H16年3定島村高彦代表質問
「共生とうるおいのある街をめざして」

平成16年9月28日

 私は公明党を代表して「共生とうるおいのある街をめざして」と題し次の三点について一般質問を行います。第一に介護予防と高齢者福祉の基盤整備について、第二に清掃職員の身分移管について、第三に地方分権の推進について、最後にその他として地域問題であります。

 さて、今年七月から九月にかけて勢力の強い台風が相次いで列島を縦断し多くの犠牲者を出してしまいました。被害をうけた方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに被災地の一刻も早い復興をお祈り申し上げます。またそのつめ跡を見るにつけ日頃の防災対策の重要性を実感いたします。15人もの犠牲者が出た新潟の三条市、見附市、中之島町はいずれも住民に一斉・同時に通報する同報型の防災行政無線を備えておらず被害を大きくしてしまったとのことです。福井においても避難勧告が住民に伝わらない地域があり問題となりました。今後、住民と行政は一丸となって、その地域の状況と時に応じた防災対策を常に心がけていかねばならないと強く感じた次第であります。

 では本論に入ります。最初に介護予防と高齢者福祉の基盤整備について質問いたします。急速に進展する高齢化に伴い全国の要介護認定者数は介護保険スタート時点の218万人からわずか4年たらずの本年二月には379万人へと約72%も増加しております。このままいくと20年後には800万人にも膨らみ、高齢者の4人に1人が介護を受ける状態になると見込まれます。この結果、介護給付費は毎年10%ずつ増加していくため、現状の保険料では対応しきれなくなり現行の被保険者の年齢範囲を見直す案すら論議されるまでになりました。

 この4年間で特筆すべきデータは、被保険者の中の要支援と要介護1の軽度者の増加が2倍以上と圧倒的に多いということです。その要因として指摘されているのは、現状の介護サービスが軽度の要介護度の改善に生かされず反対に悪化させているのではないかということであります。

 本来介護サービスの目的は高齢者の生活・身体機能の維持、改善でありながら結果として自立支援に結びついていないということは適切なサービスが施されていないということになります。こうした軽度の要介護者が今後重度化するのか、それとも改善するのかによって介護保険制度の将来は決定的に異なったものになってしまうのです。

 こうした状況を踏まえ、公明党は、要介護者の増加や悪化を防ぎ、実りある高齢化社会の実現をめざし「介護予防10ヵ年戦略」を提案いたしました。これは高齢者人口に占める要介護者の割合を10年間で3割減少させることを目標に掲げております。

 厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会の介護保険部会は本年7月に来年の介護保険制度の見直しに向けて報告書を取りまとめました。同報告書はわが党の提案を反映し制度全体を予防重視型システムへと転換する必要性を強調するものとなりました。

 そこで第一に豊島区における軽度介護者の状況についてお伺いします。

わが区においては高齢者人口に占める要介護認定者の割合が全国や東京都に比較してさらに高いものとなっております。中でも要支援、要介護1の軽度者が占める割合は年々増加し平成15年度で全体の46.1%も占めていることから見てサービスが自立支援に結びついていないと考えられますがいかかがでしょうか。

 また今後は要介護者と並んでその危険性のある未介護者に対しても適切な改善及び予防サービスを提供していくべきであると考えます。すなわち介護予防には「疾病予防、健康増進」という視点からの取り組みも求められると思いますが、その点に関する区の見解もお示しください。

 第二に介護要因別の具体的な予防の取り組み方針ですが、平成13年の生活基礎調査によれば介護状態になる原因の第一位は生活習慣病から来る脳血管疾患病であり、二位:高齢による衰弱、三位:転倒・骨折、四位に痴呆、五位:関節疾患となっております。衰弱や転倒・骨折、関節疾患などは食育や食事療法、筋肉トレーニング、転倒予防運動等が身近に取り組める体制を整備することが望まれています。東京日野市では既にその効果が実証されている「筋力トレーニング」事業をNPOに委託し成果をあげております。要支援から要介護2の高齢者に対し週二回のトレーニングを三ヶ月続けた結果、歩行能力に関してはほぼ全員に大きな改善が見られたとのことです。

 次に要因第一位の生活習慣病に関しては予防サービスを提供するというよりも介護もしくは病に至る自身の生活習慣を自主的に変革してもらわねばなりません。未だ介護を必要としない高齢者に予防の意識を持たせ実践させるというまさしく介護予防の中核をなす取り組みを今後行っていく必要があると考えますがいかかでしょうか。

