H17年4定島村高彦代表質問
「未来輝く豊島区をめざして」

平成17年11月

 私は公明党を代表して「未来輝く豊島区をめざして」と題し、一般質問を行わせていただきます。

本論の前にこれからの豊島区行政の課題について一言申し述べさせていただきます。過日の平成16年度決算会計でも示されたように主要財源の一つである特別区民税は対前年比で4億5千万円の減少となりました。本格的な高齢社会突入を迎え、当然ながら課税人口の減少により、この特別区民税はますます先細っていくと共に、人件費を除いた義務的経費の増加は避けられないものと考えられます。このことは全国的に同様の傾向であり、国家財政も近い将来の社会保障費の財源に頭を悩ませております。そこで公明党は大胆な歳出削減を行うために国の全ての事業を洗い出し、廃止するもの、統合するもの、民間に委託するもの、そして地方に移管するものに仕分けするという徹底的な「事業仕分け作戦」に着手することをマニュフェストにおいて提示したのであります。本区では既に行財政改革プランにおいて各事業の展開について方針を打ち出しております。また先だって提示された行革プラン2005については、今後、様々な議論・検討が行われて行くと思います。そこで重要なことは、目先の費用削減効果のみに目を奪われるのでなく、将来の区民生活に焦点を当てた検討を重ねることであると考えます。そのためには、プランの中身だけを問題とするのではなく、今後の国の動向による区民への影響や現状の法制度の改正も含めた民間活力の導入、さらに住民に直接責任を持つ自治体として都区制度の課題に立ち向かう等、すでに取組んでおられると思いますが今後さらに多角的、総合的に豊島区の未来を視野にいれた政策決定を期待するものであります。それでは本題に入ります。

 第1番目にコンプライアンス条例

第1番目にコンプライアンス条例についてお伺いします。昨年の第3回定例会において私は、区民の信頼を勝ち得る方策としてコンプライアンスについて言及いたしました。それに対し区長は既に近江八幡市のコンプライアンス条例の研究を進めているとのご回答でありました。すでに1年以上経過しておりますが、現在までの進捗状況についてお伺いいたします。

前回も申し上げたようにコンプライアンス条例、あるいは「公益通報者保護法」による内部告発者保護も、行政においては全て区民の期待と要望に応えるためにあり、区民に奉仕するという責務を、まず最初に職員が自覚するために定めるものと考えます。

そこで近江八幡市の同条例について申し述べさせていただきます。本市ではコンプライアンスを充実、推進するための方策として、「アドヒアランス」すなわち政策方針の決定に参加し、その決定に従って行動するという理念を導入しております。これを導入する意義と効果について4つの側面から申し述べます。第一点目の全体効果は「組織の活性化と効果的な行政運営、パートナーシップの推進に寄与できる」こと。第二点目、自治体の意義と効果です。「直接住民と接している市職員は、日々の業務のなかで国や県の担当者では実感し得ない法令の矛盾を多々実感する。その場合、関係法令の諸官庁へその問題点を伝える義務は自分たちにある。そして十分な検討の結果、法改正等の対応を促すシステムを構築するのも自分たちである。」と自覚すること。第3点目の住民の意義と効果は、「政策決定の初期段階から、様々な職業の専門家である市民が参画をし、大きな効果を上げることが可能となる。また地域の様々な課題に自主的に係わった市民の経験の蓄積が住民自治の原動力となる」こと。第四点目、職員の意義です。「一つの施策は担当部署だけでなく各部署にまたがる要素を考慮しなくてはならない場合が多く、合わせて職員の政策決定能力の向上も図るため、職員が職務分担を超えた分野に参加できる方策について具体的に取り組むこと」

以上4点のアドヒアランス効果は、本区のコンプライアンス条例策定に関し、取り入れるべき要素と考えますが、いかがでしょうか。さらに近江八幡市に比べ、はるかに多種多様な住民を抱えていると思われる豊島区のコンプライアンス条例は、さらに職員の啓発に力を注いだ内容にするべきであると考えます。したがってこの条例の効果について、次の3点を期待いたします。

