、介護サービスの機能向上により要介護度を悪化させないことなど、その取り組みをお聞かせください。

 

【区長答弁】次に介護保険制度についてのご質問のうち、まず、豊島区の介護サービスの質の評価及び介護サービスの機能向上等の取り組みについてのご質問にお答えいたします。

 通所介護は、在宅を支える介護サービスとして広く利用されており、在宅での生活を続けていくための自立に役立つサービスが提供されることは、本人にも介護する家族にとっても重要なポイントです。

ご指摘のように、介護サービスの提供内容が適切でない場合、要介護状態の悪化や家族の負担増をもたらすことがあります。そうした事態を防ぐため、介護サービスを正しく評価し、利用者の機能向上を目指すことは重要な視点であります。

 これまで、事業者に対する指導では、もっぱら施設の基準や提供しているサービスの法適合性について評価し、改善が必要な点があればそれに対応してきました。しかし、ご質問にある「サービスの質の評価」については、加算が適切かといった視点では評価しても、成果が上がっているかどうかで評価するところまでは至っていません。成果をふまえた評価は、これまで国の介護保険給付費分科会などで検討されてきたものの、課題も多いためか、検討結果が公表されることはありませんでした。

 平成28年4月から、通所介護サービスについては小規模の事業所が地域密着型サービスに移行することが決まっており、今後、これまで以上に区の指導監督権限や運営に対する助言の責任が重くなります。また、事業所の質の評価が数値や比較で分かりやすく「見える」ようにすること、また「介護サービスの利用による要介護度の改善」が図られるようにすることは、大きな課題であります。

したがいまして、今後、事業者にどのように成果に応じたインセンティブを付与するか、事業者とも協議をするなかで、中、長期的な視点で取り組んでまいります。

【西山質問】

二つ目は最先端介護機器の導入についてです。

岡山市では、最先端介護機器を介護保険の適用対象にしたことであります。現行の介護保険での福祉用具貸与対象は、車いす、杖、ベッドなど13品目に限定されています。そこで最先端介護機器貸与モデル事業を立ち上げました。

事業目的は、要介護者、介助者の在宅介護支援、また技術革新や製品開発に取り組む企業支援とし、これまで給付対象外のロボット技術などを活用した最先端機器・6点を保険適用としたことにあります。

例えば、アザラシ型のロボットがあり、これとふれあうことにより、ペットの代替えとして、認知症の方など、言動の緩和効果が期待されます。

また空気の力で動作するグローブがあり、字を書く、ペットボトルを握るなど、手の力や動作を支援するためのものです。

さらに特に注目したものは、介助者の負担軽減のため、前屈動作をサポートし腰の負担を軽減させるものがありました。

このように時代とともに技術革新の中で、要介護者と介助者の負担軽減は、待ったなしの時代の要請ではないでしょうか?

区独自として、今後の地域支援事業の中に盛り込むなど、この最先端介護機器の導入を検討すべきと考えますが、如何でしょうか?

 

【区長答弁】次に、最先端介護機器の導入により、要介護者と介助者の負担の軽減を図ることについてのご質問にお答えいたします。

岡山市で行っている、これまでの福祉用具の部類には属さない最新機器を福祉用具として貸与する事業は、要介護者の自立の促進や介助者の負担軽減の視点から注目すべきものです。

岡山市では、特区設定で、用具の選定に公募制を取り入れるなどの積極的な取り組みで成果を上げたと伺っております。

地域包括ケアシステムの推進に向け、実際に在宅で介護している家族への支援を強化することは大変重要であります。本区でも昨年度から「家族介護支援事業」を開始し、介護の相談や介護の基礎について学ぶ機会を持ち、今年度は事業の拡大を図っているところであります。

今後、最先端介護機器の導入については、地域支援事業の中で区独自の方向性を打ち出すため、介護家族のニーズや利用者の意見等も調査し、検討が必要と認識しております。

 【西山質問】

3項目目の子どもの貧困対策とひとり親家庭への支援について質問します。

昨年、関東圏の県営住宅で、ひとり親家庭の母親が中学生の娘を殺害するという事件が起こりました。母親は県営住宅の家賃が払えないほど、生活が困窮していました。生活保護の相談には行ったようですが、結果的に申請に至らず、困窮が深刻化し生活保護を受けて家賃を払うことができない状況になってしまいました。このことを見てもひとり親家庭を取り巻く状況の深刻さが見えてきます。