 次に対策が困難な痴呆性でありますが、確実な治療法もなく家族にとっては大変な負担となります。本区の調査においても区民が「健康のために知りたいこと」のトップに「痴呆の予防」が上げられております。こうした観点からもこれまで「身体ケア」に焦点が置かれてきた介護サービスの軸足を今後は「痴呆ケア」にも置き痴呆性高齢者の特性に配慮した小規模、多機能型サービスの充実が望まれるところです。さて問題の痴呆予防ですが区民も関心を持っていることなので何点か例を挙げさせていただきます。都が支援を行っている「東京都老人総合研究所」は他者との交流が脳の機能を刺激する条件を作り出し、それが痴呆の予防につながるという研究成果を発表しております。アメリカにおける事例の一つに教職を引退後も福祉活動を続け多くの人と活発な交流を図り101歳の高齢で亡くなった女性を上げております。この女性の脳を死後解剖した結果、完全にアルツハイマー病に冒されていたことがわかりました。しかし彼女は生涯に渡って痴呆の症状を示さなかったとのことです。さらに同研究所は豊島区長崎において痴呆予備軍を含む102名の高齢者を対象に研究を行いました。痴呆に関連する前頭葉を刺激する有酸素運動と共に料理、旅行、園芸、パソコンなど趣味的な活動で知的機能を鍛えるプログラムを実行いたしました。その結果、参加しなかったグループとの間では痴呆の初期に影響が出るといわれる「エピソード記憶」と「注意分割機能」に著しい差が生じることを実証しました。

 これ以外にも痴呆の改善、予防につながる多くの試みが医療機関をはじめ福祉団体やNPOなどによって進められております。最近、有効性が認められ始めている「音楽療法」もそうした試みのひとつです。「音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きを用いて心身の障害の回復、機能の維持・改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて音楽を意図的、計画的に使用すること」というのが「日本音楽療法学会」の定義であります。音楽のリズムやテンポが心拍数などに影響を与えることは医学的に立証はされていますが、ダイレクトに痴呆性の改善に至る明確な根拠が完全に解明されているわけではないようです。それでも痴呆性も含め他の心身障害に幅広い変化が認められることから岐阜県や兵庫、大分などいくつかの自治体では導入を図り、欧米においては40年以上も音楽療法をメンタルヘルスの問題に適用しております。アメリカにおいては病院、リハビリセンター、ディケア施設、薬物乱用者施設、学校などあるいは個人開業者として既に5,000人の音楽療法士が活動しています。今後、日本において多くの人に認知されるには保険適用や国家資格等の問題がありますが危惧するのは痴呆の広がりの速度であります。

 他にも科学的に前頭葉を活発化させるようシステム化された「学習療法」などがありますが、いずれにせよこうした様々な試みに対し行政側は積極的にアンテナを張り対応を図ることが望まれるところです。今後、要介護者の増加を可能な限り防ぐためには状況により痴呆予防の専門職を配置し事業者や地域住民に対して指導、啓発を行うことも必要と考えられます。豊島区における具体的な痴呆予防対策についてその見解をお伺いします。

 第三に地域ケア及び予防体制の整備についてお伺いします。「介護保険部会」の報告書によれば「介護が必要になっても住み慣れた地域で人生を送れるような『地域ケア体制』の整備や新たなサービス体系の確立を目指し『地域密着型サービス』を創設する」方針を打ち出し、また都の提案においても「将来的には既存サービス体系を再編し、身近な地域で365日・24時間切れ目のないサービス提供を可能とする体制を確立することが求められる」としております。さらにわが党の「10ヵ年戦略」においても「地域において歩いて行ける介護予防サービス拠点を整備。目標として平成20年度までに中学校区にひとつ、23年度までに小学校区にひとつ整備する」ことを打ち出しております。そして区も同様に「高齢者支援としまプラン21」において「必要な利用情報が容易に入手できるような地域の拠点を設置する」とのことですが、いつまでにどのような機能を持った拠点をどこに設置する予定であるのかお示しください。またこの度の地域区民ひろばの「いきいきひろば」に「健康増進の場」としての機能を持たせておりますが将来的に各小学校区において健常者も介護を必要とする高齢者も気軽に訪れ各種の予防、ケアサービスの実践や相談そして情報入手や交流が図れる体制にすることを提案いたします。この点に関して区の見解をお伺いします。

