令和3年 第一回定例会 西山陽介一般質問

令和3年2月18日登壇

「誰もが安心して暮らせる豊島区を目指して」

私は公明党区議団を代表して、「誰もが安心して暮らせる豊島区を目指して」と題し、1.温暖化対策について、2.現役・若者世代への支援について、3.高齢者福祉・介護保険事業について、4.教育について一般質問をさせていただきます。

はじめに、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に、心から哀悼の意を表しますとともに、療養中の皆さまにお見舞い申し上げます。また、地域を懸命に支えている医療・介護・障がい施設に従事する方々をはじめ、保健所職員の昼夜を分かたぬ激務や、感染症対策に応じていただいている全ての皆様へ、心より感謝と御礼を申し上げます。

私共会派は、いまだ収束が見えない新型コロナウイルス感染症の渦中、区議会だより新年号を通じて「SDGs未来都市として、全国模範の街に」と表明して新年を迎えました。SDGs未来都市に向けた豊島区の新たな挑戦が本格始動する年であり、「誰一人取り残さない」持続可能な街づくりに向け、知恵を絞りながら前進する決意です。

高野区長は新年を迎え、「これまで取り組んできた23のプロジェクトに魂を入れる」、また「豊島区民が夢と希望をもって、未来を明るくするというスタートの年」と表明されました。未来に希望を持つことが、感染症に立ち向かうことにつながる。挑戦と応戦、ピンチがチャンス、行き詰まりを打開するのが知恵であります。

SDGs未来都市として、次の時代に託す豊島区の在り方も考えていかなくてはなりません。新しい生活様式=ニューノーマルが定着し、身体的距離や社会的距離を取ることが当たり前になりました。ですが人は歌ったり会話を楽しんだりしてコミュニケーションをとって成長するものだと思います。

感染症の経験を糧にするならば、子どもも若者もお年寄りも、人としての心の距離をどうとらえていくかが重要と考えます。閉鎖的、分断的に向き合うのではなく、しなやかで柔軟な社会を目指すものではないでしょうか。

それでは質問に入ります。1番目に温暖化対策についてです。

近年、国内外で異常気象が頻発し、自然災害が激甚化している、その大きな要因とされるのが温室効果ガスの増加に伴う地球の温暖化です。各地で異常気象は相次ぎ、その被害は甚大かつ深刻なものになっています。もはや温暖化対策は待ったなしであり、原因となっている温室効果ガス、特にCO2の削減など緩和策と、気象災害への備えを万全にしていく適応策を区として強めていく必要があります。

本年は、パリ協定の発効から5年を迎えます。既に120以上の国・地域が2050年カーボンニュートラルを表明し、国内では、208自治体がゼロカーボンを宣言するなど、国内外で脱炭素社会構築への機運が高まっています。

そのような中、2016年に策定された「東京都環境基本計画」では、2030 年までに温室効果ガス排出量を2000年比で30%削減、2013 年比で38%削減するという目標を掲げてきましたが、都知事は先月、ゼロカーボン実現のため、2030年までに2000年比半減させると目標の変更を表明しました。

一方、本区の環境基本計画の重点施策には、「気候変動に対応し、脱炭素化に向けた取り組みを進めるまち~目に見える対策で低炭素を先導する~」とあり、計画では、2030 年度における温室効果ガス排出量を2013 年度比39%の削減目標とされています。

豊島区としても2050年ゼロカーボンを目指し、SDGs目標年度に向けて、今後の温暖化対策の基本的な考え方についてお伺いいたします。

次に気候変動への取り組みについてです。

国は昨年秋、「気候非常事態宣言」の決議を採択しました。社会全体の行動変容の必要性から、気候危機意識を地域社会で共有し、幅広い区民、関係団体の参加によって、一人一人の行動を変えることの実効性を高めるために、同宣言を今年度、都内では千代田区、多摩市が宣言をしています。

こうした中、温暖化を「緩和」する対策とともに重要なのが、気候変動に「適応」していく取り組みとされています。

緩和とは、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を削減し、温暖化の影響を和らげることです。そのために、省エネの推進や、走行中にCO2を排出しない電気自動車などのエコカーの普及、太陽光など再生可能エネルギーの利用拡大、CO2を吸収する森林面積を増やすための植林活動などが求められます。

一方、適応とは、農作物の不作、熱中症患者の増加、豪雨や台風による風水害の多発化、魚の生息域の変化など、広範な問題を生じさせる気候変動の影響に備えた対策を講じていくこととしています。

こうした適応の取り組みを推進するための気候変動適応法が2018年12月に施行され、その中で地方自治体にも、気候変動適応計画を策定する努力義務が課さられ、本区では、地球温暖化対策実行計画として、2030年を目標に取り組まれています。

加えて気候変動の影響を巡る地域ごとの実情に即した対策を行えるよう、地域気候変動適応センターの設置を、努力義務として自治体に求めています。

これら自然災害に備えるためにも、専門的な知識を持つ人材活用が必要です。地域の気象災害情報に詳しく、防災・減災対策に自治体をサポートする意義は大きいとして、先月の参議院代表質問で山口那津男党代表は、「気象防災アドバイザー」の活用を提案しました。

SDGs目標13では「気候変動に具体的な対策を」とあります。高密都市である本区が温暖化対策の先導役として大いに期待するところですが、取り組みを進める上で専門分野の人材活用を含めた、気候変動への適応の取り組みについて、ご所見を伺います。

2019年には気候変動の問題解決をテーマに国連本部に世界の若者が集まり、政策への反映につなげるため、ユース気候サミットが開催されました。若者たちが希望を持てない社会に、持続可能な未来を描くことはできないと思います。

本区においても現在の課題への対応だけでなく、未来を見据えたビジョンを構築するためにも、若者の視点による提案を反映させ、真に次代を担う若者との意見交流の場を設けては如何でしょうか、ご見解を伺います。