平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らしている18歳未満の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は、2012年厚労省調べで16.3%、6人に1人の割合といわれ、過去最悪の数字です。さらにひとり親家庭の貧困率は54.6%にまで高まっています。本当に困っている人にこそ、セーフティネットが届くよう行政も私たちも、地域もより意識を高めていかなければならないと感じます。

このひとり親家庭の8割以上が母子家庭であり。就労していても半数以上がパートなどの非正規雇用で収入が安定していないのも事実です。そのため親が夜遅くまで働きづめのケースも少なくありません。子どもが家で食事が取れず、夜の街を歩いたり、犯罪に巻き込まれるかもしれません。

そんな中、区内にはNPO法人豊島WAKUWAKUネットワークが展開する「要町あさやけ食堂」があり、先月、公明党生活支援プロジェクトチームである、衆議院議員3名と共に会派を代表して夫馬議員と共に視察させていただきました。

この子ども食堂は、月に2回、一人で食事をする子どもや、母子家庭などの親子連れなどに食事を振舞っています。ボランティアスタッフが子供たちと言葉を交わす中、栗林知絵子理事長は「この温かさが、孤立しがちな親子への支援につながっている」と語っておりました。

母子家庭で4人の子どもを育てる女性は「疲れて食事の準備に身が入らないときがある、経済的にも助かる」、また「いじめを受けてから、ひきこもりでしたが、ここが私の居場所をつくってくれた」と語る母親と2人で暮らす女子中学生は、現在では夜間中学に通えるようになりました。

栗林理事長は「自分の子が他の親に褒められているのを見るのは、うれしいもの。ここは、お母さんたちの励ましの場でもある」とお聞きしました。

 公明党は、子どもの貧困問題は、社会の問題として取り組むべきだと一貫して主張してきました。

貧困層の多くの親は我慢に我慢を自分に重ねて、掛け持ちで仕事をしながら子どものために尽くしているケースが少なくありません。一方子どもは親や家庭を選ぶことができないわけで、待ったなしで貧困世帯の子どもたちを社会全体で育んでいく必要があります。

そのような中で、子どもの貧困対策を総合的に推進する大綱策定を政府に義務付け、自治体に支援策を促す「子どもの貧困対策法」が2013年6月19日、参議院本会議で全会一致で可決、成立し、昨年1月17日に施行されました。

昨年8月には「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定していますが、政府は今年度中に子どもの貧困対策に関する「政策パッケージ」をまとめることとしており、中でもひとり親世帯の自立への経済的な支援として、児童扶養手当の拡充が図られることなど、大綱の内容を超え、実効性の高い政策の実現を強く期待するものであります。

このような中、今月11日には、古屋範子公明党女性委員長は山本香苗厚生労働副大臣とともに、本区のひとり親家庭に対する総合的な支援について視察しました。

そして厚生労働省は来年度概算要求の中で、子どもの貧困対策に223億円を計上、ひとり親家庭を支援するため、子どもの居場所づくりに取り組む市町村への補助金を創設し、子育て、教育、生活、親の就労などの相談窓口の一元化を進めると発表しました。

 そこで3点について、区の見解と施策について伺います。

1つは、豊島区における子どもの貧困家庭の状況をどのように認識しておられるのか、またその対策への取り組みについてお聞かせください。

【区長答弁】次に、子どもの貧困対策とひとり親家庭への支援についてのご質問のうち、まず、豊島区の子どもの貧困家庭の状況についてのご質問にお答えいたします。

子どもの貧困率そのものについては自治体ごとの数値は公表されていませんが、区立小・中学校の就学援助認定者が全児童・生徒の5人に1人であること、また子ども家庭支援センターが対応した児童虐待事例のうち、5件に1件が生活苦を抱え、3件に1件がひとり親家庭であること等の統計から分析しますと、本区においても厳しい生活実態にある子育て家庭は少なくないものと認識しています。

子どもの貧困問題は国を挙げて取り組むべき課題であり、4月には、安倍総理をはじめ、自治体、経済界、支援団体の関係者等を発起人に、「子供の未来応援国民運動」が発足しました。

本区でも現在、保護者に対する支援により子育て家庭の負担軽減や生活改善を図るとともに、生まれ育った環境により未来を担う子どもの将来が左右されることがないよう、また、日々の生活や学習面において不利益や困難が生じることのないよう、関係団体などとも連携しながら、子ども自身に対する支援も積極的に行っています。

貧困の連鎖を断ち切り、すべての子どもが夢と希望をもって成長できる地域づくりを目指す観点から、子どもの貧困対策を3月に策定した新たな地域保健福祉計画並びに子どもプランにおいて、重点施策として位置付けたところであります。