 第四に高齢者福祉の基盤整備について質問、提案を行います。一点目に本区の調査において「申請手続や利用できるサービスが分からないことを理由に介護認定を申請していないという回答」が少なからずあったとのことです。現状、区の高齢者福祉、介護に関する初期相談所には保険福祉センター、保健所、在宅介護支援センター、社会福祉協議会、民生委員、在宅介護支援薬局、接骨院と実に多くの施設がございますが、これではどこにいったらよいのか分からないというのが実態であります。事実私どもには「どこに行けばいいのか」という相談が少なからずあるのです。ましてわが区は高齢者世帯の中でのひとり暮らしの占める割合が23区で最も高い比率となっているのです。こうした高齢者に対しては広報誌やホームページだけの情報提供では不十分であり、「分かりやすく、簡単に」伝える必要があると考えます。そこで誰にでもひと目で分かるように「高齢者なんでも相談所」のような類の目印か看板を目につきやすい所に設置するよう提案いたしますがいかがでしょうか。

 二点目に先ほど述べた様々な予防サービスも受け手の高齢者に「知らせる」「分からせる」「自主的に取り組ませる」ことを行わなければ全く意味のない施策となってしまいます。そこで有効なのが訪問活動です。現在区では、見守り活動協力員や民生委員、訪問型介護相談委員、そして介護事業者がその役を担っておりますが、お互いの連携や活動の効率性は図られているのでしょうか。今後は介護予防の観点からも財政上の必要からも大型施設介護から在宅、通所介護へとサービスの中心を移行すべきです。そのために訪問型の相談事業には重点的な支援が期待されます。そこで現在の訪問活動を地域住民やボランティアも含め「高齢者訪問相談員」として一括し、細分化した地域分けあるいは人間関係的なつながりによる区分けを行い見落としのない訪問活動により実態把握と情報の共有化を行政も共にはかり、その上で各相談者のニーズに合ったサービスが提供できる体制を築くことを提案いたします。区の効果的な訪問活動についての見解をお示しください。

 三点目に高齢者の社会参加についてお伺いします。高齢化社会と言ってもマイナス面だけではありません。その意欲を引き出し活動する場を提供することによって高齢者の持つ豊富な経験と知恵が地域社会に還元され結果として先ほどの事例にあったように高齢者本人の健康増進にとってもまた地域経済の活性化にとっても有効と考えます。そこでシルバー人材センターにおける就労先の開拓を行政側からも強力かつ継続的に推進すること。また高齢者参加のボランティアグループ等を地域住民と共に数多く設立していくことなどが考えられますが、高齢者の社会参加を促進する施策について今後の区の取り組み方針をお聞かせください。

 四点目に民間活力の導入であります。増大する介護・健康のニーズに区行政だけで対応するのは財政上からも困難です。そこで本年三月から四月にかけ経済産業省は多様化する国民の健康ニーズに対応した質の高いサービスの提供を促進するため「健康サービス産業創出支援事業」を公募しました。これらの事業は全額国庫負担という魅力もあり、民間活力を用いて新しいサービス産業を創出すると同時に地域経済の活性化や雇用拡大も促進するという有力な新制度であります。こうした情報に機を逃さず対応し、来るべき超高齢化社会を活力あふれる社会に導いていかれることを切に願うものです。

 以上高齢者福祉の基盤整備について区の見解をお聞かせ願います。

 第二番目に清掃職員の身分移管についてお伺いいたします。地方自治法の改正に伴い清掃事業が区に移管され4年半、この間、事業そのものは確たる混乱もなく円滑に行われており、区民の方々にも清掃は区の事業であるとの認識が定着してきております。日頃、ごみの収集という労作業を通し区民の生活を支えてくださり、また今夏のような酷暑続きの折、炎天下で作業を続ける職員の皆様に対し区民の一人として心より感謝を申し上げます。

 さて平成18年4月に行われる清掃職員の区への身分移管まで残すところ1年半となりました。現状23区全体では7,000名余り、豊島区においては148名ほどの職員を正式に迎えることになると伺っております。この問題に関し現在、必ずしもスムーズな進捗状況にあるとは言えないと受け止めております。清掃事業ほど、全ての区民に関わっているものはなく、混乱や停滞は直接区民生活への打撃につながってしまいます。