1.    窓口における顧客対応の改善や区民満足向上のための人事配置につながること。

2.    区民の要望に対し「できない」ではなく「どうしたらできるか」を考える職員をより多く育成すること。

3.    参画と協働の流れを強力に推進するための理念に貫かれていること。

以上、本区のコンプライアンス条例の策定方針についてお聞かせください

 

第2番目に防災対策

第2番目に防災対策について質問いたします。ここ数年全国各地で発生している地震や水害等の影響で区民の防災意識は確実に高まっていると思われます。国としても耐震改修促進のための税制改正や法制度の見直し、そして災害医療派遣チームの編成などに取組んでおります。しかしながら、行政だけで対応する防災対策には限界があるということは過去の多くの災害が証明しております。災害の規模にもよりますが、通信網も交通網も寸断された大規模災害においては、外部から救助に駆けつけることが困難であることは明らかです。実際あの阪神・淡路大震災においても消防や自衛隊などによって救助された人はほんの一部であり、多くが近隣住民の助け合いにより救助されました。特に災害発生後の72時間以内といわれる緊急救援時期には、近隣住民による助け合いが人命救助のカギを握ると言われております。

そこで第1点目に現在区内の町会、自治会を中心に設置されている地域防災組織とそれを中心として行われている防災訓練についてお伺いします。まず、区民の何割が自分の地域の防災組織の存在を認識しているか。次に会長、防災部長を中心とした各役割分担について災害時にその効果が発揮できるよう徹底した個別訓練がなされているか。さらに主に救助方法を学ぶ防災訓練ですが、地域によっては参加者の大半が高齢者であり、実際の災害現場で救助活動にあたるであろう若い人たちの参加が非常に少ないということ、またこれは豊島消防署主催でありますが、先日行われた女性防災コンクールの参加町会は、管内76町会の内わずか9町会であるということ。こうした現状をどのようにお考えになり、今後どのような対策をとっていかれるのかお示しください。

第2点目に全国的にも問題となっている災害弱者対策と個人情報保護法の関係についてお尋ねします。阪神大震災の死者6,436名の内半数以上が、自力で避難することができなかった高齢者や障害者であり、昨年各地の集中豪雨による死亡者の多くが70歳以上でありました。災害弱者の救出には、どうしても本人の住んでいる場所、生活状況、必要な支援についての情報を地域で掌握していなければなりません。ところが最近、個人情報保護法によりそうした情報の入手が困難となるケースが増えております。日ごろ高齢者の支援を行っている民生委員にすら「個人情報だから高齢者の名簿も出せない」という自治体やある民生委員は、自分の持つ要援護者の情報を地域の自主防災組織に提供してはいけないと思い込み、たった一人で、被災地の中を高齢者の安否確認に走り回ったという例もあるとのことです。本来、国民を危害から守るべき法律が、逆に国民の生命を危険にさらす結果を招いているのです。そうした状況の中でも、要援護者本人の同意を得た上で登録し、一人につき数人の救出メンバーが駆けつける仕組みの「おんぶ隊」を結成した荒川区や使用目的を災害時の地域の助け合いに限定した「災害時地域助け合い名簿」を作成し、区内の警察、消防、自主防災組織、民生委員に事前に配布し、災害弱者対策を行っている中央区のようなところもあります。本区の災害弱者対策と個人情報保護条例のあり方に対するお考えをお示しください。