子どもの貧困対策は、福祉的な施策にとどまらず、将来にわたる区の活力をも左右する重要な政策であることから、今後も、福祉、子育て、教育など分野の枠を超え、総合的かつ効果的な対策を進めてまいります。

 【西山質問】

2つ目は、自治体としてひとり親家庭へのきめ細やかな支援拡充を一層果たしていくべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

【区長答弁】次に、ひとり親家庭へのきめ細やかな支援拡充についてのご質問にお答えいたします。

子どもの貧困対策を推進するうえで、ひとり親家庭への支援を充実、強化していくことは、極めて重要であると考えております。

本区では、ひとり親家庭を対象とする支援情報を網羅した「ひとり親家庭のしおり」を相談窓口等において配付し、生活や就労など自立に向けた様々な相談に対応しております。

また、関係部局や他機関とも緊密に連携し、相談内容に応じて、適切な窓口に確実に繋いでいくなど、きめ細やかな支援を実施しています。

わかりやすい情報提供や、スマートフォンで検索できる支援情報サイトの構築、メールを活用した双方向型の支援を実施するなど、今後も、支援を必要とするひとり親家庭が様々な問題をまとめて相談できるよう、「寄り添い型」の支援体制を整備してまいります。

 【西山質問】

3つ目は、他人事ではなくより多くの人が子供たちを温かく見守るという眼差しと、世話を焼くという地域まるごとでの支援の在り方を、是非区はバックアップしていただきたいと考えますが、ご見解をお聞かせください。

 

【区長答弁】次に、より多くの人が子供たちを見守る眼差しと世話を焼くという地域まるごとでの支援についてのご質問にお答えいたします。

4月に発足した「子供の未来応援国民運動」は、10月に本格始動することになりました。具体的にはホームページを開設し、ポータルサイトによる情報提供のほか、企業等による支援とNPO等の支援ニーズをつなぐマッチングサイト設置による連携を促進すること、また、「(仮称)子供の未来応援基金」を創設し、寄付の仕組みを構築することで、資金面のバックアップを図ることが示されています。

ご指摘のとおり、区内には、「子ども食堂」の運営や学習支援を行っている団体がすでにあります。区では国の動向をふまえながら、こうした団体が活動しやすくなるように支援し、相談にも応じてまいります。

また、11月から始まります第28期青少年問題協議会は、「(仮称)豊島区子ども・若者計画」の審議を予定しておりますが、こうした活動に取り組んでいる地域や団体への支援の在り方についても検討してまいります。

 

【西山質問】

国や自治体では、ともすると制度の充実に目を向けがちですが、それだけでは子どもの貧困問題は解決しません。行政からの支援も大事な要素ではありますが、子どもの衣食住を整えて学校に通えるようにすることだけがゴールではないと思います。

例えれば、子どもが自転車を乗れるようになるには、親が後ろを持ってあげたり、近くにいて大丈夫だよと励ましたりしている光景をよく見かけます。やがて多くの子どもたちは、補助輪を外しても、親がついていなくても、一人で乗れるようになります。

要は私たち大人社会が子どもたちに適切な環境を提供し、将来に希望を持てるような社会であるかどうか、地域や家族との絆を感じ、安心して社会生活を営める社会かどうかを考えていかなければなりません。

豊島区で暮らす子どもは幸せか? こんな問いを自問しながら家庭や地域のかかわりと共に、子とその親が安心して暮らせる豊島区を目指したいものであります。

たとえ家計がつらい状況の家庭で育ったとしても将来、経済的にも精神的にも自立して、負の体験をバネにして、自分や家族の幸福実現にとどまらず、社会に貢献できる人に育ってもらいたいと切に願うところであります。

4項目目、教育の課題について質問します。

私が教わってきた教育の基本とは、子どもの個性を深く尊重し、子どもがより自分らしい進路を選択し、より充実した人生を築いていけるように援助することと、学んだことがありました。

そして教育の究極の目的は、子どもの幸福であり、つまり、知識が優れているとか、高い地位に就くことだけではなく、持てる可能性を最大限に開き、価値ある生き方ができるかが重要ではないでしょうか。

 全国ではいじめ問題など、教育現場の課題に首長と教育委員会が連携して対応するための新教育委員会制度が4月に発足して半年が経過します。この制度により、区長が「総合教育会議」を設置し、教育委員会と地域の教育方針などを話し合うことになりました。