次に脱炭素社会の実現についてです。

本区ではリサイクル清掃審議会を経て、第四次一般廃棄物処理基本計画が来月策定されます。審議会では、昨年7月にSDGs未来都市の選定というビッグニュースが入り、基本計画策定にその理念を盛り込んでいくことが了承されました。

脱炭素社会を目指す上での主要課題として、①ごみ・資源の適正排出促進、②食品ロス削減の推進、③事業系ごみ対策の3本柱が掲げられております。

特に最初のごみ・資源適正排出については、排出抑制の取り組みを最優先としつつ、プラスチック製容器包装の分別収集拡大を目指すこととしています。

本区の取り組みとして、分かりやすい分別収集の方策を確立し、あわせて区民の温暖化対策への意識醸成に努めていただきますようお願いいたします。

政府では自治体ごとに扱いが異なるプラごみを資源として一本化し、回収できるようにする「プラスチック資源循環促進法」案を今国会に提出しています。よくよく動向を注視しつつ、本区の特性に沿った資源回収の方策を検討すべきです。

これら取り組み方針と脱炭素社会構築に向けての決意をお聞かせください。

次に施設整備方針についてです。

学校をはじめとする施設の改修、改築はこの先50年残ります。温暖化対策の目標から逆算した時、今どういう施設計画を作る必要があるのか、といった具体的政策が必要です。区環境基本計画では、各種環境認証制度の活用や認定取得について検討を行い、学校施設については、環境への負荷を低減し、緑化や暑熱対策の進んだ施設整備を進めることにより、エコスクール化を推進するとあります。

温暖化対策に適う今後の施設整備方針についてご所見を伺います。

2番目に現役・若者世代への支援について質問します。

政府が昨年策定した「全世代型社会保障改革の方針」には、公明党が長年推進してきた不妊治療の保険適用や、不育症についても検査費用などの支援が盛り込まれました。

また「男性の産休制度」の創設や、育休を分割して取得できるようにし、育休制度の周知や環境整備を推進するなど、公明党は現役・若者世代の支援にも力を注いでまいりました。

党青年委員会では、オンラインや対面によるユーストークミーティングに寄せられた声をまとめ、政府に対し、政策提言を行ってきました。この中で、若い世代の将来不安が低所得層だけでなく、中間所得層にも広がっている、税や保険料の負担に見合った行政支援を実感していないことが浮き彫りになりました。こうした不公平感を見過ごし続ければ、社会の分断を招きかねません。広く区民の暮らしを豊かにするためにも、若者世代への行政サービスの実感をもたらすことが重要と考えます。

はじめに多胎児家庭と多子世帯への移動支援についてです。

アンケート調査結果によると、多胎児家庭がつらいと感じた場面として、約9割で外出、移動が困難であると答えています。

多胎乳幼児・多子世帯の子の移動には、ベビーカーが欠かせませんが、これまで公共交通機関、特にバスではベビーカーを折り畳まないと乗車できないなど、公的支援や地域社会とのコミュニケーションから疎遠になることも少なくありません。

そこで多胎児家庭及び多子世帯の育児をサポートする視点も含めて、イケバス乗車券の交付やタクシーを含む移動支援について、区のお考えをお伺いいたします。

次に若者の感染防止への啓発についてです。

新型コロナウイルス感染の深刻化を受け、党青年委員会は1月15日、内閣府で、西村経済再生担当大臣と会い、政府の情報発信の強化を柱とする若者世代の行動変容に関する緊急要請を行いました。「今の感染の広がりは若者に責任があるというのではなく、若者と政府が同じ思いで感染症を克服していこうと若者に行動の変容を呼び掛けてもらいたい」と訴えました。

具体的には、テレビやラジオ、新聞などを視聴・閲覧しない若者にも、新型コロナに関する情報が十分に行き届くようにするため、SNS(会員制交流サイト)や動画などインターネットをフル活用することを要望しました。

また、感染防止に有効な行動の必要性を訴える際は、若者世代に強い影響力を持つ「インフルエンサー」や著名人と協力し、動画などでメッセージを発信していくことを提案しました。さらに、若者自身が自分のこととして実感できる形で新型コロナのリスクを周知啓発していくことが重要とし、プライバシーに配慮しつつ、実際に感染した若者のインタビューや、後遺症の影響などを伝えることを求めたところです。

感染症まん延防止として、区内外の若者への実感できるメッセージの発信に努めていただきたいと考えますが、ご見解をお聞かせください。

次に今後のがん対策とAYA世代の支援についてです。

豊島区としてがん対策が大きく前進することになった、豊島区がん対策推進条例が平成22年に施行されました。

その後法整備され、東京都においても施策が推進してきたことは、がん対策は豊島区といっても過言ではありません。本区では「第3次区がん対策推進計画(案)」がこの3月に改訂される予定です。

その中で新たな基本方針として、ライフステージに応じたがん対策が盛り込まれました。それぞれのライフステージがありますが、この中でもAYA 世代のがんは、この世代の主な死因の一つです。

AYA 世代とは主に 15 歳以上 40 歳未満の思春期及び若年成人世代を指します。多種多様ながん種があり、また、乳幼児期から小児期、思春期・若年成人といった、学業、就職、結婚、出産等の特徴あるライフイベントを過ごす時期に発症するとあります。

また、この世代のがん患者は、共働きも多く、養育費や住宅ローンなどを抱え、自宅療養するには経済的負担が大きくなる現状です。40歳未満であれば介護保険が適用されず、在宅サービスを利用する際の経済的負担や、介護する家族の負担が大きいという問題があります。

このようなAYA世代のがん患者を在宅で支援する制度構築を検討すべきと考えますが、ご見解を伺います。

現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代という構造ではなく、切れ目なくすべての世代が公平に支え合う社会保障へと転換が求められます。来年4月から成人年齢が引き下げられる18歳、19歳、今の若者世代である20代30代の方々は必ずや豊島区を担う方々です。