 そこで、清掃職員の新たな人事・給与制度について何点か質問いたします。まず始に事業移管時の採用に関する取り決めにおいて移管後3年間は23区が新しい勤務条件を整備するための準備期間とし都が採用し区に派遣を行ってきました。そしてその後欠員が生じた場合は区が独自に採用することになっていましたが、そのために必要な新たな人事・給与制度は整備されなままであります。この間、職員の補充がなされないので必要な人員が確保できず、人員配置においては綱渡りのような厳しい状態にあるとの清掃労働組合の主張が聞かれますが、本区においては現在までどのような状況であったのか、またどのような対策をとられてきたのかお聞かせください。一方、区長会は遅ればせながら昨年12月「清掃事業に係る人事の課題に関する当面の方針」を決定し、「清掃職員の任用・給与制度は平成16年9月を目途に結論を得る」としておりましたが既に9月であります。現在どのような結論が出されたのかお伺いいたします。

 また、その方針の中で「新制度は17年度から前倒しで適用する」との考え方が示されておりますが、そのためには条例の制定を行う必要がありますがその点はどのようにお考えでしょうか。さらに本区は17・18年度の新規採用はしないことになっております。その点清掃職員も同じであるのか、また採用なしで事業運営に支障がないのか。その辺についてもお聞かせください。

 次に平成10年12月に行われた都区合意において「移管に際して処遇総体の水準低下は招かない」と定めております。ご承知のように身分移管を迎える現在の都派遣職員は都の人事・給与制度が適用されており、行政職給料と別の現業給料、調整額などの給与と4階級に渡る任用制度のもとで従事しております。区の現業職員には、行政職給料表横引きの現業給料表があり、調整額はなく都のような任用制度もありません。組合も主張しているように清掃事業は集団的大規模な労働集約型の業務であり屋外路上作業であることから公務災害の発生率は他の職種と比較しても高いものとなっており、またごみやし尿を扱うゆえに、今も根強い職業差別の問題にさらされているとのことであります。区長会ではこの「調整額」は新しい給与体系の中に設置しない方針としております。確かに他の現業との兼ね合いもあり難しい問題ではありますが、調整額が設けられた背景や歴史、また都の他の職種でも支給されている現実もあります。さらに前述した清掃業務の特殊性や困難性については区長会も認めるところであり十分に考慮に入れる必要があると思われますがいかがでしょうか。

 以上、高野区長は区長会の副会長でもあります。清掃職員受け入れにあたり人事・給与について現実的かつ早期に対応することを期待するものです。

 第三番目に「地方分権の推進」についてお尋ねいたしますが本質門は

全体でひとつの問題を提起しているので一括してお答えいただいても結構でございます。ご承知のように、バブル崩壊による長期的な構造不況、急速な少子高齢化の流れの中で制度上の地方分権も進展してまいりました。また雇用情勢の悪化も手伝い、人々の意識の中に従来の会社や組織に依存しない生き方を求めようとする傾向も生ずる一方で地域の活動の中に自らを見出そうとする意識も確実に芽生えてきました。

 さらにご承知のように自治体の位置付けはそれまでの国の下請け機関的なものから国と対等な「地方の政府」へと変化を遂げ、地域の行政は地域の住民が自分たちで決定し、その責任も自分たちが負うという行政システムを構築していかなければならなくなったのです。

 こうした状況のもと豊島区も新しい自治の仕組み作りを開始、パブリックコメントの導入やパートナーシップ協定の締結そして区政運営の最高規範である自治基本条例の策定に取り組んでおります。職員の皆様も積極的に地域を回り、また区の施策を住民に伝えるべく広報としまやホームページを活用しております。さらにかねてより信頼度、透明度ナンバーワンの区政の実現を目指す高野区長のもと区民の知る権利に応えようと情報公開条例を制定いたしました。

 しかしながらこれまで長い間、中央集権的な画一と集積の行政システムに慣らされてきた自治体の行動様式や思考パターンを一朝一夕に変えるのは至難の技ではないでしょうか。そしてそれは区民も同じであり状況はもっと深刻であるはずです。なぜなら豊島区民も含め日本国民は住民自らが自治を獲得するという歴史的経験を持ったことはないからであります。全国一律に実施されていた各種の行政サービスをずっと「無意識に」享受してきた区民にとって地方分権一括法の意図する「参画と協働による住民主体の区政」の実態を具体的にイメージするのはさらに困難であると思われます。つまり大半の区民の本音からすれば、「地方自治による街づくり」は突然振って沸いたような話であり容易に受け入れることはできないと思われるのですが、その点に関しての区長のお考えをお聞かせ願います。