会議で扱う議題の中には、防災教育など複数の自治体に及ぶテーマもあるかと思います。今後、必要に応じて教育連携自治体との議論する場も設け、施策の質向上につなげていかれることを大いに期待しております。

 そこで伺います。教育長の立場から、総合教育会議の意義、また過去2回開催された成果がありましたらお聞かせください。

【三田教育長答弁】引き続きまして、教育委員会の所管に属する事項に関するご質問に対しまして、お答え申し上げます。

教育の課題についてのご質問のうち、まず総合教育会議の意義と成果についてのご質問にお答えいたします。

本区におきましては、これまでも、高野之夫区長と教育委員会が密接に連携して教育行政を推進し、成果を上げてきたところでございます。新教育委員会制度による「総合教育会議」の設置は、これまで以上に先進的かつ安定した教育行政を推進する上で、力強い追い風となったと受け止めております。

区長の英断により、法律施行後、全国初の「総合教育会議」が開催されたことに、「まちづくりの基本は教育と福祉にある」という区長の先取気鋭の思いを心強く感じ取ることができました。

総合教育会議の意義は、区長と教育委員会が、円滑に意思疎通を図り、教育目標を共有しながら連携して教育行政を推進していくことにあります。今後は、年3回程度の総合教育会議を開催し、区長部局と教育委員会との相互の権限を尊重しつつ、より一層、連携強化を図りながら教育行政を推進できるものと受け止めております。

総合教育会議の成果は、まず、何と言っても、共通の目標に対する協働の行動、大綱の策定や教育条件の整備、緊急の場合に講ずべき措置について、区長と教育委員会との意思疎通の方法が制度化されたことにあります。

具体的には、第1回の総合教育会議におきまして、豊島区教育振興基本計画「豊島区教育ビジョン2015」について協議し、今後の教育施策の基本を確認できたことです。

第2回の総合教育会議では、「豊島区教育ビジョン2015」を参酌して、教育の振興に関する施策の大綱、つまり、「豊島区教育大綱」を策定いたしました。

大綱では、新たな方針として、インターナショナルセーフスクールの全校実施、幼小中一貫教育の推進、地域の力を学校運営に生かすコミュニティスクールの導入を位置付けました。

新教育委員会制度への移行は、これまで指摘されてきた首長と教育委員会の同床異夢の関係から、共通の区民サービスに対するミッションを区民目線で推進する異榻(いとう)同夢(どうむ)の関係へと、歴史的なパラダイム転換が出来たと捉えております。

この総合教育会議を本区では全国に先駆けて開催され、このほど豊島区教育大綱を策定・公表されました。

この教育大綱の中で、新たに追加する施策として、インターナショナルセーフスクールの拡充、幼小中一貫教育の推進、コミュニティースクールの実施を掲げられました。

この中で小中学校合わせて9年間の義務教育を一貫して行う「小中一貫校」が来年4月から制度化されます。

新たなカリキュラムの検討や編成、小中間の連携に向け学校の事務作業が増えることが懸念されます。ただでさえ教員の多忙化が課題であり、負担軽減策も不可欠であります。

 来年8月には池袋本町小学校と池袋中学校が、新たな校舎一体型として同時開校します。区として新たなモデル校となるわけですが、この連携校教育プログラムと、教育大綱で示された幼少中一貫教育の推進など、目指すべき方向性について教育長のご見解をお聞かせください。

【三田教育長答弁】次に、連携校教育プログラムと、教育大綱で示された幼小中一貫教育の全校への推進など、目指すべき方向性についてのご質問にお答えいたします。

 本区におきましては、幼稚園教育要領並びに小中学校学習指導要領の趣旨に基づき、幼児教育と義務教育9年間の円滑な接続を図り、「学びと育ちの連続性」を確保するため、幼稚園教育においては、就学前後教育としての「アプローチカリキュラム」「スタートカリキュラム」の検討をはじめ、小・中一貫教育連携プログラムの開発・実践を進めております。中学校8ブロックごとに、学習習慣の確立や問題解決能力の育成、ICTの有効活用など、地域や幼児・児童・生徒の実態に応じたテーマを設定し、その研究成果を全校で共有することにより、幼・小・中の垣根を超えた全区的な教育内容のレベルアップが実現しております。

 こうした小中連携の取組や小中一貫教育を求める動きが各地域で展開されてきた経緯に鑑み、文部科学省は本年6月、学校教育法等を一部改正し、「一人の校長の下、原則として小中免許を併有した教員が9年間の一貫した教育を行う義務教育学校」の制度を創設しました。