若者世代に対する区長の思いをお聞かせください。

3番目に高齢者福祉・介護保険事業について質問します。

本区では現在「高齢者福祉計画・第8期介護保険事業計画(案)」をまとめ、先月パブコメを終えました。高齢社会に対応する大事な計画であり、平成30年7月以来、会議委員のご努力に対し、心より敬意を表する次第です。この計画内容は多岐にわたりますので、ここでは論点を絞って取り上げさせていただきます。

計画の基本的な考え方では、「地域共生社会」の実現について触れています。「地域共生社会とは、(中略)制度・分野の枠や、支える側、支えられる側という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的な社会をいう」とあります。

はじめに外出、移動が困難な方への支援についてです。

一昨年区が実施した介護保険アンケートより、いくつか取り上げると、今後介護が必要、又は介護度が重くなった場合でも、3割以上が自宅での暮らしを希望。介護者に対する支援では、居宅サービスの充実を求める声が5割弱、その他公的支援や介護者がリフレッシュできるような支援を、それぞれ3割近く求められています。

また認知症施策の推進について、介護者が「不安に感じる介護」の内容は、「外出の付き添いや送迎」が約3割、「症状への対応」や「夜中の排泄」「入浴など」、およそ四分の一の方が不安と感じています。

そこで調査結果から、要介護者への支援として、介護タクシー事業者のような民間活力の利用が必要であると考えます。介護タクシー事業者は、旅客輸送に必要な普通自動車二種免許とホームヘルパー2級以上の資格を持ち、車イスやストレッチャー対応の車両など、要介護者が移動するための介助・福祉環境が整えられております。

また災害が発生する前や災害時、現下の感染症拡大時の対応として、その人的輸送に専門車両として介護タクシーの活用を提案します。

外出支援や避難行動など、移動が困難な方への支援として、実効性ある体制の構築を望みますが、お考えをお聞かせください。

次に認知症の方と、そのご家族への支援についてです。

計画のうち「地域包括システムの実現に向けた施策の展開」では、「社会から孤立した状態に置かれている方を支援につなげていく必要」が盛り込まれています。また家族等による見守りの支援では、これまで提供されてきた徘徊高齢者位置情報サービスをマイナーチェンジして継続していくとあります。

ここで思い出されるのが、数年前に起きた認知症高齢者が踏切内で列車にはねられ、鉄道会社はその遺族に高額な損害賠償を求めたことがありました。長い裁判の末に、遺族側に賠償責任は求められませんでしたが、このことを契機に認知能力が低下している状態で発生した事故等賠償保険が生み出され、一定の条件のもと、その保険料を自治体が負担するサービスが増えてきています。区内でも踏切は存在しますし、認知症の方が関わる事故は列車事故に限りません。

万が一の際のご家族を守り、日本一高齢者にやさしい豊島区を目指す上でも、認知症対象者向け、事故等損害賠償保険保険料の助成制度を提案しますが、如何でしょうか。

次にケアラー支援についてです。

まず介護保険制度は、二つの大きな柱があったものと理解しています。 一つは「高齢者の自立支援」、もう一つが同居する家族の介護負担を少なくすること、「在宅ケアの推進」であります。これは家族による介護に過度に依存し、家族が過重な負担を負うようなことがあってはならない。在宅ケアにおける家族の最大の役割は、高齢者を精神的に支えることとしています。

特別養護老人ホームも、入りたい時に希望する施設に入所できるとも限りません。やむなく自宅で共に暮らす家族がケアをする在宅介護を選ばざるを得なくなるケースは少なくないでしょう。

十分な介護サービスを受けられず、やがて家族介護の負担が増大していくと、今度はケアにあたる家族の社会的孤立が浮き彫りとなってしまいます。

先の見えない介護に対し、不安や疲労から介護者自身がうつ状態や病気になってしまうケースや、介護のために仕事を辞めなくてはいけなくなるケースなど、さまざまな問題が起こるようになりました。そして介護に割かれる時間が増えるほど、リフレッシュするための時間が削られ、心身の不調につながり、ご近所や友人と会っておしゃべりするなど、人間にとって大切な社会とのつながりが持てなくなってしまうことが懸念されます。

「介護」と聞くと、どうしても介護される側ばかりに目が行きがちですが、レスパイトケアの重要性が説かれていることからもわかるように、介護にあたる家族のケアも同じくらい重要です。心身ともに健康であるからこそ、尽くすこと、頑張ることができる。そんな当たり前のことを今一度再認識する必要があると考えます。

このような状況を防ぐため、2010年に日本ケアラー連盟が創設され、「ケアラー」とは、「こころやからだに不調のある人の『介護』『看病』『療育』『世話』『気遣い』など、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人」と定義しています。決して介護だけでなく、日常的な見守りや声かけも含まれる内容です。それだけに家族だけにとどまらず、コミュニティを形成するすべての人が「ケアラー」と定義されるとのことです。このケアラーと言われる家族などの介護を献身的に行っている人たちの中で、リスクの高いケアラーを早期に発見し適切な支援につなげていくことが求められます。

先月練馬区で介護に疲れた70代妻が夫を絞殺して、自らも自殺を図ったことが報じられていました。心中をほのめかす遺書が残されていたそうです。妻は持病を抱えながら、がんに苦しむ夫を世話し、自ら介護施設を回ってパンフレットを集め入所を勧めたが、夫は承諾しなかった。公的支援制度も利用せず、在宅で闘病生活を送っていたとみられています。

介護する側が、夫のことは自分でやらなければ、また施設利用は無理だという強い意識が働き、SOSを広く出せなかったのかもしれません。

一昨年の10月には、22歳の孫である女性が同居していた、排泄などの身の回りのことが一人でできない要介護4の祖母を殺害、また、昨年5月に埼玉県で26歳の娘が60歳の母を殺害する等、このような事件が毎年20件から30件起きています。

介護を理由とする痛ましい事件を二度と起こさせないためにも、介護するケアラーへの支援が必要であり、特に心が不調であるケアラーを早期に発見し必要な支援につなげること、また、社会から孤立することなく本人が尊厳を保ちながら無理なく介護を行うことができるようにすべきであります。そのためにケアラー支援の制度・仕組みの構築、そして法的基盤の整備が喫緊の課題であります。