 私がこうしたことを如実に感じたのは、この度の「区民ひろば構想」特に「全児童クラブ」の説明会であります。確かにこの制度は厚生労働省すなわちこども家庭部の学童保育と文部科学省すなわち教育委員会の放課後対策という二つの目的の異なった事業を融和、合体させようとしたところ、それが行政にとっても区民にとっても完全に整理しきれなかったことから来る矛盾点を内包していたと考えられます。子供というひとりの人間に長い間ふたつの部署からサービスが施されてきたこと自体に疑問もありますが、いずれにせよ国政から区政に至るまでの縦割りの流れは想像以上に根深く、区民という大地の土壌に深く根を張っていたことがこの説明会で証明されたのです。

 説明会での区民の反応はもちろん賛同の声もありましたが、一方で「財政難によるサービスの切捨てである」とか「行政側の責任放棄」「私たちだけが被害者」というような発言が少なからず見受けられました。またこうした批判的な表現でなくとも「財政難だから仕方がない」と考える区民は大勢いるのです。

 「地域区民ひろば構想」は自治基本条例研究の基本理念にあるように「地域住民主体の施設管理などを構想し行政の縦割りから来る施設のムダ等をなくし、ゆりかごから墓場まで世代を越えた共生のまちづくりに貢献する」ために打ち立てられた構想です。すなわち同構想は、区民にとっては、とても使い勝手がよく安心とうるおいを与える構想のはずなのです。したがって、こうした新しい時代の自主的な取り組みに賛同する区民も大勢おります。しかし、長い間の画一的な縦割り行政に慣らされてきた区民には財政難にあえぐ行政にとっての単に都合のよい理想論にしか聞こえないのです。

 どうしたらこうした人々も含め全ての区民に対して、街づくりの主役が自分たちであり、その決定も責任も自らが負うという地方主権時代のあるべき姿を理解してもらえるのか。これが本質門の主旨であります。そしてその答えもはっきりしております。区長は平成12年に策定された「豊島区人材育成計画」の前書きで述べられております。「区民から信頼され区民の目線で考え行動する職員を育成することが将来にわたって区民とのゆるぎないパートナーシップを築く」という言葉です。これが実現したとき、はじめて区民は行政と協働し、ともにまちづくりに参画していく意識をもち始めるのではないでしょうか。すべての区民がそういう意識を持てない限り「区民ひろば構想」で定める「運営協議会」の実態をイメージすることは困難であると思います。問題はそのためにどうしたらよいかということです。先ほどの区長のお言葉を二つに分けて検証したいと思います。第一は区民の信頼を勝ち得ること、第二は区民の目線で考え行動するために区民との対話の姿勢をつくること、以上二点であります。

 第一に区民の「信頼を勝ち得る」ためには全ての区職員が地方自治を推進するリーダーであることを自覚し「自分たちは区民であるあなたのお役に立つために厳格な規律のもとにある」という姿を区民に示すことであると考えます。幸い本区においては荒川区のような事件は起きておりませんが、本人の意思とは無関係に誰にでもその危険性があることを知らねばなりません。明確な指標がどうしても必要となるのです。そこでその第一歩として提案したいのは近年民間において取り組まれているコンプライアンスであります。一般的には「法令遵守」と訳されておりますが、その目的は単に法律や規則を守るというだけではなく全社員が法令を守り、仮に違反してもそれがすぐに発見され自立的に自浄作用が働く体制を作ることです。ご存知のように一連の多発する企業の不祥事件は収益を追い求めるあまり、責任を持って消費者により安全な商品を提供するという当然の社会的責務を忘れ、消費者の信頼を失うことになったのであります。要するに自分で自分の首を締める結果を招いたのです。このように民間企業にとって違法行為や反社会的行為は消費者の信頼を損ね、その存在基盤すら失うことになります。したがってこうした不祥事件が企業自身に強い危機管理意識を持たせるようになったのでありましょう。今民間企業の多くはコンプライアンスを業績向上の第一歩と位置付け、消費者の顔が見える組織作りに懸命に取り組んでおります。またこうした流れの中、最近ではCSRと呼ばれる企業による積極的な社会貢献活動が企業評価の重要な指標となってきました。たとえば製品製造過程における環境への配慮、海外生産における現地労働者に対する労働条件の保障などが企業の格付けや株価に影響を与えるようになってきたとのことです。