創設される制度内容につきまして、中央教育審議会答申は、小中一貫教育の形態として二つの提案をしております。一つは、一人の校長の下で一つの教職員集団が一貫した教育課程を編成・実施する単一の学校である「義務教育学校」、もう一つは、組織上独立した小学校及び中学校が、「義務教育学校」に準じた形で一貫した教育を施す「小中一貫型小学校・中学校」という、二つの形態が示されています。

豊島区教育委員会といたしましては、既存の学校敷地が小中分離型施設となっている現状を踏まえて、小中一貫教育のシステムを提供することが重要であると考えております。

したがいまして、全ての小中学校を視野に入れて、先に述べた第二の形態、つまり、施設分離型の「小中一貫型小学校・中学校」として、池袋本町地区小中連携校をモデルとしながら、幼小中の円滑な接続を図り、教育課程の一貫性を貫く質の高い学校教育の構築をしてまいります。

最後に、全国学力テストについて伺います。

先月、文科省は小6と中3の全員を対象とした全国学力テストの結果を公表しました。上位は変わらず、秋田、福井、石川県が占めたことは、実力ある教員の方々と、授業方式が奏功していることと感じ入りました。

 今回の学力テストにおいて、これまで本区が取り組んできた区内小中学校の結果を総括してお聞きしたいと存じます。

 【三田教育長答弁】次に、全国学力テストにおいて、豊島区が取り組んできた区内小中学校の結果についてのご質問にお答えいたします。

 区長が召集あいさつで述べた通り、平成27年度「全国学力・学習状況調査」におきまして、豊島区の区立小・中学校の児童・生徒の平均正答率は、全教科において、東京都及び全国を大きく上回り、教科によっては全国第2位という素晴らしい結果となりました。平均正答率の高さもさることながら、私が常日頃から学校に訴えております「幼児・児童・生徒一人一人の能力を最大限に引き出してほしい」という願いに対して、児童・生徒一人一人の伸び幅が大きく向上した結果、昨年度の結果に比べて伸び幅の大きな学校が多数出現してまいりました。平均点ではなく、伸び幅を重視するという方針や取組が児童・生徒や学校を鼓舞する役割を果たしてきたと、改めて確信したところでございます。

伸び幅を押し上げているのは、問題解決的・体験的な授業へのモデルチェンジ、予習・復習など家庭学習の奨励、補習授業の充実、OJTや校内研究の活性化など、学力向上に向けた土壌づくりを丹念に進めてきたことが要因であり、調査結果に表れたものと受け止めております。本質的には、きめ細かなこうした取組が、何のために学ぶのか、いわゆる「学びがい」という学習に対する興味・関心を高め、児童・生徒の学びの意欲に火をつけた結果、自らの学習特性に気付き、つまずきの実態や自分の目標に向かい、学び続ける子どもたちが育ってきていることにあると捉えております。

あわせて能代市教育委員会などと連携協力した成果と今後の取り組みについてお示しください。

 【三田教育長答弁】次に、能代市教育委員会などと連携協力した成果と今後の取組みについてのご質問にお答えいたします。

能代市との教育連携も児童・生徒の学力を引き上げる大きな要因となっております。教員の相互派遣は今年で3回目を迎え、区内の教員の多くは、能代市の教育活動の中から毎時間全ての児童・生徒に出番のある「隙間のない授業」、「答えはみんなでつくるもの」という教師の姿勢に多くの示唆を受けてまいりました。地域を教材化した「ふるさと学習」、教育にかける情熱など、教育の求道者としての姿勢が次第に豊島の教員に浸透してきていると受け止めております。

さらに、今年で第5回となる「としま教育フォーラム」では、能代市の先生方も参加して、総合的な学習の時間に都市型環境教育を位置づけ、問題解決的な学習から探究的学習へ、主体的・協働的に学ぶアクティブラーニングへと繋ぐ取組をテーマにシンポジウムを開催いたしました。

アクティブラーニングを通して、学習した知識を知恵に変え、伸びゆく能力と個性を発揮し、これからの時代を生き抜く知恵ある児童・生徒を育むという豊島の教育の原理論を区立幼稚園、小・中学校の全教員に伝えることができたのではないかと受け止めております。

今後は、「教育都市としま」の高峰に挑むセカンドステージの取組として、さらに実りある教育連携を継続し、児童・生徒の知・徳・体の調和の取れた生き抜く力の育成に取り組んでまいります。

以上をもちまして、西山陽介議員のご質問に対する答弁を終わります。

 以上で私の一般質問全部を終わります。ご清聴ありがとうございました。