自ら手を挙げて相談や家族会などに参加できる方はいいのですが、問題は一人で悩み我慢しているケアラーです。

特に精神的にうつにあるようなリスクの高いケアラーをどう探し出し、必要な支援につなげていくかであります。

まずはケアラーの実態を把握するための調査が必要です。また、介護しているケアラーも「大切な一人である」と多くの人に理解してもらうための周知と啓発により、地域でケアラーを支えることにつながります。

今後ケアラー支援を大きな柱の一つとして掲げ、目指すべき方向性を示した上で、一層の支援拡充が必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

次に、ケアラーの権利擁護についてです。

昨年3月、埼玉県は全国初となる「ケアラー支援条例」を制定しました。 条例にはケアラーに対する支援の意思表示と同時に、不当な差別を受けることなく安心かつ健康にして生活していくための権利保障を明文化した内容が記されています。

介護保険法では謳いきれなかった家族による過度な介護負担の軽減、つまりケアラー支援を条例で担保したことになります。20年前に比べ今は老老介護問題、8050問題、ダブルケア問題、ヤングケアラー問題などケアに関する複雑な問題が一層表面化しています。

特に注目したいのが、若年世代の中でも18歳未満を対象とした人たち、すなわち「ヤングケアラー」に対する配慮です。今回の埼玉県の条例制定を契機に、ケアラーに対するケアの取り組みが本区においても深まっていくことを大いに期待しております。

そこで、ケアラーの権利を謳いその権利擁護を定める、ケアラー支援条例の制定を提案いたします。ご所見をお伺いいたします。

最後に教育について質問します。

はじめにコロナ禍における学びの保障と心のケアについてです。

昨年春の一斉休校を経て、学校現場での対応、保護者の皆様のご協力、友達に会えない子どもたちの頑張りなど、教育委員会を中心に大きな混乱もなく過ごせたことに、改めて感謝申し上げます。休校したことで学習指導の遅れに対し、先生方の懸命な努力が続いていると聞いております。

学びの保障の観点から、今後の教育活動についてお聞かせください。

また子どもたちにも初めての経験となった新型コロナウイルスからの影響として、心理的負担を持つ児童生徒に対する心のケアについてお聞かせください。

外出自粛により児童生徒の体力増進への影響が心配されます。健全な屋外での遊び、運動やスポーツ、部活動において、感染症対策の指導により、その上で児童生徒が今後も自分の健康を適切に管理して、さらに免疫力を向上させるための必要な知識を身につけていくことが益々重要です。

健康リテラシーが身につくような取り組みについてお聞かせください。

次に感染症への対応についてです。

メディア情報があふれる中、「正しく恐れる」という視点で、日常の基本的な感染予防の徹底を繰り返し指導されていることと思います。学校現場などでは児童生徒・教職員にも感染者が発生し、また濃厚接触者に指定されると原則として健康観察期間としておよそ2週間の社会生活が制限されます。

誹謗中傷・差別的言動については、これまでも細心の注意と指導が行われていることと思います。「感染者への差別は許さない」「誰もが感染する可能性がある」ことを、繰り返し認識することが重要です。

感染者に対して「対策を怠った人」という心の作用が、人と人を分断することにつながりかねません。中傷されるような社会状況では、感染したことを言い出せず、さらに感染を広げてしまいます。もし自分が感染したら、誰もが非難されたくないはずです。それぞれの現場で感染者が出ても、それを受け入れる場づくりが重要と考えます。

そして日頃からの予防対策として感染症専門の知見が学校現場に行き渡ることが、子どもや教職員の安全、そして保護者や地域への安心につながる。学校現場への専門家派遣など感染症に対する安全安心への取り組みを伺います。

次に学校給食でのフェアトレード食材使用についてです。

フェアトレードとは、文字どおりフェアなトレード、公正な取引を意味します。フェアトレードは、低所得国の生産者・労働者の生活改善と自立支援のために掲げられた国際的なスローガンです。主に、低所得国から原料や製品を適正な価格で継続的に購入して、立場の弱い生産者の待遇改善と自立を目指す運動を指し、資金援助ではなく、母国の伝統技術を生かした商品を公正に取引させてほしいという生産者たちの声が起こり、そこからフェアトレードが始まったと聞いています。

名古屋市教育委員会では、5月のフェアトレード月間に合わせて、グローバルな視点から考えるきっかけを醸成するとして、認証を受けた食材を使った学校給食を提供しています。また浜松市では認証を受けたごま油を使い、食育教育に生かされています。市内の全小学校の給食に、ニカラグア産の白ごまの入った佃煮を提供、子どもたちも栄養教諭からフェアトレードの説明を聞くそうです。フェアトレードから世界を見る機会が、小学校での給食から発信されることの意味は大きいとされています。

本区では、としまNPO推進協議会が主催するイベントで、大学生によるフェアトレードのコーヒー豆や食材を販売して啓もう活動している様子に感動しました。

SDGsの理念を学ぶ上でも、給食にフェアトレード食材を使用し、子供たちにフェアトレードについて学ぶ機会を設けてはいかがでしょうか、お伺いいたします。

今後10年をどう見据えて取り組むか。豊島区の施策は全てがSDGsの目標に重なっている。次代を担う子どもたちの社会を作っていくと、区長は常々述べられておりますが、最後にSDGsの「誰一人取り残さない」という教育への取り組みについて、金子教育長のご所見を伺い、私の一般質問全部を終わります。

ご清聴ありがとうございました。

 

公明党 西山陽介議員 令和3年第1回定例会 一般質問答弁

 

ただいまの、西山陽介議員のご質問に対しまして、お答え申し上げます。

 