 さらにコンプライアンスの取り組みの一つとして先の国会で「公益通報者保護法」が成立し公務員も含めた内部告発者保護が制度化されました。千代田区では同制度を条例化し弁護士など第三者からなる行政監査員を設置しました。理由として「住民の税金で行政サービスを提供する自治体にはより高い倫理性や透明性が求められる」とし「行政組織の自浄能力を強化する仕組みとして」導入に踏み切ったとのことです。

 当然、行政におけるコンプライアンスとは単に規則を守るということではありません。その語源にあるように「人の期待、要望に応えること」という意味であります。区民への奉仕という社会的責務が自覚できなければその負託に応えることはできず、信頼も失うことになるのです。それでも独占事業体である行政には税金というどの企業よりも回収力のある売上収入金が見込まれているのです。だからこそ企業よりもっと厳格な要件が求められてもいいのではないでしょうか。高い倫理性と透明性を前提とするのなら制度として明確に存在することを区民に示す必要があると考えますがいかがでしょうか。区長の見解をお示しください。

 第二に「区民の目線で考え行動する」には画一的、措置的な対応を取っている限り実現できるものではありません。豊島区25万区民の中には町会や団体、NPOなど区政と関わりをもついずれの組織にも属さない多くの人がいるのです。このような行政側からは顔の見えない区民の中には自ら地域行政に関わる意思もなく、あってもその方法を知らない人もおり、また納税という行為の代償として行政サービスを受取るのは当然と考える人もいるでしょう。さらに大半の区民は行政について勉強しているわけではありません。「区民の目線で考え行動する」とはこうした区民の顔が見えるようになると同時にこうした区民に顔を見てもらうようになることです。現在、国と都の間で地方税財政に関する三位一体改革が議論されておりますが重要なことは単なる権限、財源の分散としての分権ではなく自己責任・自己決定の領域を実質的に拡大し住民ひとりひとりの参画と協働を実現することでありましょう。分権型社会はある日突然出現するわけではなく段階を追って作り上げていくものと考えます。地方分権から地域分権への流れを確かなものにするためには「区から地域へ」「地域から地区へ」あるいは町会、NPOなどの団体自治から区民ひとりひとりの住民自治へと参画と協働の流れを推し進めていかねばならないと考えるのです。そこで昨年度の第三回定例会においてわが党の此島議員より提案のあった札幌市コールセンターについてでありますが、区長のご答弁では「厳しい財政状況ゆえすぐの導入は困難であり今後の成果や他自治体の導入状況を見守りながら再度検討する」とのことでありました。しかしこのサービスは段階的な分権社会の実現方法のひとつとして職員と区民の意識改革に効果の高い施策と感じるので再度取り上げさせていただきました。同サービスは「行政と市民の関係性を変えて行く顧客志向の経営」プロジェクトを実現する具体策のひとつとして立ち上げられたものです。つまり大前提として市民をお客様と位置付けているのです。プロジェクトの目的は第一段階で行政がお客様との接点における基本動作を整理し信頼関係を再構築すること第二段階はサービス全体を時と共に最適化すること第三段階は住民自治の発展に向かわせることです。このうち第一から第二段階を中心に担うのがコールセンターの役目です。事前にサービスに対するニーズ調査を行い可能な限り要望に沿う形でこのサービスを開始することを市民に伝えるため広報誌やホームページはもちろん、それ以外に市内80万世帯すなわちほぼ全世帯にチラシを各戸配布して昨年4月にスタートしました。本年6月までに寄せられた問い合わせ件数は42,531件、利用者の満足度は95%を上回りそして縦割り行政の欠点を補うのに有効な情報の共有化を目的としたデータベースの蓄積数は1,400件余りに上ります。本年7月からは英語対応の同サービスも開始されました。特筆すべき点は多々ありますが、なにより第一にお客様のたらい回しが防止できること。第二に立ち上げ時には確かに8千万円という費用を要しましたが、民間に委託し職員直営の場合の三分の一まで運営コストを抑えられること。第三にコールセンターには苦情も寄せられますが誠実に対応することによって納得と満足に変わっていくということ。第四に蓄積データベースを分析することにより適切な情報の種類、対象先、及び提供方法が明確になっていくこと。第五にこれを各部署にフィードバックすることにより「情報の共有化」と「現場からの職員研修」が可能となりサービスと効率化の両立に取り組めることなどであります。横浜市においては本年3月から同サービスのモデル事業を開始、杉並区では平成18年度より導入を予定しているとのことであります。いずれにせよ同サービスには今後の自冶体に必要とされる民間の手法が多く取り入れられております。民間の営業においてはこちらから顧客に接し、潜在ニーズを呼び覚まし、そしてそのニーズに満足を与えはじめて売る行為に至るのです。したがってすでにニーズがはっきりしている顧客にさえ満足感を与えられなければその企業の将来は危ういのであります。また今後は効率的で質の高い公共サービスを実現するため指定管理者制度をはじめ様々な部門で民間活力の導入が図られていくと思われます。その際区民との間で摩擦や軋轢を生じさせないために必要とされるのは説明責任の確保、公正な競争環境の構築、そして何より透明性の確保でありましょう。最終的に民間活力を利用した施策においては顧客に対する満足度が公共サービスに反映されることが求められ、サービスの質と効率性の両面を備えた価値判断基準が求められてくると考えます。そうした観点から財政管理についても予算重視ではなく、顧客主義を徹底した成果主義の考え方にシフトすべきであると考えますがこの点についてもご見解をお示しいただけたらと思います。