第3点目に地域の総合力を生かした防災対策についてお伺いします。阪神・淡路大震災のとき、神戸市長田区の真陽小学校にはおよそ2,500人が避難。この地区は昭和59年に設立した「ふれあいのまちづくり協議会」が機能していました。町会、民生委員、子ども会、PTAそして消防団に至るまで大半がこの協議会の会員でありました。したがって指示系統や情報伝達が一本化しており、震災直後から行方不明者の安否確認を素早く開始し多くの人が救助されました。避難所においても、他の地区では被災者同士の殴り合いや差別、また自立の努力もせず、自分勝手に居座る人が出たり、様々なトラブルが生じましたが、真陽地区においては大きな問題は起きなかったとのことです。このように地域コミュニティの強化は最大の防災対策となり、同時に、あらゆる住民活動に大きな効果をもたらします。本区においても防災あるいは他の何かをテーマに住民同士の団結を図る手立てを考える時期に来ていると考えますが、ご見解をお聞かせください。 また、最近では、中央区や千代田区のように区内の事業所に対しても、地域と連携した防災協力を呼びかける自治体が増加しております。事業所の人たちの多くは帰宅困難者でもありますが、同時に地域の強力な防災対策メンバーともなり得ます。区内の事業所に対して地域防災組織への協力を呼びかけるべきであると考えます。実際の災害には思いもかけない問題も起こるでありましょう。そもそも自分の住む地域の避難所や救援センターの存在を知っている区民がどのくらいいるのか。避難所に予定されている学校の門の鍵は、夜間、休日には学校長と区職員である災害対策要員が所持しているが、本人たちが駆けつけることができない場合、いったい誰が校舎の安全を確認し門を開錠するのか。葛飾区では、先月30日、総合防災訓練において、震度6強の直下型地震が起きた想定で、泊り込みの避難所訓練を行いました。いざというときの備えを区民に実感させる効果的な試みの一つであると考えます。地域の総合力を生かした防災対策について本区のお考えをお示しください。

防災メールの実施

第4点目に2つの提案をいたします。

1つ目は防災メールの実施であります。既に本年6月に導入済みの福岡県では、災害の状況や避難勧告などの情報を住民に送信することになっております。本年3月の福岡県西方沖地震の影響もあり住民の関心は高く、開始後4ヶ月余りで18,000人以上の人が登録しております。本区においては火災や浸水等の災害情報の提供はもちろん、なにより区民の防災意識の向上を図るため、防災訓練をはじめとする様々な防災情報を繰り返し送信していく防災メールの実施を提案いたします。

2つ目は、区有施設におけるAED(自動体外式除細動器)の設置であります。私の住む巣鴨一丁目町会では町会費でAEDを購入し、巣鴨駅南自転車駐車場に設置することを決めました。町会員だけでなく駐輪場の利用者や近くにいる人たちの万が一の応急救護に役立てるためであります。区の施設には多くの区民が集まります。財政難ではありますが、区民の安全と応急救護に対する意識向上も兼ね、各施設の担当部署の努力により、できるところから設置していくことを要望、提案いたします。

いつきても不思議ではない自然災害を前に地域近隣関係はけして強固なものとは言えない状況です。コミュニティの強化といっても一朝一夕に成し遂げられるものでもありません。しかしながら、地域の連携を育み、ひとりひとりの命と安全を守ることのできる地域づくりは、その地域を知る自治体が先導役を果たしていく以外にないと考えるものです。

3番目に子育て支援

第3番目に子育て支援について質問いたします。全国的に深刻な問題である少子化は、本区において合計特殊出生率0.75という驚異的な数字がその危機的な状況を提示しております。社会制度の根元を揺るがす人口減少社会を乗り越えるため、我が公明党においても「チャイルドファースト社会」の構築を最重要施策として位置付けました。元来、子育ち、子育ては親族や地域の人たちの助け合いと共に家庭が自律的に行ってきたことです。そうした時代には、多少の経済的援助を除き、行政が子育ち・子育てを支援する必要性はなかったのであります。しかし、家庭と地域社会とのつながりが断ち切れてしまった今、かつての子育ち・子育ての機能を社会全体の中に組み入れ、復活させていかねばなりません。そしてまず子育ての最高責任者である家庭への支援を強化していくべきであると考えます。そこで厚生労働省の補助金付事業である「育児支援家庭訪問事業」の実施方針についてお伺いします。本区では来年度から導入するとお聞きしておりますが、具体的にどのような人たちが訪問支援を行うのかお示しください。同じく次年度より推進する保育園民営化に伴い、徐々に保育園を離れる保育士に任せていくことも必要かつ効果的でありましょう。重要なことは、親本人が子育ての不安とストレスを乗り越え、自信と喜びを感じるまで、徹底した支援が行えるかどうかであります。そうした意味で地域の経験豊富な子育てOBの中から厳選して、委託していくことも、親の支援と子の健全育成に効果的であると考えます。またこの事業の開始に伴い従前の産後サポーター事業は本事業に統合されていくことになると思われますが、今までの有効性が生かされるような展開を期待いたします。子育て支援は同時に親育て支援でもあります。本事業の効果的、具体的な取り組み方針についてお示しください。