温暖化対策についてのご質問のうち、まず、今後の温暖化対策の基本的な考え方についてのご質問にお答えいたします。

本区の温室効果ガス削減目標は、2030年で39%としておりますが、世界に目を向けますと、脱炭素を目指す動きが加速しております。

本区はこれまで、環境庁舎、10万本の植樹、「IKEBUS」、資源リサイクルなど、新しい環境都市づくりにチャレンジし、実現してまいりました。

今後、SDGs未来都市としての一丁目一番地である環境政策、特に、ご質問の温暖化対策についての取組を一層進めていく観点から、「省エネルギー・再生可能エネルギーの利用促進」、「自然と都市の共生」、「プラスチックのリサイクル」という3つの温室効果ガス削減の方策を重点的に行うことを基本方針とし、2050年までにその排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指してまいります。

そのため、来年度より、日本におけるSDGs研究の第一人者である蟹江憲史先生、先生には先日区議会での勉強会で講師を務めていただいたり、意見交換の際には本区のSDGsの取組を高く評価していただき、これからの環境政策に力を貸してくださるとのお話しもいただきましたが、その先生が会長を務められている、豊島区環境審議会において、温室効果ガス削減をさらに促進するための具体的な施策等の検討を開始します。

それを踏まえ、「環境」が本区のSDGsをリードしていけるよう、令和7年度に改定することとしている環境基本計画を、前倒しで見直し、改定をいたします。

 

次に、専門分野の人材活用を含めた、気候変動への適応の取組についてのご質問にお答えいたします。

近年、酷暑や台風、集中豪雨などの異常気象による、大規模な自然災害が頻発しており、気候変動への対応が急務となっております。

本区といたしましては、東京都が今年度中に策定予定の地域気候変動適応計画を踏まえ、自然災害の防止や生物多様性の保護などを目的とした、気候変動への「適応」のあり方について、先ほど申しあげた環境審議会で検討いたします。

その際には、より広い見地から異常気象への対応についてアドバイスを頂ける専門人材の活用についても検討してまいります。また、本区に本社を置く、日本気象協会とも緊密な連携を図ってまいります。

気候変動への適応についても、高密都市「としま」の取組が、世界をリードしてまいります。

 

次に、未来を見据えたビジョンを構築するために若者の視点による提案を反映させ、若者との意見交流の場を設けることについてのご質問にお答えいたします。

ユース気候サミットは、若者と政策決定者との対話に道を開き、気候変動対策に向けて若者たちが、自分たちの想いを実現するための貴重な機会となったと伺っております。

本区でも、環境基本計画改定に当たっては、若者の視点による提案を反映させるよう取り組んでまいります。

具体的には、若者を対象としたワークショップを開催するなど、環境審議会において、若者による環境政策の提言の場を設けてまいります。

 

次に、本区の特性に沿った資源回収の方針及び脱炭素社会構築に向けての決意についてのご質問にお答えいたします。

プラスチック製容器包装が正しく分別され、資源循環について実効性のあるリサイクル制度とするためには、ご指摘のとおり、本区の特性に沿った回収方法とする必要があると認識しております。

リサイクル・清掃審議会からは、プラスチック製容器包装の分別収集導入にあたり、温室効果ガス削減やごみ減量、資源化率の向上にどのくらい寄与するか、費用や区民の皆さんへの分かりやすさといった論点について検討するよう答申をいただきました。あわせて、「国においてプラスチック資源循環のための新たな制度づくりが検討されていることを踏まえ、その動向についても十分に留意をされたい」と指摘をいただいております。これらを踏まえて検討を行い、来年度、本区の特性に沿ったプラスチックの資源回収の方針を明確にしてまいります。

気候変動など地球規模の環境問題が深刻化する中、本区においても廃プラスチックのさらなる発生抑制、資源化が急務となっております。化石燃料由来の廃プラスチックの焼却によるCO₂の発生を抑制し、よりCO₂削減効果の高いリサイクルにシフトしていくことは、SDGsの目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」にも適うものであります。しっかりと準備を進め、区民の皆さんとともに、脱炭素社会の構築に向けての取組みをさらに加速させていく決意であります。

 

次に、温暖化対策に適う今後の施設整備方針についてのご質問にお答えいたします。

本区では、豊島区地球温暖化対策実行計画に基づき「としまカーボンマイナス施設づくりガイドライン」を策定し、施設改修などに際して省エネ機器の導入や屋上緑化など着実に温室効果ガス排出の削減を図ってまいりました。

豊島区の施設の多くが、設備機器などの改修・修繕などの時期を迎えつつあることから、今後の施設整備において、こうした取組を計画的に加速化させることで、地球温暖化対策に大きな貢献ができると認識しております。

また、建築から改修・解体までの各段階における環境負荷軽減を想定しながら、施設を設計することも、温暖化対策において重要な取組となりますので、今後、こうした観点も視野に入れた施設整備を行ってまいります。

 

次に、現役・若者世代への支援についてのご質問のうち、まず、多胎児家庭及び多子世帯へのイケバス乗車券の交付やタクシーを含む移動支援についてのご質問にお答えいたします。

多胎児家庭及び多子世帯が、移動や外出の際、困難を伴うことについては区としても認識しています。とりわけ多胎児は難易度が高いことから、区は3歳未満の多胎児がいる世帯を対象として、本年4月より「多胎児家庭移動経費補助事業」を開始する予定です。この事業では、乳幼児健診など母子保健事業利用時に面接を受けていただくことを要件に、タクシー利用等に使えるこども商品券を年間24,000円分配布いたします。

なお、イケバス乗車券の交付など、それ以外の移動支援については、現在、区としては考えておりませんが、多胎児の親子の交流会「ツインスマイル」を開催するほか、保健所や子ども家庭支援センターでの相談事業を通じて多胎児家庭及び多子世帯の育児をサポートしてまいります。

 