 「売上を伸ばすためにお客さんを喜ばせるのではない。喜ばせるから売上が伸びるのだ」とは商売で成功した人の言葉であります。行政はどこまでも住民に対するサービス業であることに徹するべきであると考えます。

 地方分権の改革は明治維新、戦後改革に次ぐ「第三の改革」とも位置づけられているのです。かつてない財政難の中、今後の地方行政には職員、区民そして私ども議員にも未だかつて無い大きな意識改革が求められております。しかしながら能力的にも立場的にも改革のリーダーシップを担えるのは職員の皆様であると考えます。「区民の目線で考え、行動する職員を育成する」ということは「時代の先駆者を育成する」ことにつながると考えます。その最も効果的な方法について区長のご意見をお聞かせください。

 最後に第一番目の高齢者福祉の基盤整備に関連して巣鴨・駒込地域の課題について伺います。要介護者を含め体の不自由な高齢者に適切な移動手段を提供することは閉じこもりや介護度の悪化を防ぐ上で重要であります。昨年の第三回定例会の一般質問でハンディキャブ事業の改善について提案をいたしましたが、お蔭様でかなり使いやすくなったとの声も聞き大変嬉しく感じます。さらに区はプラン21において「高齢者が積極的に地域社会に参加できるよう、鉄道駅施設などの改善」を図ると述べておりますが、大塚駅南北自由通路完成後、区内JRでエスカレーターが設置されていないのは駒込駅のみとなります。昨年10月に駒込駅周辺の駒込二丁目親和会の町会長を発起人とする1,267名の周辺住民は「エスカレーター・エレベーターの早期設置」と「車いす利用者にとっても使いやすい券売機の設置」を求める署名をJR東日本東京支社に提出いたしました。高齢者や身体の不自由な方々は一日も早い設置を心待ちにしているところです。またJR駒込社宅跡地に建設中の総戸数488世帯という大規模なマンションの完成後はさらに多くの人々が同駅を利用することになるのです。そこで駒込駅改善に関し今後の本区の取り組みをお伺いします。

 次に街づくりの基礎的な取り組みです。現在、「国道17号巣鴨地区歩行空間整備」の検討が行われていますがご存知のように巣鴨は有名な地蔵通り商店街を抱え、多くの高齢者が参集する地域であります。この地蔵通りの入り口にある交差点で横断歩道のない17号通りを高齢者も含めかなりの人が徒歩や自転車で横断する光景をよく見受けます。以前より設置されている歩道橋はあまり利用されていません。従前より周辺住民はこの交差点に横断歩道の設置を要望しているところですが、人の動線に合わせた交通環境の整備も移動の利便性に大きく影響すると思われます。諸々の難点があるのは承知しておりますが区として国土交通省や警視庁に対し粘り強い要望を行っていただくよう提案いたします。また「巣鴨、大塚地区中心市街地活性化基本計画」策定の中に、都バス車庫利用の産業集積施設の構想がありますが同時にそうした施設に多機能型の福祉施設も設置するよう都に対し要望することも合わせて提案いたします。先ほども述べましたが財政難の折、可能な限り他から予算を引き出す施策に労力を集中することも区民のためであると思います。

以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。