次に仕事と育児の両立支援についてお尋ねします。国としても子育て家庭への支援策として働き方の見直しが重要ととらえ、中小企業に対する育児助成金の支給、ワークシェアリングの推進、短時間正社員の制度化や子育て女性の再就職支援に取組中であります。もともと育児・介護休業法は事業主に対し3歳未満の子を養育する労働者に対して勤務時間の短縮等の措置を義務付けておりますが、3歳以上となると努力義務となってしまいます。ましてや男性の育児休業などは、さらにこれからの課題であります。しかしながら、この仕事と育児の両立の難しさが少子化の要因となっていることも事実であります。国家の重要な課題である少子化改善のため、地域の自治体からも事業所に対し子育て支援の協力を呼びかける啓発事業を推進していくべきであると考えます。本区のご見解をお伺いします。

次に虐待の問題についてお伺いします。地域、親族のつながり合いと援助を失った子育ち・子育ては閉塞的な環境に追い込まれ、親と子は急速に孤立化してしまいました。その結果、虐待、不登校、そして少年非行犯罪など様々な問題が生じているのであります。こうした問題は顕在化し、はじめて認識されるのが常ですが、潜在的な危険性に対しても早期に対処すべきと考えます。本区の場合も、虐待の報告受理件数は年々増加をしておりますが、虐待防止連絡会議によるネットワークの構築や子ども家庭支援センターにおける相談業務等、精力的に虐待防止に取組んでおります。今後については親をはじめとする大人たちへの徹底した支援と教育指導を強力に行うと共に、子ども自身が虐待に対応できるよう指導することも必要かと考えます。アメリカで開発された子どもへの暴力防止プログラム略称CAPと呼ばれる指導法は、本来学校等で行う暴力防止教育でありますが、あえて「子育ち」という観点から取り上げさせていただきます。またこの指導法はかつて本議会においても否定的な観点から取り上げられていたと記憶しますが、世界16カ国、全米では200以上の都市で採用され、日本では現在、およそ32の自治体が事業委託、39の自治体が補助金を出しております。CAPプログラムは大人用と子ども用がありますが、子ども用の概略のみ触れさせていただきます。前提として子どもを大人が守るべき弱い存在と見るのではなく、困難な状況から子ども自身が自分の力で乗り越えなければならないことを指導します。最初に安心・自信・自由という3つの権利について学習します。これによりまず自身の内なる価値に目覚めさせ、それを引き出すことにより自信と勇気を持たせます。次に危険な状況を見分けることを学ばせ、それに対処するための知識や具体的な技術を身に付けさせるものです。CAPプログラムの特徴は、最初に権利について学習しますが、他人にも自分と同じ権利があることを学ばせることです。そして他人を傷つける人は自分自身もまた深く傷ついていることを知るのです。すなわち権利を行使することにより自他共に暴力を振るうことを防止するのであります。日本においても人間の権利は憲法(11条)で全ての人に保障されており、同時に憲法(12条)は全ての人にその濫用を禁止しているのです。権利の行使には、必然的に責任が伴うと考えます。人間は元来、他の生命を殺戮しそれを食べ、調和の取れた自然を破壊しながら毎日生きる権利を行使しているのであります。であるからこそ必要以上の殺戮と破壊、すなわち暴力を厳に戒め、生きていることに感謝をする責任があるのです。権利を行使するとは「わがままをとおす」ことではなく、生命の尊厳と厳しさを自覚することであります。この厳しさを子どもに伝えることが、子どもをめぐる様々な悲惨な事件から彼らを救うことになると考えるものです。将来日本を背負って立ち、社会保障制度の上からも我々を支えることになる子どもたちに私は最大の敬意を払ってこの権利を授けていきたいと考えます。CAPによる指導法は指導者の適用方法よっても効果が異なると思いますが、虐待を防ぎ、非行に走る元凶を取り除くための本区の施策について総合的にお示しください。