次に、感染症まん延防止として区内外の若者へ実感できるメッセージを発信することについてのご質問にお答えいたします。

豊島区の感染状況を見ますと、30代以下の感染者数は全体の6割を超えるなど、非常に高い状況にありますので、若者特有の情報媒体を効果的に活用することは重要なご指摘であると受け止めております。昨年9月から公式ツイッターを開始し、12月にはスマホ用のニュースアプリでの発信とラインの公式アカウントを申請するなど、若者をターゲットとした情報媒体の活用を進めてまいりました。今後の情報発信にあたりましては、第一に、感染症に関する最新情報はホームページだけでなく、ツイッターやライン、ニュースアプリを通じて、タイムリーにお知らせしていくことを徹底してまいります。

第二に、区内の学生や若者の相談に応じている団体と連携するなどし、若者に親しみや共感をもっていただける情報発信のあり方について検討してまいります。

第三に、罹患された若者から体験メッセージ等を募集し、そのメッセージをSNSやホームページなどを通じて共有することを検討してまいります。一般的な呼びかけと異なり、体験メッセージはリアルな教訓であり、自分ごととして捉えていただくきっかけにつながるものと考えます。

若者の皆さんが感染症対策を正しく理解し、自分ごととして地域ぐるみで行動していただけるよう、多様な媒体を活用しながら情報発信の強化に努めてまいります。

 

次に、AYA世代のがん患者を在宅で支援する制度構築の検討についてのご質問にお答えいたします。

現在改定中の「第3次豊島区がん対策推進計画」では、国が平成28年に定めた「がん対策基本計画」、それを受けて改定された東京都の「がん対策推進計画」に、AYA世代のがん対策の記載が加えられました。

区においても、今回の第3次計画の策定にあたって「ライフステージに応じたがん対策」を新たな基本方針の一つに据えました。

さらに、小児・AYA世代、働く世代、高齢者のライフステージに応じた支援を計画の重点施策のひとつとしています。

計画策定のための「がん対策推進会議」の議論の中でも、委員から、AYA世代のがん患者は介護保険が利用できず、在宅サービスを利用する場合は自費となり経済的負担が大きい、との発言があり、区独自のサポートの必要性についても意見が交わされ、区としても大きな課題の一つであると認識しております。

一方で、AYA世代、働く世代の支援の在り方を考えるとき、経済的な支援や生活支援、専門的・医学的な相談やサポート、さらにはご家族の負担軽減、勤務先や学校での理解や協力など、多岐にわたることもあり、社会全体でがん患者とそのご家族を支えるための環境整備が必要であります。

現在、豊島区においても、AYA世代のがん患者が在宅で利用できる支援として、子ども家庭支援センターの「育児支援ヘルパー」や、豊島区民社会福祉協議会で実施している「リボンサービス」などがございますが、多様なニーズのすべてを区が担うことは難しいため、現在、区では、がん患者とそのご家族が利用できる、サービス情報や相談先をまとめた「がんサポートガイド」を作成しています。こうした資料を活用しつつ、区内外における様々なサービス等の周知・啓発を進めることで、適切な時期に、適切な支援窓口にお繋ぎするなど、AYA世代の生活支援の充実を図って参ります。

 

次に、これからの豊島区を担う若者世代に対する私の思いについてのご質問にお答えいたします。

令和2年の初めから本格化した新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの日常生活や経済活動に大変大きな影響を与えました。

ここで、これからの豊島区を担う若者世代の皆さんに向けて、私の思いを申し上げます。

豊島区の未来を担うのは、まさに、若者世代の皆さんです。

コロナ禍のいま、あらゆる活動が長きにわたり制約され、多くの若者世代の皆さんが将来に不安を感じる日々を過ごしているのでないかと思います。

しかし、ずっと下を向いていても何も始まりません。これまでも人類は、感染症との戦いを繰り返し、その都度、勇気と英知をもってそれを克服してきました。感染症との戦いに打ち勝ち、新しい時代を切り拓いてきたのは、紛れもなく、若者世代であります。

コロナ禍でも、必死に進もうと頑張っておられる方々、困っている方を助けようと懸命に取り組んでいる方々、この困難な状況を前向きな変化のきっかけにしようとする方々の姿を見るたび、どんな苦しい時でも、夢や希望に向かって、立ち向かっていくことの大切さを改めて感じております。

若者世代の皆さまの前途には、今後も多くの困難が待ち受けています。しかし、皆さんの豊かな想像力と溢れるエネルギーがあれば、必ずやその難局も乗り越えられると私は確信しています。ぜひ、自分の思い描く明るい未来に向かって、立ち止まることなく、チャレンジしてください。

皆さんの未来は、無限の可能性を秘めています。未来は目指すもの、創造するもの、そして希望です。

100年に一度の大変革を迎えた豊島区を舞台に、一人ひとりが、自分らしく、ご活躍されるよう、私も全力で応援してまいります。

なお、私からの答弁は以上ですが、その他の質問につきましては高際副区長から、教育委員会の所管に属する事項につきましては、教育長から答弁申し上げます。

高齢者福祉・介護保険事業についてのご質問のうち、まず、外出や避難行動など、移動が困難な方に対する実効性ある支援体制を構築することについてのご質問にお答えいたします。

要介護者など移動が困難な方に対する日常的な外出支援については、介護保険での訪問介護サービスのほか、社会福祉協議会が実施している「ハンディキャブ」事業があります。

この事業では、高齢や障害等で公共交通機関を利用しての外出が困難な方を対象に、地域の協力会員の協力を得て、リフト付乗用自動車の運行を行なう会員制の福祉有償運送サービスであり、年間約2千件を超える利用があります。

また、ご提案の介護タクシーの利用については、特別区においても助成を行なっている区もありますので、今後、その助成範囲や利用実態を調査するなど、研究してまいります。

また、災害が発生した際などに介護タクシーを活用するご提案についてですが、災害時において要介護者や移動が困難な方が救援センターや特別養護老人ホームなどの福祉救援センターへ避難していただくことに関しては、社会福祉協議会や施設を運営する社会福祉法人との間で移送に関する協定を締結しております。

協定を締結している法人はいずれも介護タクシーと同様の機能を有する車両を保有しており、まずはこれらの車両を活用していくものと考えております。

一方で、災害時には、予想もしていない事態が起きることも考えれば、要介護者の移送について複数の選択肢をもっておく事は危機管理上からも重要なことであります。

こうしたことから、災害時等に要介護等で移動が困難な区民の皆さまが安心して安全に利用でき、事業者側が安定的に車両の供給や運航できる方法等について検討を進め、介護タクシーの活用の実現に向けて取組を進めてまいります。

 

次に、認知症対象者向けの事故等損害賠償保険 保険料の助成制度の創設についてのご質問にお答えいたします。

ご指摘のとおり、認知能力の低下している状態での事故に対するご本人や家族等の賠償責任には、難しい問題があると認識しております。

各自治体においては、自治体負担で制度を創設しているところも徐々に増えており、特別区においても令和元年度に2区が導入したところであります。

厚生労働省によれば、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるとの推計があり、今後、認知症施策は、認知症検診の実施やその後のフォローなど、充実・強化していかなければならないと考えております。

ご提案の助成制度の創設については、認知症施策の一環として、先行自治体等の事業運用後の動向を注視し、費用負担のあり方やその効果の分析など進めてまいります。

 

次に、ケアラー支援を柱として掲げ、目指すべき方向性を示した上での一層の支援拡充の必要性についてのご質問にお答えいたします。

本区はこれまで、高齢者の生活の質の向上や家族の介護負担軽減を図るため、介護保険サービスに加え、多岐にわたる高齢者施策を展開してまいりました。

しかしながら、福祉サービスへの抵抗感、困難な課題を抱える家族関係等、さまざまな理由で介護者に大きな負担が生じている場合がある点は、大きな課題であると認識しております。

特に今般のコロナ禍において、デイサービスを自粛したり、介護者が外出しづらかったりで、これまで以上に介護者の心身の負担が増している可能性も想定されます。

このような中で、令和3年度の新規・拡充事業として、75歳以上の全高齢者に対して往復はがきを送付し、積極的な相談を呼び掛けること、また、24時間365日の緊急対応サービスを始めてまいりますが、これは高齢者本人の支援になるとともに、介護者の支援、いざという時の安心につながると考えております。

今後、このような支援をさらに積み上げていくとともに、総合高齢社会対策における重要な課題の一つとして、家族介護者をはじめとするケアラーへの支援を位置づけ、一層の支援拡充を図ってまいります。

 

次に、ケアラーの権利を謳い、その権利擁護を定める、ケアラー支援条例の制定についてのご質問にお答えいたします。

ご質問の「埼玉県ケアラー支援条例」においては、行政サービスの充実とともに、地域におけるケアラーに対する理解、多様な主体が連携しながら社会全体でケアラーを支えていくことの重要性が示されております。

これはオールとしまの連携で、「誰も孤立させない、みんながいきいきと、健康で安心に暮らせる」まちづくりを進めている本区の総合高齢社会対策そのものであります。

来年度には、この「誰一人取り残さない」高齢社会の実現に向けた基本理念等を定める条例の制定を予定しております。

この条例の中に、ケアラー支援についても重要な柱の一つとして位置づけてまいります。

また、「子どもと女性にやさしいまちづくり」を目指す本区におきましては、来年度、「支援の届かない子ども・若者・家庭ゼロ」を重点施策として掲げており、ご指摘のヤングケアラーについても課題の一つと捉え、必要な支援等について検討してまいります。

「誰一人取り残さない」豊島区の実現に向けて、部局間の連携をさらに強め、鋭意取り組んでまいります。

私からの答弁は以上でございます。

引き続きまして、教育委員会の所管に属する事項に関するご質問に対しまして、お答え申し上げます。

教育についてのご質問のうち、まず、コロナ禍における学びの保障の観点からの今後の教育活動についてのご質問にお答えいたします。

3か月にわたる休業に対し、児童生徒の「学校ならではの学び」を取り戻すために、これまで、まず夏季と冬季の休業期間を短縮するとともに、土曜授業について、時間を午後まで延ばしたり、回数を月2回程度まで増やすなどで、授業時数の確保に努めてまいりました。

加えて、一日の中での時程を見直すとともに、教科の学習内容の順番を入れ替えたり、複数の教科を横断的に捉えるなど、教員が児童生徒に向きあう時間を確保するため、指導時間の効率化を図る努力を継続してまいりました。

その結果、現時点では、学習指導要領に定められている標準の授業時数を全ての学校で、達成できる見通しでございます。いざという時のオンラインでの教育継続が可能となりましたので、今後は、時数確保にのみ捉われず、学校行事の重点化やタブレットパソコンの積極的な活用も進めながら、児童・生徒の充実した学びを確保してまいります。

 

次に、新型コロナウイルスの影響による心理的負担をもつ児童生徒に対する心のケアについてのご質問にお答えいたします。

昨年6月の分散登校時に、全ての学校で「心のケア委員会」を設置し、担任やスクールカウンセラーだけでなく、学校全体で組織的に子どもに対して寄り添う体制を整え、児童生徒全員を対象とした面談の実施などを行いました。そこでは、友達と会えない不安や学習が遅れることへの心配など、多くの相談がありました。7月から一斉登校になり、友達や先生と関わる機会が増えたことにより、多くの子どもたちの不安や心配は一定程度軽減されたと受け止められますが、一方では、分散登校では、登校できた児童生徒が、再び不登校の傾向を示す事例も報告されております。

そこで、2学期以降も定期的に「心と体の健康アンケート」を行い、一人一人の小さな心の変化も見逃さないようにするとともに、教員やスクールカウンセラーとの面談や、児童生徒同士が心を交流する活動を意識的に実施するなど、不安の解消に向けた、きめ細かな指導に努めております。

また、登校することに抵抗がある児童生徒に対しては、タブレットパソコンを有効に活用し、教育センターや関係諸機関との連携を図りながら今後も支援を充実させてまいります。

 

次に、健康リテラシーが身に付くような取組についてのご質問にお答えいたします。

1月の緊急事態宣言の再発令により、現在、学校では、身体接触を伴う活動の自粛や部活動の休止などの措置を取っており、児童生徒は、十分な運動機会を得られない状況になっております。