4番目に子どもの教育

第4番目に子どもの将来に焦点をあてた教育についてお尋ねします。先月発表された中央教育審議会の答申案では「子どもたち一人一人が人格の完成を目指し、それぞれの個性を伸ばし、その可能性を開花させること。そしてどのような道に進んでも自らの人生を幸せに送ることができる基礎を培うことは、義務教育の重要な役割である」としております。全く同感です。そこでまず子どもの自主性と生きる力を伸ばすことに主眼を置いた「総合的な学習の時間」の効果と今後の展開についてお伺いします。東京小平市では子どもを地域の一員として捉え、地域を教室とした体験学習に取組みました。そこでの学習は全てが実社会と生活に根ざした本物の体験となります。したがって子どもたちは必然的に真剣になります。29業種44店舗の協力を得て行った、小学3年生のお店番体験学習では、そこで働く人たちは皆仕事のプロとしての先生です。大半の子にとって何かを買う経験はあっても売る経験は初めてです。最初は戸惑いながらもレジを打ったり、商品を並べたりして店の人の努力や販売の工夫を肌で実感します。やがてどうしたらもっと売れるようになるかと考えるようになります。そして自分たちで工夫し、宣伝活動に取組んで行くのです。こうした一連のプロセスの中で子どもは日ごろ教室で学んでいる教科が社会生活のどこでどのように活かされるのかをはじめて知ると共に何をどう学習すれば役に立つかを学ぶことができるのです。   5年生の会社を作ろう学習では、実際に会社組織を立ち上げる過程で、商品開発、宣伝活動、価格の設定など次々と判断が迫られます。活動の中で算数の基礎をはじめ未だ習得していない様々な学習の必要性も感じるに違いありません。さらに、社長、営業、経理などの仕事を選択しようとする自分を見つめることになるのです。学力の低下が指摘されていますが、問題意識と目的感は必然的に子どもを学習に取組ませることになると考えます。小平市の例は、年間2,000人を超える地域の方々やそれを推進する教員たちの過大な協力の上に可能となる体験学習です。本区においても商店街における学習などを行っていると伺っております。これまでの総合的な学習の全体的な成果についてお聞かせください。

同じく総合的学習の授業手法として「未来教育プロジェクト学習開発事業」をスタートさせた千葉大教育学部の講師は学習を成功させるポイントを2点上げております。1つは「何のためにやり遂げるのか」という目的を教師も子どもも知っていること。もう1つは、子どもにとって「人ごと」ではなく「自分ごと」と感じる題材を選ぶことです。特に1点目の「目的」に関しては日本の教育において長く欠落していたと感ずるものです。小学、中学とも保護者の要望が高いのが基礎学力の定着でありますが、目的のない子どもにとっては基礎学力の習得さえ苦痛ではないかと思います。あまりふさわしい例でないような気もしますが、ノーベル物理学賞を受賞したあのアインシュタイン博士は、一説によれば15歳のとき既に頭の中に相対性理論を思い浮かべていたとのことです。彼がそれを世に証明しようという目的と決意を持ったからこそ、直接自分の分野ではないが、証明するのに必要な数学の勉強にしかも独学でありながら没頭することができたと言われています。総合的な学習は詰め込み教育を改め時間と心のゆとりを確保するための「ゆとり教育」の象徴とされています。しかし、目的があり自分に必要と感じれば、すなわち「自分ごと」と思えば、時間もゆとりも関係なく詰め込み学習でもなんでも充実してやり遂げるはずであります。当然、子どもによって目的は皆違います。従って取組む学習内容も違います。しかし適切な問題意識と必要な目的を持たせることが子どもにとっての第一歩であることに違いはありません。そのことが中教審の答申案が示すような、将来の厳しい競争社会で生き残るための基礎を身に付けさせることになり、それこそが総合的な学習の目的であると考えるものです。本区の総合的な学習の今後の取り組み方について明確にお示しください。

次に文部科学省が8月末時点で138の市町村を推進地域として指定している「キャリア・スタート・ウィーク」すなわち中学生の職場体験事業についてお尋ねします。同事業は地域での就労体験と働く大人に接することを通して礼儀やあいさつ、人との接し方などを勉強し、同時に自分の進路について考える機会を与えるものですが、さらに自分に必要な学習に取組むきっかけにもなると考えます。また今問題となっている、働かない若者・ニートに将来なることを防止する目的もありますが、実際、実施した学校では登校率が上昇したというデータも出ております。この事業も生きる力を増進させるのに効果的な体験学習であると思います。生きる力は学力に直結します。職場に慣れ生徒の自発的な創意工夫を引き出すためには、5日間が妥当な期間と指摘されております。本区の取組み方針についてお伺いいたします