また、今年度は国や都の体力に関する調査が実施されていないことから、児童生徒の体力への影響を数値として正確に把握できていない状況です。

しかしながら、学校における怪我の発生件数は、今年度2月上旬で、既に令和元年度末の件数と同数であることから、児童生徒が怪我をしやすい状態であると認識をしております。まさに、児童生徒の健康管理は、感染症予防対策のみでなく、体力増進の視点においても喫緊の課題であると考えております。

今後は、学校の授業や部活動において体力増進に向けた効果的な運動を取り入れるだけでなく、家庭と連携して公開されている有効なコンテンツをタブレットパソコンを使って活用するなど、様々な工夫で運動機会の減少を補ってまいります。

いずれにいたしましても、「健康リテラシー」すなわち、「自らの健康は自分で守ることを理解し、免疫力の向上など必要な知識を身に付け活用すること」ができる児童生徒の育成が重要です。来年度、文部科学省ではこの観点から、健康づくりや感染症予防に関する優良な取組の事例集の動画配信を予定しておりますので、これらも活用し、積極的に子どもの育成を図ってまいります。

 

次に、学校現場への専門家派遣など感染症に対する安全安心への取組についてのご質問にお答えいたします。

新型コロナウイルス感染症に対しては、学校現場においても、これを正しく理解することが、感染防止の観点のみならず人権の観点からも最も重要でありますので、これまでも、専門家の知見をいろいろといただいてまいりました。

まず学校再開前の昨年5月25日には、学校薬剤師会会長から、感染症対策やアルコール消毒に関する正しい方法などについて、養護教諭向けにご指導をいただきました。また、10月14日には、女子栄養大学名誉教授を講師にお招きして、養護教諭や保健担当教諭を対象にオンライン研修会を実施し、さらに本年1月21日には、豊島区医師会のご尽力により、学校医・養護教諭を対象に、児童精神の専門医によるWEB研修会を実施していただき、児童生徒の心ケアについてご指導いただきました。

各学校においては、学校医等への質問や相談は適宜行っておりますが、例えば仰高小学校では、内科医より児童向けにオンラインで講演を実施していただき、新型コロナウイルスとの付き合い方や、家の内外での遊び方や生活上の注意点などを教えていただくなどの取組もありました。

今後も、文部科学省による、感染症専門家を講師とした学校関係者向けのオンライン研修会なども活用しながら、専門家の協力をいただき、全ての学校で正しい知識や最新の知見を普及してまいります。

 

次に、給食にフェアトレード食材を使用し、子どもたちにフェアトレードを学ぶ機会を設けることについてのご質問にお答えいたします。

これまでも、学校給食では、東アジア文化都市の取組に合わせた中国・韓国のメニューの提供や、米飯給食の推進、牛乳パックのリサイクルなど、SDGsに関係する取組を進めてまいりましたが、フェアトレード食材については、食材単価が若干高いことなどから、これまで取り組んでおりませんでした。

しかしながら、SDGsの17の目標について、子どもたちが知識としてだけでなく、体験を通じて学ぶことの効果は大変大きいものであり、フェアトレード食材を学校給食に取り入れることで、貧困や環境問題など世界規模の課題解決に貢献することの重要性について、子どもたちの体験的な理解につながる大きな効果が期待できると考えております。

従いまして、既にフェアトレード食材を取り入れている先行自治体の取組なども参考に、経費面も含めどのような食材をどのように活用することが最も効果的か、今後、具体的に検討を進め、食育におけるSDGsの取組をより一層推進してまいりたいと考えております。

次に、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」を実現するための教育への取組についてのご質問にお答えいたします。

SDGsは2030年を達成目標とした取組であり、未来の主役は、今の子どもたちであります。今の子どもたちが、将来の世界をしっかりと担えるようにしていくことこそが、SDGsの目標達成に対して教育が求められている最大の貢献だと考えます。

特に「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」にダブル選定された豊島区において、未来を担う子どもたちが、多様性を尊重する態度や、互いの良さを生かして協働する力を養い、持続可能な社会の担い手として、必要な資質と能力を身に付けていくために、学校教育が重要な責務を担っていることを強く認識しております。

本区では、令和元年度より、巣鴨北中学校が東京都教育委員会の「持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」として、各教科をSDGsに関連付けた学習活動に取り組み、外部講師から17の目標について学ぶとともに、生徒に身近な、地元巣鴨の商店街の社会問題について理解を深める等、問題を「自分ごと」として捉えさせる取組を行っております。「地域の社会課題に対して、自分に何ができるのかを考えたい」「自分の行動は小さな一歩かも知れないが、未来のためにあきらめずに続けていきたい」など、生徒1人ひとりの意識に変化が現れてきております。

このような成果を踏まえ、令和3年度から、SDGs達成に向けた指導内容を全小・中学校、幼稚園の教育課程に位置付け、全学校で展開してまいります。

そのため、既に仰高小学校のようにSDGsに積極的に取り組んでいる学校もございますが、今後は全ての学校で、あらゆる機会をとらえて、子どもたちがSDGsの意味を考え、行動する力を養っていけるように、子どもたちにわかりやすく働きかけるツールが必要であると考え、現在、カレンダー様式にまとめたSDGsのガイドを作成中でございます。このガイドを活用することで、月ごとに、SDGsの目標の意味と、自分ができること、また周囲と協働でできることを子どもたち自身が考え、行動し、1年のサイクルで17全ての目標行動を経験することができ、そのことで、継続的な行動が身につくことを期待しております。

「誰一人取り残さない」世界とは、誰もが自己実現できる世界に他なりません。今後も学校現場と一緒にさまざまな工夫を重ねながら子どもたちが発信する小さな行動を大きく輝かせることができる「SDGs未来都市・豊島」を、子どもたちと一緒に作ってまいりたいと思います。

以上をもちまして、西山陽介議員のご質問に対する答弁を終わります。