次に読書活動の推進策について質問します。本年7月文字・活字文化振興法が施行されました。この法律は公明党の推進で成立した文化芸術振興基本法の第18条・国語教育の充実について定めた条文が基礎となっております。法制定の背景には国民の急速な活字離れ現象があります。インターネットの普及もあり、目先の情報を追うことに忙しい社会環境により、物事をじっくり考える機会が減ってしまったこともあります。結果、特に高校生の読書離れが深刻となり、読解力の低下も明らかになりました。わが党の女性局を中心に推進してきた「読み聞かせ運動」や「朝の10分間読書」の広がりにより小中学生の活字離れは改善されつつあるとのことですが、読書は子どもの将来にとっても必要不可欠なものです。生活習慣の中に読書がなければ、人とのコミュニケーションに必要な言語力やよりよく生きるための思考能力も低下していくことになります。現在、施設再構築の中で図書館の統合も検討されているようであります。しかし日本の図書館の数は先進国のなかで最下位であります。財政再建の途上であり、また館内の設備充実も必要でありましょう。しかし子どもにとって学校の図書館だけでなく、身近に通える地域の図書館も読書に親しみやすい環境を促進することになると考えます。この点に関するご見解と共に、今後の子どもの読書推進策について本区の方針をお示しください。

教育は子育てと同じく国家の存亡をかけた最重要の事業であります。目的を持たせない、あるいは目的を目先の進学・受験のみに定めた教育は子どもの将来にとっても日本の未来にとっても崩壊しかもたらさないと感じます。教師をしのぐほどの化学知識を利用し自分の親を殺害しようとする女子高生、一流大学を卒業しながらカルト教団に身を寄せ殺戮行為を行う者。けして特別な人たちではありません。皆かつて大きな問題も起こさず、成績もよかった子どもたちであります。問題を起こすその時まで学校や家庭が安心をしていた子どもたちであります。衝撃的な事件に目を奪われているだけでなく、底に横たわる問題の本質に光をあてなければならないと考えます。また、法務総合研究所が実施した少年院に入っている少年の父母の意識調査によれば、自分の子に対し半数以上が「口うるさかった」あるいは「好き勝手にさせていた」とのことであり、自分の子どもの非行原因を「家庭の問題」と捉える答えはきわめて少なかったとのことです。「人は教育によって人間になる」(カント)という言葉の重みを実感する時代であります。今こそプロとしての教育マンの力が求められます。そしてその力を学校だけでなく、家庭に地域に発揮していくべきではないかと考えるものです。全ての障害を乗り越え、総力を結集し、危機に瀕した未来からの使者に手を差し伸べて行かねばならないと実感するものです。教育長の忌憚なきご意見をお聞かせください

地元巣鴨の生活環境

最後に地元巣鴨の生活環境について伺います。本年4月通称「迷惑防止条例」が施行され、キャバクラ等への客引きの禁止、指定区域内における、性風俗店等での客引きに至らない呼びかけ、または客引きを目的とした客待ち行為が禁止となりました。この条例により池袋地域においては本区も様々な取り組みを行っているようでありますが、巣鴨1丁目から3丁目も東京都公安委員会が指定した区域に含まれております。なかんずく巣鴨1丁目の風俗店は駅前ロータリーに直結している公道に濫立しており、未だ呼び込み行為も早朝より頻繁に行われております。地元の人たちはこの通りを避けて生活しておりますが、近隣にはスーパーや学習塾もあり、明らかに住民の日々の移動に支障をきたしております。本来この問題に対処して行くのは、条例制定者である東京都と警察の職務でありますが、こうした光景は、豊島区の基本構想にうたわれた街並みや文化芸術創造都市を宣言した街には当然ながらふさわしくありません。この問題に関し本区としての取り組みについてお伺いをいたします

以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。